温泉は良い!
「やっほ〜、どんな感じ?」
碧が戻って声を掛けてきた。
「良いよ〜。
足だけでもなんか気の巡りが良くなった感じがする。
取り敢えず、テープを貼ったところをぶち抜いて貰えばいいと思うんだけど、碧も見てみて」
元の封印は上下四方6面に施されているが、下と上は穴を開けたら防水上どうかと思うし、壁から霊気が出れば敷地の浄化効果は十分だと思うので四面の結界を壊す様にだけしてある。
「こう言うのは凛の方が得意だし・・・良いんじゃない?」
一応四方の壁を見ているものの、気楽な感じで碧が応じた。
まあ、元々回復符の販売も制限されている碧は、基礎は習ったものの私がG避け魔道具カードの作り方を教えるまではお守りをちょっと小遣い目当てに作る程度で、魔法陣とはあまり縁がない生活をしてきたらしいからね。
何と言っても悪霊相手には特効のある白魔術師系だ。
祝詞を唱えれば終わりだし、癒しの術を使うのも本能的な感じらしいし。
細かい魔法陣との付き合いは控えめなんだろう。
「じゃあ、マスキングテープを貼った部分の壁をぶち抜いて下さい。
一旦切り取ったら壁は防水効果のある素材で塞ぎ、中はプラスチック系の断熱材でも入れてもらえればそれで大丈夫です。
一応、万が一を考えて木材や石材は入れないで下さい」
碧の後からついてきた恭弥さんに伝えた。
一番太い線を切る形になるから、木や石を入れて塞いでも多分魔法陣が復活する事はないと思うが、豊富な霊気が思い掛けない効果を及ぼす可能性もワンチャンあるので魔力と相性の悪いプラスチック系の断熱材をれて貰う方が確実だろう。
「あ、そう言えばさっきは具合が悪過ぎて紹介できなかったけど、こっちが従姉妹の美帆ちゃん。
美帆ちゃん、こちらは私の大学の友人で最近は退魔師の仕事も一緒にやっている長谷川 凛さんね〜」
碧が恭弥さんの後ろから現れた従姉妹さんを改めて紹介してくれた。
さっきは悪阻が酷くて立ってるのもやっとって感じでお互いの挨拶も碌に出来る前に口を押さえて家の中に戻っちゃったからなぁ。
悪阻が酷いと言っていたが、碧が診てあげたのかな?
「こんにちは〜。
今日は遠くまで態々どうもありがとう。
なんかね〜、ここの温泉って凄くいいって言うのは有名だったから売れなくて困ってるって聞いて買いよ!!って旦那を説得したのに、来てみたら悪阻が酷すぎて身動き取れなくなっちゃって困ってたのよ〜。
碧ちゃんに診てもらったらなんか大分と体調が良くなったし、敷地もすっかりスッキリしたし、本当にありがと!」
お腹周りが膨らみ始めぐらいな女性に明るく挨拶された。
「いえいえ。
妊婦って温泉に浸かりまくるのが良いか知りませんが、ここだったら足湯だけでも凄く効果がありそうですし、マジで良い買い物でしたね」
変な結界は撤去するし、普通に浄化出来る人がいるなら敷地のちょっとした瘴気もそれ程問題じゃないし。
つうか、霊泉で有名な温泉宿として運用されなければ、余程仕事がブラックにならない限りそこまで瘴気が溜まる様なこともないだろうしね。
霊泉を個人所有(企業名義だけど)出来るなんて、羨ましい。
前世だったらボロ儲け出来ただろうに。
・・・いや、前世だったらどっかの貴族か神殿と手を組まないと暗殺されるか嵌められて取り上げられた可能性が高いかな?
そう考えると現世でなんちゃって霊泉っぽくネットで噂を流して客を集める方が良いか。
会社の客相手に温泉利用券を配るって言っていたから、上手くやれば売り上げに貢献する可能性も高いかも?
霊泉と運気が連動するかは知らないが、少なくとも瘴気を綺麗に祓ったここだったら悪影響は皆無だろうし、この霊泉に社員も定期的に入る様にするなら体調もメンタルなコンディションもベストな状態をキープ出来そうだ。
うむ。
私らも、聖域に雑草刈りに行く際には是非ともフリーパスを使ってこの温泉で一休みさせて貰おう。
まあ、体調だけを考えるなら碧に診て貰うので十分なんだけどね。
でも温泉の気持ちよさは白魔術での癒しを超越するからね〜。
リフォームの業者さんがちゃちゃっと壁に穴を開けて塞ぐのを恭弥さんが見ている間に私らと美帆さんは敷地内の美帆さんたちの家に行ってお茶とケーキを楽しみ、取り敢えず作業が終わったところで温泉に入らせて貰った。
やっぱ温泉は良い!
しかも霊泉だと更に良い!!
どっか聖域近辺で他にも温泉ないかなぁ。
こっそり霊泉ゲットしたくなったぞ。
・・・家で白龍さまにお湯に浸かって貰って、その後に入ったら似た様な効果を得られないかなぁ?
今度碧を唆して実験してみよう。