ペット可って謳ってるのに!
「なんかこう、たった1日の仕事だったのにがっつり疲れた感じがするから、ちょっと気分転換に温泉旅行でも行きたくなるね〜」
たっぷりな朝食を食べ終わり、チェックアウトの手続きをして家に帰ってきた碧は一晩放置されてご機嫌斜めな源之助を抱き上げて撫で回しながら窓辺にある安楽椅子の背中に寄り掛かって言った。
「確かにねぇ。
まあ、あの美味しいとは言えとってもフルな朝食を連日食べていたら碧の助けがあっても太りそうな気がするけど」
いくら朝食は1日の活動でそのカロリーを消費しやすいとは言え、総量が極端に多かったら燃やし切るのは難しそう。
まあ、スイーツバイキングの時みたいに最初から吸収しない様にしておけば良いんだろうけど・・・スイーツならまだしも朝食でそれを頼むのってちょっと気が咎める。
「太らなくても、胃が大きくなっちゃって食事量が増えそうな気はするし。
でも、問題は源之助を旅行に連れて行けない事だよねぇ。
源之助を青木さんの猫部屋に預けて行くのも手だけど、やっぱ可哀想な気がしてリラックス出来ない〜」
源之助を頬擦りしながら碧が言う。
頬擦りは程々にしないと、猫パンチが来るよ〜?
「猫はあんまりテリトリーを離れるのが好きじゃ無いって言うからねぇ。
まあ、シロちゃんと碧が一緒だったら落ち着いて過ごせるかもだから、一度どっかに試しで出掛けてみても良いけど」
最近だったらGPS付きの首輪とかもあるし、ハネナガに魔力をたっぷり渡して源之助を常時尾行して絶対に離れない様に頼んでおいたら源之助がうっかり飛び出しても確実に直ぐに見つけられる筈。
「そうだね。
いつかキャンピングカーをゲットするにしても、源之助が移動をどう感じるかを確認する為にも何度か試してみるのもありか。
キャンピングカーをレンタルするのはちょっとまだ自信が無いから、大きめなバンでも借りて、後ろに源之助のベッドやおもちゃやトイレとか色々入れて、一晩一緒に車泊してみようかな。
温泉宿で部屋をとって凛はそっちで寝れば、夕食と温泉は私も楽しめるし、狭さも気にならないでしょ」
碧が計画を練り始めた。
比較的軽い、箱を積み重ねた形のベッドとキャットタワーが一体化した様なのをこないだ買っていたし、あれだったらバンの後ろに入れられるから源之助も上下運動が出来るかな。
碧は一緒に車泊するつもりなら寝袋になると思うが。
「どうせならそのバンに持ち込む諸々を部屋に持ち込んで一緒に泊まれば?
最近はペット可の温泉宿もあるみたいだし」
温泉と食事を楽しむにしても、どうせなら宿の布団で寝るほうが良いよね?
ペット可な温泉宿だったらきっと障子とかは無いだろうから、源之助が破壊活動をしないよう対応するのもそう難しく無いと思うし。
「以前ちょっと調べたんだけどねぇ。ペット可のホテルや温泉も、殆どは何故か犬用で猫は考えてないみたいなの。
脱走された際に大変だからなのかな?」
首を傾げながら碧が言った。
脱走もあるけど、粗相された際の臭い的なダメージが大きいからもありそう。
あの源之助を買ったブリーダーさんのとこの悪臭は凄かったからなぁ。
旅行先なんて言う慣れない環境に連れてこられて猫が粗相した際のリカバリーが難しすぎるのかも。
でも!!
『ペット可』を謳うならそう言う障害を乗り越えて猫も歓迎して欲しいね!!
まあ、旅行好きな猫が少な過ぎて頑張ってもペイするだけの需要が無いのかもだけど。
「そっか。
まあ、じゃあ車泊で誤魔化すのもありか。
で、どこの温泉に行く?」
温泉宿に宿泊料金を払って態々駐車場で車泊する人間って碧ぐらいのもんだろうねぇ。
でも、今回は食事よりも温泉が目当てだよね。
「と言うか、佳さんのとこの温泉に行かない?
碧は実家の駐車場に車泊して、私だけ泊めさせて貰えないかな?
もしくは、私が車泊でも良いし」
碧のご両親にしても、娘が駐車場で友人が客室にいるよりも、反対の方が嬉しいだろう。
・・・そう考えると、泊まるのは適当なホテルの方が気楽かも?
じゃなきゃ、碧の実家に猫グッズを持ち込んで中で寝るのを試しても良いし。
碧の実家に源之助と泊まりに行けるとなったら1泊2日よりも長い滞在が可能になるから、良いんじゃ無いかね?
やっぱ車泊で寝袋だと思うと親だってもっと居なさいよって誘いにくいだろう。
碧的にはそこまで実家に居たいとも思わないのかもだけど、聖域での雑草刈りなんかの時は数日泊まって乾かした雑草をそのまま持って帰れる方が都合が良いんだよね。
まあ、全ては源之助が車と外泊にどう反応するかによるけど。




