収入源の多様化が必要かな
「どうせなら猫用フェンスをつけて玄関とか和室の方へだけ行けない様にしてはどう?
そうしたら私たちも気軽に源之助ちゃんと遊べるわ」
朝食時にキャットウォークを碧の部屋の壁に付けてはどうかと提案していたら、碧ママがとんでもない事を言い出した。
いやいやいや。
スケールがデカ過ぎる。
一体幾ら掛かると思うんですか。
藤山家ってそれなりに広いし廊下もあちこちに繋がっているから、源之助用空間を作ろうと思ったらどんだけフェンスを設置しまくる事になるか、分かったもんじゃ無いんだけど〜。
2階だけを隔離するにしても、階段の上が開いているからそこのお洒落な吹き抜けの部分を封鎖しなきゃいけなくなるし、遊ぶのにも自分の寝室へ誘い込む必要が出てくるから、源之助に振られちゃいそう。
早朝の運動タイムなら付き合って貰えるかもだけど、皆さんそんな時間に猫と遊んでいる暇と気力があるの?
サラリーマンと違って定時出勤は無いかもだけど、神社だってそれなりに決まった時間に営業(?)開始しそうだけど。
「意外と猫って遊んでいたり走り回っている時に物を落としたりするし、気に入った家具とか柱とかで爪研ぎをする可能性もあるから、危険だと思う。
それにうっかり窓を開けていたら脱走しちゃいかねないから、駄目」
碧が源之助の飼い主視点から断った。
確かに、悪いからと遠慮するんじゃなくって、源之助が脱走しちゃうかもだからダメって言う方が無難かも。
「まあ、確かにね。
源之助くんがここに慣れたら碧達が聖域に行っている間に碧の部屋で源之助くんと遊ばせて貰ったら良いかな?
源之助くんが車での長距離移動や碧の部屋での宿泊に特に問題を感じていない様だったら、バンを買い取ってちょっと改造をお願いしたいって飯田さんに伝えておこうか?」
碧パパが碧ママを止める振りをしつつグイグイ押してきた。
どうやら2人とも碧が帰ってこなくて寂しかったようだね。
それとも源之助に魅了された下僕志願者なのかな?
「もう数回レンタカーで来てみて、源之助が本当に嫌がらないか確かめるから待って。
それに、中古でも大きめなバンを買って改造するのってそれなりに高くつきそうだから、まだちょっと厳しいかな。
退魔協会に干されたら困る様な立場になりたく無いから、ローンを組まないで即金で買いたいの」
碧が言った。
そうなんだよねぇ。
退魔協会やどっかの政治家だったら金融機関とのコネを活用して信用情報をこっそり入手し、ローンを組んでいる事を知れちゃいそう。
「2人で稼いできたお金を会社への貸付金扱いにして社用車として購入するにしても、バンを使ったキャンピングカーって3、4百万円ぐらいするみたいだからまだ足りないよね。
それなりに仕事をこなしているから来年・・・か再来年かなぁ?」
稼いでもある程度は使っちゃってるしね。
考えてみたら、会社の設備を買う為の支出って事にしたら経費になって税金を減らせるかな?
直接購入費を経費にできないにしても、減価償却とかが支出扱い出来る筈。
どちらにせよ、まだそこまで収入が無いからあまり関係ないけど。
「え、社用車にしちゃっていいの?」
碧が目を丸くしてこちらを見る。
「霊泉に来るのも聖域へ雑草刈りに来るのも仕事の一環でしょ?
退魔協会が関わらない収入源の開発は重要だし」
現時点だと圧倒的に退魔協会からの収入が大きいからね。
学生の間はまだ良いにしても、社会人になって自力で食っていかなきゃならなくなったら、退魔協会しか収入源がないと色々とゴリ押しされた時に負けそうで嫌なんだよなぁ。
とは言え、1個1500円程度のお守りじゃあそうそう収入を増やせないと思うが。
カリスマ祈祷師報酬がどの位伸びるかも重要かな?
あっちは報酬額を上げれば収入が青天井かもだけど、それは碧が嫌がるだろう。
「そうねぇ。
でもお守りで年間300万円稼ごうと思ったら、一個1500円のうち1000円が利益だとしても毎週50個以上作って売らなきゃだからあれ一本では辛そう。
売る方がネットで大量に売れたとしても、週休2日で毎日10個生産はちょっと厳しいよね」
碧が微妙な顔をした。
「ネットで評判が上がったらそれとなくネットのは値上げしていったら良いかもね?
まあ、どちらにせよ退魔協会だって碧や凛ちゃんへの依頼をしないのは難しいでしょうから、あなた達が一方的に押される立場じゃ無いわよ?
ある程度貯金して、無理強いされたら暫く休業出来る様にしておけば向こうが折れてくるわ」
碧ママがにこやかに教えてくれた。
考えてみたら無敵な天罰デフェンスがあるから、退魔協会も直接的な嫌がらせは出来ないしね。
ある程度貯金しておけばお守りで食いつなげるかな?
退魔協会だって退魔師に対する需要と供給がマッチしていなくて、それなりに退魔師のやりくりに苦労しているらしいし。
取り敢えず。
まずは貯金しつつ、源之助同伴での移動が問題ないかの確認だね。