表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
409/1365

セラピー?

「現代のセラピーってどの位効果的なのかな?」

理沙さんの霊との相談が終わり、クルミに頼んで愛理ちゃんの所へ戻す為に出て行って貰ってから碧に相談した。


下手に愛理ちゃんのセラピーとかトラウマの話を理沙さんの前でしたら余計に心配して昇天するのを嫌がりそうだから、余分な魔力を使うけど態々愛理ちゃんの元へ戻したのだ。


「さぁ?

それこそ近代とかその前は体系立ったトラウマのケアなんか殆どしてなかっただろうから・・・無いよりはマシだろうけど、どの程度効果があるかは知らないなぁ。

アメリカなんかではベトナム戦争やイラク戦争での戦闘のトラウマにずっと苦しむ人がいるって話だけど、治療がイマイチだからなのか単に予算が足りないからなのか不明だし、流石に愛理ちゃんのも殺し合いのトラウマ程は酷くないと思うし。

魔術でぱぱっと直せないの?」

碧が微妙な顔をして肩を竦めた。


回復術だったらぱぱっと病気や怪我が治るからなぁ。

精神はそこまで割り切れないモノなんだよねぇ。


「交通事故とかだけだったら事故の記憶をバッサリ完全に消し去っちゃえばフラッシュバックも無いし、ストレスも減るんだけど、1年近くの虐待経験となるとねぇ。

流石に1年間の記憶を全部消しちゃうわけにはいかないでしょ?

辛かった部分だけ思い出さない様になんていう中途半端な術をかけるとそれこそ元気になってストレスを感じなくなって来た時期にフラッシュバックが起きるから、あまりお勧め出来ないんだよねぇ」

極端な恐怖経験のせいで正常な日常生活が送れなくなった場合なんかに、強いストレスを感じさせる記憶を認識させない術はある。だがこれって精神が立ち直ってストレスに対応できる様になるとそう言う記憶が術の範囲から外れて認識範囲内に戻ってくるせいで、結果的には延々と苦しい記憶がポロポロ出てくる羽目になりかねないんだよねぇ。


かと言って恐怖感そのものを弱める術をかけると、過去の記憶じゃなくって普通のこれからの生活でも恐怖感が薄れて危険な行動を取りやすくなる。

下手をしたら危険な運転をして事故を起こすとか、ヤクザに絡んで痛い目に遭うとか、海外旅行で治安の悪い地域に無防備に入り込むとかやりかね無いから不味い。


「そっかぁ。

考えてみたら、飢えた経験で食べ物やお金に凄く執着するとか、個人宅を怖がって誰かと一緒に暮らせなくなるとかって症状が出るかもだけど、食べ物やお金に執着する人は普通に貧乏だった人でもそう言うのは居るし、貧乏じゃなくてもケチな人は居るしね。

結婚だってしない人はしないんだし。

あまり極端に気にしなくても良いんじゃ無い?

それこそ、5年後ぐらいに一度確認してみて、ヤバそうだったら問題な記憶を消すとかしたらどうかな?」

碧が提案した。


「そうだねぇ。

ある意味、私らの依頼は理沙さんの除霊だけで、愛理ちゃんのアフターケアは依頼の中に含まれて居ないもんね。

一応忘れない様にオンラインカレンダーの5年後の今日にでも、『愛理ちゃん確認』とでも書いておこうか。

連絡が取れなくなると困るから、一応チャットIDを交換しておいて年賀状代わりのメッセージでも毎年出しておけば良いよね」


なんか、他にも数年後に確認しようと思ったことがあった気がするけど・・・なんだったっけ?


◆◆◆◆


「お久しぶり、愛理ちゃん。

こないだ警察の人が物置から愛理ちゃんを救い出した時に一緒にいた退魔師の長谷川と藤山だけど、覚えているかな?」

という事で児童相談所の担当の人が見つけた『信頼できる職員が居る養護施設』に愛理ちゃんへ会いに来た。


「・・・お母さんを消しちゃうの?」

暫し何も言わずに黙り込んでいた愛理ちゃんだが、根気よく待っていたらやがて顔をあげて聞いてきた。


ちなみに、プライバシーが欲しいとお願いして、未成年後見人は大きな部屋の向こう側で待ってもらっている。

こっそり注意力を散漫にする術を掛けてあるので、何も聞いていないし記憶にも残らない筈。

ついでにさらっと表面意識だけ確認したが、まともそうな人だった。

まあ、理沙さんも文句を言ってなかったしね。


「消すのではなく、昇天して天国で暫く休んでもらって、時が来たら次の生へ生まれ変わるの。

このまま現世に幽霊として残ると理沙さんは消耗しちゃって、それこそ擦り切れて消えちゃう可能性があるから残れないのよ」

碧が優しく説明する。


「消えちゃダメ!

それじゃあ、我慢してさよならする・・・」

良い子だねぇ。


「最後のお別れに、夢の中で会わせてあげられるからここでちょっと昼寝する?

霊感があまり無い人って寝ていてバリアが下がってないと普通の霊は見えないし聞こえないんだけど、15分程度だったら夢の中で愛理ちゃんがお母さんと話して、その記憶が残る様にしてあげるのは可能だよ」

それ以上長いとイマイチ記憶に全部残りにくいいんだよねぇ。

それにあまり長い間寝てると職員さんとかに怪しまれるかもだし。


「お願い」

愛理ちゃんが頷いた。


「じゃあ、昼休みにうたた寝するような感じでちょっと机の上におでこでものせて?」

背中を寄り掛かって座るスタイルだと横に倒れ込む事があるからね。


ソファでもある応接室だったら良かったんだけど、後見人の人が邪魔にならないだけ離れて同室にいられるような大きな部屋はこの会議室しか無かったので、ソファは無理だった。


「こんな感じ?」

微妙にぎここちなく愛理ちゃんが机の上におでこを乗せて昼寝スタイルになった。

そっかぁ、小学生じゃあまだ机で昼寝なんてしないんだねぇ。


「うん。

じゃあ、おやすみ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ