試行錯誤タイム
「意外と大きいね。
これだったらキャンピングカーを買わなくても、こう言うバンをちょっと改造するだけで十分かも?」
普通免許で運転できるバンで一番大きそうなのをレンタルし、後ろの座席を全て取り外す様交渉していたら借りるのに数日掛かったが、いざレンタルした車を停めた近所の駐車場まで見に行ったら、想定外に大きかった。
「本当にね。
水回りを求めないならマジにこれで十分な気がする〜」
碧が頷く。
水はウェットティッシュとペットボトルでなんとかしちゃって、もうこれで十分じゃない?
本気でキャンピングカーに大金払うのが勿体無い気がしてきた。
まあ、大きなバンだって安くは無いが。
碧と私が車の中で寝るとなったら2段ベッド的なギミックがあった方が良いが、片方が車泊、もう片方はホテルってしたらトイレや洗顔、シャワーも問題ないし、普通免許で運転できるサイズだと元々2人で車泊は狭いだろう。
ホテルや旅館が無い様な僻地への遠出までは元より考えてないんだし。
2人で交代しながら車泊すると考えれば最初から寝袋を2つ用意しておくのだから、もしもの時には二人で横に寝転がるスペースはあるし。
・・・寝袋だったらちょっとぐらい寝相が悪くても隣を蹴ったり殴ったりしないよね?
「まあ、まずは源之助が車での移動にどう反応するかだよね。
車酔いするとか、家を出るのが絶対に嫌って言うなら駄目だし。これで何度か試したら室内ガレージ付き戸建てを目指す必要があるか、はっきりして良さそう」
佳さんちの温泉は定期的に行きたいし、他の温泉もちょくちょく行きたい。
そう考えると、是非とも源之助には車旅へ前向きに反応して貰いたいところだ。
ある意味、この程度のバンで良いならこう言うのを買って駐車場に停めておいて、月一ぐらいで温泉に行っても良いかも?
泊まりがけの遠距離依頼にも連れて行けるし。
駐車場代や車検代とか馬鹿にならないだろうが、大きな室内車庫付き一軒家の維持費よりはずっと安いだろうし、遥かに早く入手できる。
「取り敢えず、準備として床にトイレシートを敷いてその上に碧の部屋のジョイントマットを敷き詰めて、その上にトイレや猫ハウスとベッドを持ち込めば良いかな?」
最初は箱を組み立てた様なタワーを持ち込めば良いと思っていたのだが、バラさないと持ち運んでいる途中に崩壊する事が判明したので、碧が別の一体式で高さ70センチ程度の強化ダンボールで出来た爪研ぎと隠れ場所とベッドが一緒になった様な『猫ハウス』として売り出されていた小型キャットタワー(?)を購入したのだ。
碧の古いシャツを小型な中段の箱スペースに入れてリビングの窓際に置いておいたら、早速昼寝に使っていたのでそれなりに気に入ってくれたらしい。
まだしっかり源之助の匂いがついている訳ではないが、家中のあちこちにある猫ベッドのうちの薄いクッションタイプのをトップのところに置いたらベッドとしても使えそうだし。
車の臭いをそれが打ち消してくれると良いんだけど。
「トイレは蓋付きのを後ろのドアの前にでも置けばいいかな?
一応下り口を壁に向けたらある程度はプライバシーを保てるよね?」
碧がバンの中を見回しながら言う。
「かなぁ?
後は餌と水用のトレーをこっちの運転席の後ろにでも置こうか。
でもちょっとこれ、猫ハウスとかトレーが動かない様に固定する道具が必要かも」
気持ちよく猫ハウスの上から源之助が外をみている時に、急ブレーキでハウスが倒れたり滑ったりしたら宜しくない。
トレーの方もちょっと揺れて水が溢れる程度なら良いが、ひっくり返ったりしたら後が面倒だ。
「固定用の道具をDIYの店にでも売ってないか、探す?
ネットの方が確実にあるだろうけど、流石に通販じゃあ配達までに時間が掛かり過ぎるよね」
碧が腕を組んでバンの中を見回した。
一応シートを退けた分のネジ穴とかがあるから、金具があればしっかり固定できるだろうとは思うんだが、駄目だったらガムテープで止めると言う奥の手かな?
今回は色々と試行錯誤も必要かもと言うことで1日早く車をレンタルしたんだが、正解だったね。
早速ネットでどんな固定具があるか調べて、近所のDIYショップに行かないと。