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他の退魔師は?

「そう言えば、新宿担当の退魔師はどうなったの?」

浄化が終わり、急いで東京駅へ向かおうと歩き始めたところで碧がふと疑問を口にした。


あれ?

そう言えば新宿の調査を任された退魔師も居た筈だよね?

もしかして、私らって仕事を横取りしたような感じなの??

別にそうだとしてもその人が術に辿り着けて無いんだから遠慮するつもりは無いけど、この悪臭に耐えて必死に頑張って命を救ったのに『仕事を横取りした』って敵を作っちゃったのだとしたらちょっと切ないぞ。


「新宿は広いですから。

死霊術ネクロマシー以外の大規模呪詛が仕掛けられている可能性もゼロでは無いですから、このまま探してもらっている。

ところで、長谷川さんが悪臭として感じているのって死霊術ネクロマシーの悪臭だと渋谷で白龍さまが仰っていたようだけど、あれって新宿と東京駅のどちらに派遣された退魔師にも感知出来ていないみたいなんですが、どうしてなのか分かります?」

ヘリポートの方へ歩きながら田端氏に言われた。


「多分ですけど、以前病院で体調をちょっと悪くする程度の緩い呪詛を見分けられた調査部の人ならこの悪臭を感じるんじゃないかと」

あの人も黒魔術の適性持ちだったと思う。

退魔協会の方でそう言う適性の見分け方を知っているなら詳しくこちらから説明しなくても良いだろう。


「・・・なるほど。

呪詛に敏感だと死霊術ネクロマシーも感知しやすくなるんですか?」

田端氏が更に聞いてくる。


どう答えるかねぇ。

一応私の技術や知識は全部白龍さまに教わったって言って良いと嘘をつく許可は貰っているから、それっぽい事を言っておくか。

黒魔術の適性持ちって言うのは他にも居るみたいだからいいけど、魔法文明からの前世知識って言うのはヤバ過ぎる。


「白龍さまに聞いた話から推測するに、碧みたいな回復術系の人は呪詛とかに特攻効果があるんで体から漏れている霊力で呪詛とかそれに類する物をかき消しちゃうんで臭いとかは何も感じないんだと思います。

そして風とか火とか言った自然現象を操るのが上手い人はちょっと方向性が違うので、感性が鈍いのでは。

私の才能って回復も自然現象もできない代わりに霊との対話や呪詛の読み解きに向いているっぽいので、呪詛や死霊術ネクロマシーとかを感知しやすいのかも?

そんでもって死霊術ネクロマシーは世界の理に反する術だから、悪臭って言う形で認識するんじゃないかと思っています」

詳しい事は知らんけど。


急ぎ足でヘリポートのある某百貨店に戻りながら、暫く何も言わなかった田端氏がやがて口を開いた。

「渋谷でも、新宿でも、悪臭が消えたら安心したようですが・・・ここには他に術はないと思っているんですね?」


なんか、ちょっと嫌な方向に話が向かっている気がする。

お国にために何かある度に呼び出されて便利使いされるのはごめんだよ?


「碧と白龍さまと私の組み合わせで特に役に立てるのってこの悪臭がする死霊術ネクロマシーを見つけて浄化することですよね?

そう考えると、その他の脅威に関しては別の退魔師の方なり警察なりが頑張るのが限られた時間と人材の効率的な利用だと思いますよ」


黒魔術の適性持ちだって私1人じゃないんだ。

出来れば荒事関係でヤバいのは退魔協会に雇用されている調査部のおっさんに任せて欲しいな。

あっちなら、調査中にテロリストとかに反撃されて怪我しても福利厚生で医療ケアとか労災が出るでしょ?


私は実質個人事業主なんだから、襲われて大怪我しても補償は無いんだ。

命さえあれば碧が治療してくれると思うけど、あまり危険な仕事ばかりウチらに押し付けようとしたら白龍さまが怒るよ?


ちょっとジト目で見たら、田端氏も気付いたのか小さく苦笑して肩を竦めながら某百貨店の脇にあるエレベーターのボタンを押した。


「いやあ、生物兵器とか爆弾とか化学物質とか核燃料っていうのは危機管理の一環としてシミュレーションもして対応策もそれなりに練られているんだけどねぇ。

大規模殺戮用呪詛って言うのはちょっと想定外だったから上の方もちょっとパニックになってて。

ゾンビ映画は観たことがあっても、本当にゾンビが居るなんて今回の報告を上げても信じない上司が多そうだし」


信じてもらえないって言うのは困るだろうね。

実際にゾンビを発生させる訳にいかないだろうし。


が、だとしたら下手をしたらどっかのバカが地方都市の術を小規模にでも解除せずに起動させようとするかも?


「ちなみに、白龍さまの話だと、ゾンビは回復の才能がある術師の浄化ならあっさり動かなくなりますが、普通の手段で対応するなら全身を灰にするか、四肢を全部切り離すかしないと、霊力が抜けるまで動き続けるそうですよ。

だから銃で対応するなら手足が吹っ飛ぶような強力な銃や機関銃で手足を吹き飛ばす形で狙うように情報を流しておくと良いかもですね」

開いたエレベーターの扉の中に入りながら教える。


「え"?!

手足を吹き飛ばすって・・・頭を狙うのでは駄目なのかな?」


ゾンビ映画ってどこまで攻撃したらゾンビが完全に無効化されるんだろ?

ホラーものは嫌いなんで観たことがないんだが、もしかして地球の常識的には腐った脳みそしか入っていなくても、ゾンビの頭を攻撃したら相手が止まるって話になってるのかな?


世界の理が皆の常識と思い込みに影響されるならワンチャンあるが・・・無理じゃね?


「ゾンビって腐った死体ですよ?

脳みそも腐っているんで、思考能力なんてありませんから首を切り離しても手足があるなら動くらしいですよ。

体積によって命令受けて体を動かしている魂魄が減るから、頭を切り離したら動きは鈍るかもしれませんが、完全に止めるには動く能力を取り除くか、浄化するか、火で燃やし尽くすかです。

ああ、悪霊の浄化と同じで普通の退魔師でも浄化できる筈ですね。回復の能力持ちがやるとぐっと楽ってだけで」


黒魔術師なら死霊術ネクロマシーの術の核の部分が分かるからそれを潰せば良いだけなのだが、元素系魔術師(や退魔師)だと力技で全身を浄化しなくちゃならないから疲れるとは思うぞ。


取り敢えず。

東京駅へ行って悪臭があるか、確認したい。

もう夕方の4時なんだ。タイムリミットが渋谷と同じ夜の9時なら良いけど、日の入りだったらかなりヤバい気がする。

・・・最近の日の入りって6時ぐらいだったっけ??


そう言えば、またタイマーの時間の確認をし忘れた。

やっぱ慌ててると色々と取りこぼしがあるなぁ。


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