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拘束!

「大丈夫ですか?!」

碧が声を掛けながら角から飛び出す。


「そいつが急に水鉄砲で変な液体を掛けてきたんです!」

柿野《飼い主》さんが逃げようとしている北沢透ロクデナシを指さして大声で訴えた。


「最近よく聞く通り魔って奴ね!」

碧が正義の味方っぽい声を上げて見事な蹴りで自転車を薙ぎ倒し、転げ落ちた北沢透ロクデナシの腕を手慣れた感じに後ろに捻って抑え込んだ。


へぇぇ、上手いじゃん。

護身術を父親や親族に習ったって言っていたけど、本当だったんだね。

私も高校でそれなりに習ったけど、高校のクラブ活動程度じゃあ素人に毛が生えた程度で実戦で使うには不安が残るレベルだ。


「離せ!」

良い感じに暴れてくれたので、折角碧が取り押さえてくれている間にガシッと鳩尾の辺りに蹴りを入れて動きを止め、カバンに入れてあったガムテープで両腕と両足をぐるぐる巻きにしておいた。


ついでに意識も刈り取っておく。

蹴りじゃなくって魔術で気絶したかどうかなんて、本人にも分からないだろう。


『交番の浅野巡査に連絡がつきました。

今から急いで向かうそうです』

杉本さんの声がイヤホンから聞こえてくる。


「了解〜。

取り敢えず、『もしもの事を考えて見張り用に設置していたビデオ』を持って杉本さんも

来て下さい」

杉本さんに返事する。


犬への襲撃を心配していて見張っていたって言うのは嘘じゃ無いんだから、そのまま証拠を提出しても良いだろう。

北沢透ロクデナシを唆したとかじゃ無いんだから、違法な囮調査って訳ではないのだ。

隠さずに証拠をバンバン出しても良い筈。

第一、囮調査って違法じゃ無いよね?


「大丈夫ですか?」

碧が柿野さんに改めて声を掛ける。


「なんか首の方に掛かったのか、ヒリヒリする?

でも、ノビタ君は大丈夫みたい」

柿野さんが首の後ろの辺を気にしながら言った。


掛けられた液体の危険度を確認する為に、手袋をした手で水鉄砲を拾い上げ、ちょっと振ってノズルの先に垂れていた液体が北沢透ロクデナシの手の甲に落ちる様にしてみた。


直ぐに肌が真っ赤になったが、一瞬でじゅっと泡が出て皮膚が溶ける程ではないので警官が来るのを待っても良さげかな?


「「大丈夫ですか?!」」

杉本さんと警官がほぼ同じタイミングで現れた。


「この人がこちらの方に襲い掛かっていたので、自転車を押し倒して足止めしたら暴れたのでちょっと蹴りを入れて偶々持っていたガムテープで縛りました」

簡単に説明する。


「ちなみに、多分こいつがここ半年程被害が出ている変な酸を掛けてくる通り魔なんじゃ無いかと思うんですが、掛けられた液体をもう洗い流して良いですか?

殆どは服に掛かったようですが、一部首筋にも飛んだみたいなんです」

碧が付け加える。


「杉本さんが言っていた件ですか。

本当に通り掛かりの人に酸を掛けているなんて、とんでも無いですね。

ちょっと署で証拠を残しながら必要なら治療もしますので、車とヘルプを呼ぶまで待っていただいても大丈夫そうですか?

怪我が酷い様でしたら待たずに洗い流して下さっても結構です」

警官が柿野さんの方を覗き込みながら言った。


「できる限り万全に立証してこの人が言い逃れ出来ないようにしたいので、首の後ろがヒリヒリしますがこの程度なら大丈夫だと思うので我慢します」

柿野さんが答えた。


偉いね〜。

まあ、変に頭皮に火傷が出来て禿げてたら後で碧がこっそり治してくれるから、安心してね。


「ここの道が通り魔の出没ルートの一つだと聞いていたのでずっと動画を撮りながら見張っていたので、襲撃場面の動画もあります。

後でコピーを渡しますね」

杉本さんが警官に声を掛ける。


見張っているって話はしていたのだからハイクオリティな動画があっても怪しくは無いだろう。


「ありがとうございます。

ちなみに、彼は自転車から倒れた時に頭でも打ったのですか?」

道に落ちていた水鉄砲やリュックの写真を撮った後にビニール袋っぽいのに入れながら警官が聞いていた。


「いえ、自転車を蹴り倒して取り押さえたんですが、それでも暴れたので揉み合っている間にどうも蹴りがガシッとお腹の辺に入ったせいの様です。

危険人物だと思っていたので必死だったんですが、これって後で訴えられたりしますか?」

ネットで調べた限り大丈夫な筈だけど、一応聞いておく。


「いえ、襲撃を目撃して取り押さえようとした際に揉み合いになるのはよくある事なので、大丈夫です。

ただまあ、危険人物を見かけたら警察に任せていただく方が安全ではありますけど」

苦笑しながら警官が答えた。


「合気道は子供の頃から学んできていましたし、杉本さんからここら辺で散歩中の犬が襲われている話は聞いていたので、みすみす見逃すのは選択肢に無かったから必死だったんです」

まるで怖い思いをしたかの様に腕を摩りながら碧が言った。


あの見事な自転車への蹴りを考えると全然怖く無かったと思うけど、イメージは大切だよね。

願わくはちゃんと予定通り襲撃シーンが終わったら杉本さんが動画の撮影を止めていると期待しよう。




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