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合宿だ〜!:煙い

「これって、やっぱり試さないとダメかなぁ?」

そこそこの数が出来上がった自家製蚊取り線香を前にして、碧が合宿の最後のステップを飛ばさないかと提案したげに溜息をついた。


「効果があるか否かの確認は重要だよ。

蚊を捕まえておく方法がないんだから、我々が身を張って引き寄せて実験せねば!」

男子の一人が声を上げる。


「そっちは良いわよ、上手くいけば蚊に刺されないで済むんだから。

こっちはコントロールグループよ!

合宿にきて、散々頑張ったのに蚊に刺されるのが前提なんて、虚しすぎる〜!!」

碧が叫ぶ。


まあねぇ。

気持ちは分かるけど、必要な犠牲だから。

「大丈夫、最近の掻かないパ○チは効き目が凄いから」


今回の合宿で、私たちは蚊取り線香を自作した。

米糊もどきを代用したが、無事に蚊取り線香っぽい物も出来上がった。

中々達成感があって満足したのだが・・・作ったからにはちゃんと効果があるか、確かめる必要がある。


と言う事で、蚊が多いと評判の墓地の側で半数はコントロールグループとしてそのまま30分、残りの半数は作った蚊取り線香を焚きつつ30分、夕方の蚊が多い時間帯に別の一角で屯することを合宿前に決めていた。


コントロールグループは人身御供としてどれだけ蚊に刺されたか確認し、蚊取り線香組とどの程度違うかで効果の程を確認しようという話なのだ。

ついでに周りに蚊の死骸が落ちてたら更に良し。


勿論、誰も蚊に刺される前提のコントロールグループにはなりたく無い。

嫌がって合宿に来なくなることも想定できたので、これは当日の朝にくじ引きで一人一人決めた。


残念な事に、碧はコントロールグループ。

私は幸いにも蚊取り線香グループになった。


あまり自分の運が良いとは思っていなかったのだが、優しい家庭に生まれ、碧にも出会えて色々教えてもらえ、今回は蚊取り線香グループになり。

今世は中々運が良い様だ。


碧は不幸だったが・・・回復も解毒も出来るのだ。

後でこっそり虫刺されの傷(?)も治療してしまえば問題ないだろう。


「考えてみたらこれって風が強かったら煙も蚊も飛んじゃってテストにならないところだったね。

折角風もごく僅かな微風で理想的な状態なんだし、最後の打ち上げを楽しみにしながら30分我慢しよう!」

碧と同じく不幸な人身御供班になった八幡先輩が溜息を吐きながら立ち上がった。


「あ、ちなみに蚊取り線香はこっちの七輪の網の上で火をつけてね。

地面に直接じゃあ上手く燃えるか不明だし、墓地の地面に焦げ目をつけたら顰蹙だし」

碧が何処かから入手した大量の七輪を指差しながら言う。

田舎だとどこの家庭でも七輪を持っているのかな?

都心じゃあ七輪を集めるのも一苦労しそうだけど。


ちなみに今回使わせてもらう墓地は近所のお寺のものだった。

神社に墓地はあまり無いらしく、諏訪大社の方に何かあるらしいがそれなりに距離がある。

どうしようかと相談していたら『蚊取り線香のテスト程度だったら仏様に失礼にならないよう気を付けてくれれば良い』と藤山家とも馴染みのある近所のお寺の住職さんが言ってくれたので、歩いて5分のそこへ行く事になった。


流石、田舎の地元ネットワーク。

と言う事で。


「煙い!!!」

「煙が目に沁みる!」

「なんか燻されてる気分・・・」


幾つかは持って帰って東京でも試す予定だが、そこそこの数を作ったのだ。

しかも場所は外。


煙が散る事を心配して、皆で四隅プラス中央に山程の蚊取り線香に火をつけたところ・・・やたらと煙くなった。


「考えてみたら、普通の煙でもこんだけ燻せば蚊除けにならない?

コントロールグループにも香か線香でも焚いてもらっておかないと、効果の比較にならなく無いよね?」

絶対にこれ、蚊取り線香を焚きすぎてるし。


「あ〜。

確かに。

お寺で線香を買って燻せっていってくるわ」

ゴホゴホと咳き込んでいた男子がこれ幸いと走り去って行った。


「打ち上げの前にお風呂だね、こりゃ」

誰かが呟く。

煙で涙が滲み出ているせいで周囲がよく見えない。


「服も洗濯した方が良いかも。

着替えても鞄ごと煙くなりそうだし、電車で近くに座った人に迷惑だよ」

別の誰かが応じる。


今日着ているのはお気に入りの白い綿ニットなんだけど、煙で灰色やベージュになったりしないよね??

後で碧ママに頼んでお洒落着用洗濯洗剤を使わせて貰おう。

と言うか、心配だからビニール袋に密封して持って帰って手洗いした方が良いかなぁ。

いや、汚れが定着する前に、お洒落着用洗濯洗剤で手洗いすればいいか。


蚊取り線香のテストの時にお気に入りな白を着るなんて、うっかりしてた。


取り敢えず、色々な事を考えつつ目を閉じ、出来るだけ息を浅く吸って煙を耐える。

蚊に刺されるのも嫌だが、この煙攻撃も意外と辛いな〜なんて思っていたらタイマーが鳴って30分経過を教えてくれた。


「やった!!!」

目がヒリヒリする。

後で碧に軽い回復ヒールを頼んでみよう。


「さて。

蚊取り線香の一部を消して、蚊の死骸が落ちてないか、調べよう」

態々そのために石畳の場所を選んで、前もって掃除までして蚊の死骸を見つけられる様にしたのだ。


これだけ頑張ったんだから、数匹は見つけたい。






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