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襲撃と捕獲

「一発で喰らいついてくれると良いんだけど・・・」

あれから数日掛けて北沢透ロクデナシの徘徊ルートを確認し、ビデオの望遠レンズで証拠場面を記録できる場所を探している間に商店街のおばちゃんルートでアイツの身元も割れたので、襲撃を誘発して何とか逮捕させる手配ができた。


「柿野さんも大分と油断している振りが上手くなったから、大丈夫じゃないかしら」

双眼鏡で道を見張りながら杉本さんが言う。


身元が上がってくるまではハネナガに北沢透ロクデナシを見張らせて、水鉄砲を持って家を出たら危険そうなルートで態と私や碧が人目につくところでさりげなく待ち合わせでもしている顔で立っている事で『目撃者が居ない』と言う状況にならない様にしておいた。


2日目の午後に北沢透ロクデナシの身元が判明したので杉本さんが興信所を雇ってアイツを日中ずっと見晴らせ、家を出てきたらグループチャットで犬の飼い主仲間に警告を出して1人で散歩しない様にしてきた。お陰でここのところ襲撃する対象に上手く出会えず、北沢透ロクデナシは大分とイライラしてきている様だった。

野良猫や家の庭でうたた寝している猫に関しては、追加で契約したハネナガの仲間の霊が北沢透ロクデナシが近づいてきたら猫に警告して追い払う様にしている。

犬なら微妙だが、猫はかなり霊にも敏感なので鴉の霊の使い魔でも短期間だけ追い払う程度のことは出来たので助かった。

大分と魔力の消費が増えて、お守り作りとか収納用の亜空間の拡大とかは全然出来なくなったけど。


それでも、流石に野良猫まで含めた全ての猫を助けるのは人間のネットワークでは難しかったからね。しょうがない。

で、その間に杉本さんが近所の交番でリードが溶けるような危険な液体を水鉄砲で掛けてくる不審者が居たって件で相談し、飼い主仲間で見張りあっているのでもしもの時に襲撃があったら直ぐに連絡を取ったら来て欲しいと頼み込んである。


「あ、あれかな?」

別の双眼鏡で道を見張っていた碧が声を上げる。

双眼鏡をずっと見ていた杉本さんが頷いて携帯を手に取った。


『容疑者が近づいてきました。各自準備お願いします』

杉本さんがチャットアプリのグループ通話機能を使って呼び掛けた。


「じゃあ、私たちも準備しようか」

碧に声をかけて、マンションから外へ向かう。


実は、北沢透ロクデナシがよく通るルートの一部が見える場所に黒崎さんの氏子さんが住んでいるマンションがあったのだ。

5階の窓からだと何をやっているのか丸見えなのだが、距離があるから安全だと思っているのかその道も北沢透ロクデナシの襲撃ルートに一つにされているっぽかったので、準備が整った今日はそこで望遠レンズ付きのビデオを持った興信所の社員が待ち構えている所を丁度良いタイミングで散歩仲間が1人で犬を連れて歩く事になっている。


私と碧は角を曲がった先で待機し、悲鳴が上がったら駆け寄って北沢透ロクデナシを捕獲する役。

勿論魔術で無力化する予定だけど、表向きは碧の合気道の腕が良いと言う事を強調してある。そして杉本さんが電話で呼び出す警官が北沢透ロクデナシを確保する流れだ。

現行犯で逮捕させないとね!!


散歩をする飼い主役は苦労して見つけた耐酸性の高いビニールの作業着を服の下に着ているし、ワンちゃんの服も下に同種のビニールを縫い付けてあるので酸がかかっても多分大丈夫な筈。

酸だったら即死は無いから、もしもの時には碧がどうとでも出来るしね。


『容疑者が道に入ります』

息を潜めたような杉本さんの囁き声がイヤホンから聞こえてくる。

今回の為にワイヤレスのイヤホンも買ったのだ。

別に杉本さんは声を潜めなくても良いんだけどね。


北沢透ロクデナシの後ろを飛んでいるハネナガの視野に道の前をのんびり歩いている(様に見える)犬と飼い主が入ってきた。


うん、良い感じ。

のんびり歩いている様に見せる為に、あれもかなり練習したんだよねぇ。

最初の候補者だった飼い主さんはどうしても緊張しちゃって、そのせいで神経質な犬が吠えるのをやめないので『呑気さに定評がある』と言うノビタ君とその飼い主に急遽変更になったのだ。


お陰で耐酸性作業着とか犬用の服のサイズ調整とかちょっと大変だった。

犬を襲う相手に憤るのはわかるけど、神経質な人と犬だったら囮役に最初から立候補しないで欲しかったよ・・・。


『3メートル、2メートル、水鉄砲を構えました!』

杉本さんの声が続く。

ハネナガの視界に、ノビタ君へ後ろから近づく北沢透ロクデナシが自転車の上から水鉄砲を片手に取って構えるのと、ノビタ君を覆う様に突然前に飛び出してしゃがみ込む飼い主の姿が見え・・・背中に水鉄砲の飛沫が届いた。

「きゃぁぁ!」


おっと。

飛沫が首筋の方に飛んだかな?


「行くよ!」

碧に声を掛け、飛び出す。


取り押さえるついでにどさくさ紛れに一回ぐらい蹴り付けても分からないよね?


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