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まだ居るんだよね

「本人の希望もあったので愛理ちゃんは児童養護施設に入り、財産その他は弁護士の未成年後見人を裁判所が指名して本人の意思を確認しながら成人するまで管理する事になった。

虐待経験に関する心のケアは児童相談所がカウンセラーを紹介して暫くそちらに通う事になる」


結局、先日は愛理ちゃんを児童相談所から来た人に預け、依頼主の違法行為の捜査は警察に任せて我々は一旦家に帰った。


一応理沙さんが見知っていた違法行為に使った品々(スタンガンとか!)やPCや携帯のパスワードは田端氏に伝えておいたけど、それ以上は特に出来ることも無さそうだったしね。


自分が死に、娘が虐待されていた家に残っても精神衛生上良くないだろうし、娘のことが心配だろうと愛理ちゃんのお気に入りのバッグに一時的に理沙さんが取り憑くのを助け、1日一回クルミに様子を確認させていたので極端に問題は無いのは分かっていたが、詳しい話はクルミ経由ではイマイチ把握できていなかったので今日の田端氏からの報告は有り難かった。


「本人の希望って・・・親戚はもう嫌だと?」

碧が聞き返す。


「個人宅だと何をされても外部から見えないって言うのが怖いから、親戚に引き取られるのも里親に出されるのも嫌だと。

一応父親側の従兄弟って言うのも見つかったんだが・・・愛理ちゃんは人が沢山いる養護施設が良いってかなり強硬に主張したし、その従兄弟も特に父親と親しくしていた訳では無いので養護権を争う事も無く、あっさり話は落ち着いたと聞いている」

田端氏が肩を竦めながら教えてくれた。


まあ、家庭内ってある意味密室だからねぇ。

流石に学校に行かせずに物置に閉じ込める程の虐待はないにしても、親戚の家に引き取られたらそこの実子とは差別されて虐待っぽい扱いをされる可能性はあるし、養育費だって言って遺産を使い込まれる可能性もある。


養護施設出身って就職とかに不利かもと言う気もするが、社会に出る時に頼らせてくれないような親戚の元で暮らして遺産を使い込まれるよりも遺産が残っている方が絶対に将来的に役に立ちそうだ。


「ちなみに、遺産はどのくらい残っていました?」

徐々に使い込む程度だったら半年で全部使い切るって事はないだろうけど、ある意味確信犯的な感じもしたからなぁ。


理沙さんを死なせたのが偶然なのか、考えたらずな行動の結果なのかは知らないけど。


「かなりの預金が引き出されていたが、幸いにもあの叔母の銀行口座に移しただけで殆ど使われて居なかったから、取り返す手続きは既に始まっているし大丈夫そうらしい」

田端氏が答えた。


決まった使い道がある訳でも無いのに金を取ったのかぁ。

将来が不安でお金が欲しかっただけなのかね?

何はともあれ、あの依頼主にバハマとかのオフショア銀行に口座を開いてお金を隠す技能が無くって良かった。

働いている様子も無かったし、考えてみたらあの依頼主の資産ってどっから来てたんだろ?


横領した金でその被害者の霊を除霊させようとして悪事がバレたって流れだとしたら、何とも皮肉だ。


「ちなみに、理沙さんの死や本人の虐待に対する慰謝料みたいのはあるんですか?」

過失致死や殺人って被害者の家族が加害者に損害賠償請求を出来るのかな?

訴えたところであの依頼主にどれだけ資産があるかは知らないが。

下手に破産するところまで毟り取ったら逆恨みして刑務所から出所後にナイフを持って襲ってくるかもだけど、そこら辺は本人が決める事だろう。


8歳じゃあ判断は難しそうだが。


「刑事責任は国が責任をもって追及するが、慰謝料は民事だからなぁ。

本人が希望すれば未成年後見人が訴訟を起こせるだろうが、後見人の方から勧める事は・・・無いかも?」


微妙だな。

愛理ちゃんが成人する頃じゃあ時効になっているかもだし、成人まで時効がストップするにしてもあの依頼主がとんずらしてるとか、自分の資金を使い切っている可能性もある。


「まだ理沙さんの霊も残っているので、一度愛理ちゃんと会えますか?

本人の様子を見て、今後の希望とか理沙さんの希望を聞いて出来る範囲で手伝いをしてから理沙さんの除霊をした方が良いでしょうし」

基本的に退魔協会の依頼って前払いなんだよね。

除霊したり呪咀返しした後に『やっぱやめた』は無理なので、絶対に金を取りっぱぐれない様に依頼主から先に依頼金を全額受け取ってから依頼が退魔師に回されるのだ。


だから今回もあの叔母が逮捕・起訴されようと依頼そのものは有効だし、いつまでも残って娘の周りに取り憑いているのは理沙さんにとっても愛理ちゃんにとっても好ましい事では無いから、タイミングを見計らって除霊はしようと碧とも話し合っていた。


理沙さんの心配や希望、伝えたい事なんかを聞き取りして、愛理ちゃんに説明したり未成年後見人がアクションを取る様に働きかけて、それらが終わったら除霊した方がいいだろう。


「あぁ〜。

そっか、まだ居るんだ・・・。

愛理ちゃんの都合が良い日を確認しておくよ」

田端氏、気付いてなかったんだ。

やはり全然霊感とか無いんだね。




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