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ちょっと羨ましい

『愛理を1人にしちゃってごめんね。

天国から見てるから、寂しくっても1人じゃ無いわよ』

理沙さんが愛理ちゃんを夢の中で抱きしめた。


触感って再現させるの大変なんだけどねぇ。

最後だから親との触れ合いを感じさせてあげようと魔力をガッツリ使っている。

この後の除霊は碧がやるから良いんだけど、ちょっときつい。


「お母さん。

良い子にして頑張るから、安心してね」

愛理ちゃんがぐっと理沙さんのウエスト周りに力を込めて抱きつきながら言う。

良い子や。


『あら、やんちゃな愛理があんまり良い子にしてると疲れちゃうんじゃない?

不良になっては欲しく無いし、ちゃんと良い学校に行って自分がやりたい仕事を出来るようになって欲しいけど、無理に『良い子』にはならなくて良いわよ。

それよりも、いつでも携帯は手放さずにして、助けを求める相手も複数連絡が取れる様にしておくのよ!

例え信頼ができる職員さんや後見人さんが病気や怪我で辞める事になっても、今は大変そうだからとか遠慮せずに代わりに信頼が出来る人を絶対に紹介してもらって、その人としっかり話し合っておいてもしもの時に直ぐに相談できる様にしておくの。

お母さんはうっかり信頼する相手を間違えちゃったから、頑張って人を見る目を磨いてね』


う〜む、小学生に人を見る目を磨けと言うのは難しい注文な気はするが、考えてみたら人を見る目なんて年齢と関係ないかも?


良い年した大人だった理沙さんだって、事故とか夫の死とかでバタバタしていたとは言え叔母の人格を見損なっていたんだから。


血で繋がっていようが人は必ずしも良い人ばかりじゃ無いって事実を手遅れになる前に学べただけでも愛理ちゃんにとっては大きな収穫かもね。

授業料は高すぎたけど。


その後もちょっとした思い出の話とか、将来のこととかを話していたが、そろそろ魔力がきつくなってきたし時間的にも記憶に残る限界に近づいたので、そっと周囲の色を白く、薄くしていく。

これが時間切れの合図だと理沙さんには言っておいたのをちゃんと思い出してくれたのか、最後のお別れを言ってぎゅっと抱きしめたのでそこで夢の繋がりを切った。


「『ありがとうございました』」

夢から覚めた2人の声が重なった。

流石、親子。

しかもどうしようもない別離に関して八つ当たりせずにお礼を言えるなんて、偉いもんだ。

勿体無い人が死んだね。

どうせだったらあの依頼主みたいなロクデナシが死に、理沙さんが長生きすれば良いのに。


現実とは本当に儘ならないものだ。


「では、お別れも終わった様なので」

碧がすっと立ち上がって祝詞を唱え始めた。

部屋の向こうにいる後見人さんに掛けた注意散漫にさせる術も解除しておく。


我々が退魔師だと言う話は田端氏経由でしてあるのだが、この後見人さんはそれを微妙に胡散臭く思っているみたいなんだよねぇ。

もしもの時に愛理ちゃん関連で何か連絡する事があった場合に排除されないように、出来れば退魔師もまともな現実に即した職業だと認識して貰いたい。


碧の除霊はかなり特別だから、目では見えなくても神聖な何かを感じられる可能性は高い。


本当にねぇ。

こうも優しく美しい除霊ができるなんて、羨ましいよ。

回復術が使えるだけでも嫉ましいのに、除霊でも優しく出来ちゃうなんて、ずるい〜。


前世でも、同じ非元素系魔術師でありながら奴隷扱いの黒魔術師と違って優遇される白魔術師が妬ましかったが、社会的制約のない現世でも羨ましく感じるとは切ない。

まあ、碌でもない政治家や役人達のせいで碧の活躍の場はかなり制限されちゃってるけど。


そう考えると、退魔師としての仕事は同じぐらい出来るんだから文句は言っちゃいけないね。


『さようなら。

色々とありがとうございました』

輝かしい霊力に送られる理沙さんが最後にお礼を言いながら、昇天していった。


「お母さん、いっちゃった?」

愛理ちゃんが溜め息を吐きながら言った。


「だね〜。

でも、凄く良い感じに優しく送って貰えたから天国から問題なく愛理ちゃんの事を見守ってるんじゃないかな?」

乱暴に除霊されるのと優しく昇天を促されるのでその後に違いがあるかは知らないし、昇天してから転生するまで魂が何をしているかも不明だが・・・どう考えても、乱暴に送られないに越したことはないだろう。


そこら辺は霊を喚び出して聞いてもはっきり認識されてないのか教えてくれないんだよねぇ。

私も知らないし。

どうなってるんだろ?



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