思っていたより難易度が高かった
「車は色々と改造すると車検に引っ掛かるって話だけど、大丈夫?」
適当な金具をゲットして強化ダンボールの猫ハウスと猫用トイレ、及び餌と水用のトレーを入れた箱を固定し、ついでに寝袋やペットボトルの水とウェットティッシュ諸々を積んでバンで諏訪盆地まで温泉に浸かりに来た私たちに、足だけお湯につけて話を聞いていた佳さんが首を傾げながら尋ねた。
「え?
車検って馬力を上げたりマフラーを外してエンジン音を煩くしたりしたら駄目ってだけじゃ無かったの??」
碧がびっくりした様に尋ねる。
なんか私も車検って基本的に車の買い替えを促すための制度で、自動車産業から資金援助を受けた政治家が意味もなく導入したチェックとして存在し、唯一のメリットが暴走族の車が引っ掛かるって事だと思っていたんだけど・・・違ったの??
「詳しい事は知らないけど、下手に弄って運転者や同乗者に危険が及ばない様に色々と規制があるって聞いた気がするよ?
あと、車の種類によって座席の数の指定とかあるんじゃ無かったかな?
バンだったら良いのかもだけど、勝手にシートを外せるのかは調べた方が良さそう」
佳さんが指摘した。
おっと。
レンタカーで座席を外すのを交渉できたから問題ないと思っていたけど、バンだから大丈夫だったのか、それとも単に車検前に直す予定なのか、微妙だね。
「う〜ん、なんか面倒臭そうだねぇ。
実際に買って改造する事になったら実家近くのガレージのおっちゃんに頼むと良いかも?」
どてっと頭を湯船の奥の石に乗せながら碧が言った。
お。
ガレージをやってる知り合いの氏子さんが居るのかな?
近所の知り合いでも良いし。
取り敢えず、誰か頼れるプロがいるなら任せちゃいたい所だね。
幸い、少なくとも普通に運転するだけだったら源之助は車移動をそこまで嫌がっていないみたいだし。
「ああ、飯田さん?
確かにあそこのおじさんそう言うのもやってるって話よね。
相談したら良さげかも」
同じ諏訪で育った従姉妹だけあって地元情報に詳しいのか、佳さんがあっさり頷いた。
「まあ、まだ先の話だしね。
学生の間は長期休暇の時期以外は宿泊が必要な仕事は基本的に請けないことにしてるから。
諏訪への移動だけだったら今回みたいにバンをレンタルで良いかな」
碧が言った。
年に数回は聖域の雑草収穫に来ているので、その際に温泉にも寄ろうと思ったら一泊した方が良いからね。
源之助も一緒に来れたら2泊しても良いかもだし、移動が源之助にとって快適に出来るなら同伴もありじゃないかな?
「お待たせ源之助〜」
ゆったりと浄化効果ありな霊泉に浸かってリラックスし、その後佳さんとお茶とケーキを楽しんだ。
近所のケーキ屋で適当に買ったお土産だったが、中々美味しい。
練習を兼ねてここから諏訪神社までは私が運転する。
道も分かっているので碧は後ろのスペースに乗っている。
・・・考えてみたら、後ろは座席を外しちゃってあるので席もシートベルトも無いが、実はあれって駄目なんじゃないの?
今って後部座席でも本当はシートベルト着用義務があるよね?
実際に事故ったら危険だろうし。
次回は後ろの座席も一つは残しておいてもらって、シートベルトを使える様にしよう。
帰りも高速を走っている間は行きと同じで助手席に座った方が良さそうだな。
源之助がうっかり前に出てきた時に即座に拘束出来るように、行きは助手席に座っていたんだが。帰りもそうした方が良さそう。
碧は源之助の為に細心の注意を払って安全運転しているが、高速って時々頭の逝っちゃった運転手がいるみたいだし。
『クルミ、源之助は今回の遠出に関してどう言ってる?』
シャーシャー怒ってないとは言え、嫌な思いをしているなら繰り返したらストレスだろうし。
『ちょっと煩いし、変な臭いがするって。
でもまあ、周囲の動いているのは面白いかもって言ってるにゃ』
シロちゃんと一緒に源之助の相手をする為に車に残っていたクルミが教えてくれた。
ほう。
意外に悪くないね。
それ程神経質になっていなら、碧の実家に連れ込むのはどうかなぁ。
考えてみたら真夏や真冬はバンの中じゃあ温度調節が足りないだろうからキツイだろう。
しかも網戸も無いから窓を開けたら虫が入り放題だし。
藤山家に諸々を持ち込んで碧の部屋に閉じ込める感じにしたらどうかな?
藤山家自体は氏子さんとかが頻繁に出入りするから、家の中を自由に歩かせると脱走しちゃいかねないから部屋に閉じ込める方が良いとは思うが。
サイズ的に、碧の部屋ってこのバンよりは大きいんだし、碧の匂いが染み込んでいるからバンよりも環境は良いんじゃないかな?
まあ、何度も移動したら源之助が嫌がるかもだけど。
藤山家に着いてご両親に挨拶した後に要検討ってやつだね!