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逆回復

「へぇぇ、この占い師って男なんだ。

なんかこう、未来見の出来る詐欺師系の人って男は新興宗教、女は占い師って印象があったんだけど」

占い師のウェブサイトにあったプロフィールを見て思わず感想が漏れる。


「ほんとだ。

本人もそう思ったのか、プロフィールまでいかないと性別が分からない様になってるっぽく無い、このウェブサイト?」

自分のタブレットで占い師のウェブサイトを確認し始めた碧が返す。


「未来見の出来る詐欺師系だったら教祖になって男性の信者からは金を搾り取り、女性はハーレム要員としてつまみ食いしてそうなイメージだけど。そう言う性欲マシマシ系じゃないのか、まだ始めたばかりで信者もどきな顧客が足りないのか、どっちだろうね?」

いや、考えてみたら未来見は出来ないんだっけ?

出来ないからこそ呪詛を使っているのかもって話なんだから。


「それを言うなら逆回復が出来るなら普通に回復術を『神の奇跡』って事にして新興宗教を始める方がお金になるし後ろ暗い事がなくて良さげなのに。

単に不幸ばかりを未来見する変な才能だったりする可能性もありなのかな?」

碧がちょっと首を傾げる。


「確かに怪しげなカリスマ祈祷師ですらペット専用じゃなくって人間も〜って言いたげな人が多いからねぇ。

回復術って面の皮さえ厚ければ教祖になるのに向いた技能だよね。

なのに占い師しかやってないって事は・・・壊せても治せないとか?

治すのって壊すのに比べてて難易度が上がるの?」

それとも普通の白魔術師なら魔力を流し込めば体に対する理解がなくても適当に治せるのかな?


「あ〜、確かに病気なんかはそれなりに知識と鍛錬が必要だから、安易に手を出して失敗した経験があるのかも」

碧が苦笑しながら言った。


「知識がなきゃ駄目なんだ?」

それにしては本能っぽい感じで癒しの術を使う巫女もどきな白魔術師が前世では時折居たけどな。

ちゃんと教育制度が整っていない辺境地なんかだと、偶に誰にも教わらずにほぼ本能だけで白魔術を使う人間が出てくるんだよねぇ。


そのうちに評判になって国や神殿からスカウトが行くんだけど。


どっかの神殿に入れば良いのだが、幼いうちに国に囲い込まれると変に洗脳されて、黒魔術師程は悲惨で無くてもそれなりに不幸な人生を歩むことが多いと知り合いの老黒魔術師が言っていた。


黒魔術による洗脳は白魔術師には効きにくいが、子供だと言葉だけでそれなりに簡単に洗脳出来ちゃうからねぇ。

黒魔術を使っていると神殿とかが気がついて抗議してきた際に言い逃れ出来ないから、力技で洗脳しちゃいけない相手用の術を使わずに洗脳する専門の部署があったし。

マジであの国の闇は深かった。


景気が良くて治安も悪く無く、戦争があっても直ぐに攻めてきた国を撃退できるから税金も常に法定内の範囲で収まっている表向きは良い国だったが。

まあ、裏で一部の便利な人間を情け容赦なく国の為に使い潰していたからこそ、大多数の国民が良い思いを出来たのかも。

誰かの犠牲なしにはそうそう国なんて上手く運営できないのかもねぇ。

犠牲になっていた側としてはこんな国滅べ!と思った事も多かったが。


それはさておき。

「う〜ん、ゆっくり注意を払いながら少しずつ治していけば間違った事しても直ぐに方向修正出来るんだけど、ばば〜んと力を込めて治す『俺って凄いでしょ』系だと取り返しのつかない事になるかも?」

碧がちょっと考えてから治癒と逆回復に関して教えてくれた。


成る程。

ある意味、金を毟り取るために徐々に治す形にしたら取り返しのつかない事にならなくて良いのかもだけど、いつまで経っても金を取られるだけで完治しないって事になりそうだね。


「取り敢えず、まずは黒耳とハネナガが逆回復を視て分かるかの確認だね。

ちょっと私にそれっぽいのを掛けてくれる?」

ハネナガも現れたので碧に頼む。


「う〜ん、どんなのが良い?」

碧が小さく首を傾げて聞いてきた。


「こう、不調が感じられて簡単には病院で治せないけど直ぐには悪化しないようなの?」

普通の胃炎みたいな薬でそれなりに治せてしまうのでは有り難みがないだろう。

かと言って不調そのものを感じないタイプの病症だったら占い師に何かを言われたからって態々病院に行って検査なんてしないだろうし。


「キリキリと痛みがあるよりも吐き気がして漠然と苦しい程度の方が良いかな?

ちょっと膵臓辺りを弄ってみようか」

碧が何かをしたら、吐き気がしてくるのと共に何やら背中の方が痛くなってきた。


「碧が力を使っていたの、視えた?」

ハネナガと黒耳に尋ねる。


『うむ』

『分かんなかった〜』

ハネナガは分かり、黒耳は駄目、と。


まだ若い黒耳はちょっとこう言う任務はまだ早かったかな?

「了解。

碧、治して〜」


「ほい」

すいっと苦しみが抜けた。

うわぁ、回復術が出来ると教祖になり易いのが実感できる。

めっちゃ気分が良くなった。


だけど。

「こんなに露骨に具合が悪くなったら、『占い師の所に行くと体調が悪くなる』って思われない?

時間差で術を掛けられるの?」

呪詛ならまだしも、回復術って『術』って言ってもかなり直接的な魔力の行使だから時間差って難しく無い?


「う〜ん、何をするかにもよるけど、食事をしたらとか、ちょっと水分が足りなくなったらってトリガーで体調が悪くなる様な使い方は可能かなぁ。

それなりに練習が必要だけど。

でも、『治療する際にこう言う使い方をするとこんな時に体調に異変が現れる事がある』って先祖代々の経験の蓄積があるから私は知っているけど、ぽっと出の突然変異的な回復師だったら知らない可能性の方が高い筈なんだけどねぇ」

碧がちょっと首を傾げながら言った。


「マッチポンプ型詐欺師だとしたら、金儲けの為に呪詛や逆回復を使って占いを当てたフリをする悪人だよ?

学校とか会社で気に入らない人間に嫌がらせをする為に色々と練習してきた可能性は高そう。

まあ、全て単なる偶然で全然悪い事をしていない可能性もゼロでは無いけど」


取り敢えず、まずはうちらで視に行き、夜はハネナガに尾行と監視を頼もう。

霊になると鳥目じゃなくなって、夜でも動ける様になるのはマジでありがたい。

嫌がるからちょっと対価の魔力を多めに払う必要があるけど。



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