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目撃情報

「そこそこ出没情報が集まりましたね」

碧のタブレット上に出されたマップを見ながら黒崎さんが言った。


公園のそばの獣医さんが他の獣医に連絡をとって情報を集めてくれたので、散歩中じゃない時に襲われたペット(主に猫)の話が獣医系からそこそこ集まった。

青木氏は外れだったけど。

彼の担当範囲からは少し外れていたのかな?

まあ、こないだの井戸物件や前の猫屋敷モドキみたいな例外を除くと青木氏が賃貸の仲介とか管理をしている場所は集合住宅の方が多いみたいだから、そうなると庭で猫が休んでいて襲われるなんて事もないんだろう。


杉本さんの公園での散歩仲間や黒崎さんの氏子さん経由の調査でも当たりが複数あり、幾つかは獣医さん経由の情報と重複していたけど大分とデータが集まった感じだ。


「公園の中に入って飼い主と一緒にいる犬を襲う勇気は無い代わりに、公園にへ向かう途中か帰りのルートで人通りが少ないのを狙って後ろから自転車で近づいてくる感じですね」

黒崎さんがマップを見ながらコメントした。


飼い主と一緒にいる犬を襲った案件と、それ以外とを色を変えてみたところ、明らかに飼い主と一緒の犬に関しては場所に局地的な偏りがあるのだ。


「残虐な事をする癖に高齢者な女性の飼い主にすら顔を見られない様に自転車で後ろから襲うって、用心深いと言うか臆病と言うか。

お陰で目撃情報が無くって困るね」

碧がため息を吐きながら言った。


そう。

5人程度も直接の被害者と思われる飼い主がいるのに、『自転車に乗っていた』と言う情報しか無いのだ。


後ろから近づかれるので接近に気付かず、襲撃を受けてからは動転して犬の方に気を取られていて『自転車に乗った男』程度しか認識していなかった。

ほぼ空振って服に微量の液体が付いたらしき時は、『思い起こしてみたら自転車が側を通ったかも』程度しか認識していなかったし。


「これがもっと商店街の中だったりしたら防犯カメラとかに写っていたかも知れないのに!

そうだ、ウチの敷地も道に面するところにこっそり防犯カメラを設置しようかしら?

チャラちゃんが襲われたらところってギリギリ敷地から見える範囲だと思うのよね」

黒崎さんが言い出した。


おお〜。

碧のカリスマ祈祷師に協力的だし、ペットは嫌いじゃ無いだろうと思っていたけど、どうやら『嫌いじゃ無い』じゃ無くって『大好き』みたいだね。


流石に防犯カメラを設置したら高くつきそうだけど・・・でもまあ、最近は鳥居とか神社の境内でも悪戯とか悪意のある破壊行為をする酔っ払いとかがいるらしいし、あっても悪く無いかな?


・・・と言うか。

「考えてみたら、あの公園のそばの獣医さんのとこの前も通ってそうじゃない?

あそこって防犯カメラは無いかな?」

流石に獣医の前で犬を襲撃したりはしないだろうが、少なくとももう一つの公園に行く時のルートとしてあそこを通っているんじゃ無いかな?


「獣医さんがクリニックの前に防犯カメラなんて設置するかな?

基本的に防犯カメラって泥棒とか落書きをした犯人を特定するとか、特定するぞって威嚇する為の道具でしょ?」

碧が首を傾げる。


「まあ、聞いてみよう」

携帯で獣医さんのところへ碧が電話する。


「こんにちは〜。

昨日はどうもありがとうございました。

色々情報が集まって襲撃範囲はそれなりに目処が付いたんですが、目撃情報が全然足りなくって・・・。

それで思ったんですけど、もしかしてそちらのクリニックって表に防犯カメラとかってありませんか?

あったら犯人が下見している姿とか襲撃後の姿が映っているかもと思うんでちょっと見せていただけると有り難いのですが」

受付嬢が電話を取ったので取り敢えずお願いをしてみる。


『あ〜、確かにあのマップを今朝先生に見せてもらったら。意外とここの近くでしたよね。

そっかぁ、下見とかでも彷徨いていたかもですね!

ちょっと先生に聞いてみます!』

とっても前向きな返事が返ってきた。


「どうも防犯カメラがあるみたいだね」

言い出したのは私だけど、ちょっと意外。

もしかして、獣医に対しても嫌がらせとかする人がいるんかね??


それこそ源之助を買ったブリーダーさんとかなんかだったら強烈に臭かったから近所の人がこっそり嫌がらせをしても不思議はないと思ったけど、あの獣医さんは別に異臭もしなかったのにね。

それでもペットがしょっちゅう来るのが気に食わない人とかがいるのだろうか?


『もしもし?

一週間分しか映像が残らない契約なんで使える映像があるか分からないが、調べたいなら見てくれて良いよ。

ただ、うちは狭いんでクリニックで見てもらうなら終業後になるが・・・なんだったらオンラインで見る?

出力しようと思ったらクリニックの端末でやって貰う必要があるけど』

先生が出てきてありがたい提案をしてくれた。


「良いんですか?!」

思わず碧が声を上げる。


『他人事じゃあ無いし。

昨日貰ったメールアドレスに臨時アクセスのリンクを送るね』


「ありがとうございます!!

・・・ちなみに、獣医さんのクリニックでも落書きとか悪戯をされるんですか?

お願いしておいてなんですが、防犯カメラが必要そうな業種だとは思っていませんでした」

好奇心が疼いたのでついでに尋ねてみる。


『獣医でも人間と同じで麻酔薬とかはあるからね。

ただまあより切実な理由としては、獣医だったら動物好きだと思うのか生まれたばかりの子猫や子犬を捨てていく不届き者が多くって。

冬の夜中になんて外に放置されたらあっと言う間に凍え死んでしまうから、センサー付き防犯カメラを設置したのよ』

おお〜。

確かに、あの獣医さんのところに『里親募集』のポスターが貼ってあった。


動物好きが集まるところだから誰かにお願いされたのかと思っていたけど、クリニックの前に捨てられてたの??



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