表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
422/1362

こんなもの?

「離婚の話し合いが拗れて夫が妻を殺そうと計画して、気付いた妻に先手を取られて殺され、問い詰めに来た愛人も妻に殺された、と。

更に失踪宣告が出た祝いをしていた妻とその恋人が悪霊化していた愛人の霊に煽られて、うっかり喧嘩が行きすぎて妻が殺された、ですか。

何とも生々しい男女の愛憎の果てって感じですね」

電話で呼び出した田端氏に状況を説明したところ、呆れた様にため息を吐かれた。


「愛って言うよりも行き当たりばったりな人間の欲の果てって気もしますけどね。

ちなみに、なんかやたらと殺人事件によく行き当たる気がするんですが・・・私達ってそんなに運が悪いんですか?

それとも、退魔師って殺人事件によく当たる職業なのでしょうか?」

殺された被害者が悪霊化したり地縛霊になって事故物件化するのは良くありそうな気がするから、そう考えると退魔師として働くと殺人事件に絡む可能性は高いかも。


しかも、古くて強い悪霊ではなく比較的新しい悪霊はそこまでパワフルでは無いことも多いので、下っ端の私らに仕事が来るのかな?

でも、考えてみたら普通の退魔協会の依頼で殺人事件に出会った事はない。

基本的に青木氏の霊障鑑定だ。

一件は洗濯機が壊れた時のコインランドリーだったけど。


「まあ、それなりに退魔師は殺人事件の被害者に行き当たる事は多い・・・かな?

だから自分も協会に出向しているんだし。

でも考えてみたら、依頼が来て退魔協会が調査した段階で怪しいって連絡がある事の方が多いな。不動産屋の霊障鑑定をしているせいでその調査ステップが君たちになっているのかもね」

田端氏が薄く苦笑しながら教えてくれた。


そうか、普通の退魔協会の依頼だったら先に調査が入るから、露骨に殺人被害者っぽい霊だったらその段階で警察に話が行くのか。

調査部の人間が全部しっかり霊の姿が視える術師なのかは知らないが・・・霊視に特化した人材が多いのかも?


そう考えると、事故物件って実は発覚していない殺人現場な事の割合が高いのだろう。

持ち主がケチって退魔師を頼もうとしないとか、退魔師や悪霊の存在そのものを信じていないから除霊の依頼も考えようとしないせいでそのまま放置されている殺人事件って意外と多いのかな?

悪霊の存在を信じて霊障鑑定を頼む事にした持ち主の物件で、ウチらの行動範囲圏にあるのと言う限定的な条件に当て嵌まるのだけでも1年ちょっとでそれなりの数に当たっているんだから、全国レベルでいったらかなりな数になりそうだよねぇ。


日本って世界一平和だって言われるけど意外と人は殺されているようだ。

海外だったら更に凄いのかな?

それとも海外の危険性って店で銃を振りかざす強盗とかが多いってだけで、こっそり殺されている殺人は日本より少ないか同程度なのかも。


「ちなみに、唯一生き残った殺人者である妻の恋人って見つかりそうですか?」

碧が井戸の中にウィンチみたいので降りて行く白い着ぐるみっぽい保護服を着た警察の人を眺めながら尋ねる。


「7年前だからねぇ。

井戸の中にうっかり防水のしっかりしたラミネート加工の身分証明書でも落としているんじゃない限り、今更犯人を見つけるのも殺人に結びつけるのも難しいだろうね」

田端氏が溜め息を溢しながら答えた。


青木氏によると、賃貸に出す際に家の中にあった持ち主の母親の遺品は全部業者を雇って売るか捨てるかしたらしい。

7年以上前の話だから駅付近とかの防犯カメラに映像も残って居ないだろう。

近所に聞き取りしたところで、漠然とした人物像が出てきたらめっけもの、恋人の存在そのものが気付かれなかった可能性も高い。

それに悪霊に影響された弾みでとは言え、人を殺したのだ。

本人はさっさと行動圏を変えて姿を消しているだろう。


「なんか、今まで誰もここを開けようとしなかったのが意外かも」

井戸があったら開けてみようとか思わないのかね?

もしくは危険そうだから埋めるとか。


「持ち主曰く、母親にそう言ったら井戸があるのはもしもの時には役に立つからと頑として埋めるのは拒否されたらしい。それに東日本大震災の後は自然災害による停電のニュースが増えたから、もしもの時は水源があるのは便利だと自分でも思ったとか。

とは言え、使う前に一度清掃して水質検査もした方がいいだろうと話してはいたが、結局何もしなかったので一度も使って無いとの事だが」

電話で持ち主から聞いた話を田端氏が教えてくれた。

今回は犯人が誰だか分かっているので、案外と軽い感じで事情徴収をしているらしい。


犯人が分からない場合は持ち主が殺人犯である可能性を考慮してもっと用心深く話を拾っていき、矛盾した点が無いかとかを確認するために何度も執拗に同じような質問を繰り返すのだと言っていた。


『退魔師関係の犯人が分かっている事件に慣れちゃうと、もう普通の捜査には戻れないんですよね〜』と以前笑いながら言っていたが、確かにそうかも。

答え合わせ的な捜査しかしてない捜査官なんて怖すぎて、悪いが自分の事件には関わって欲しくないよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ