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現行犯じゃないの?

「よっ、と」

手に持っていたパンプスを地面に置き、しっかり履いて立ち上がる。

うっかり踵を潰してしまったりしたら靴が痛むからね。

ただでさえ足にしっかり合う靴を探すのは難しいのだ。

値段だってバカにならないし、絶対に痛めない様にかなり注意を払って履いている。


考えてみたら、見た目は悪くない上に履き心地の良いパンプスも退魔師の仕事としての必需品だよね。

これって経費として落とせるのかな?


今度税理士さんに聞いてみようと考えながら、母屋から離れたら左奥の方に物置が見えた。

よかった。

下手に物置が隠れていると悲鳴が聞こえたって事になっても直ぐさま助け出した行動が疑わしいなんて言われかねない。木にかなり隠れているとはいえ、しっかり目に見えているので子供の悲鳴が聞こえたから物置を開けたと言うのに無理はなさそうだ。


「それで?

子供はどこに?」

革靴を履いた田端氏が後ろから近づいて来た。


『クルミ。

やっちゃって!』

念話で命令を伝える。


『了解にゃ〜!』

嬉しそうな声と共に、何やら音がしたと思ったら物置の方から子供の悲鳴が聞こえてきた。

なんか楽しんでない?

猫って悪意は無いけどちょっとSっ気があるよねぇ。


「ぎゃぁぁぁ!!

助けて!!

いやぁぁ!!」


「あの物置ですね!」

さっと見えていた物置の方を指差す。


「大丈夫か!?」

すぐさま田端氏が物置の方へ駆け寄った。


バンバン物置の扉を叩く音が聞こえている中、田端氏が物置の扉に3つ程付けてあったチャイルドロックっぽいのを外して扉を開け放った。


あんな百円ショップで売っている様なプラスチックのちゃっちいチャイルドロックでも人を監禁出来るんだねぇ。

本気で壊そうと力を掛けたら壊せそうな気もするが、内側からの引き戸って言う力のかけ難い条件だと難しかったのかな?

まあ、3つ一気に壊そうと思うと大変だろうし、3つもってところが依頼主の本気度が見えた。


中からちょっと薄汚れて痩せた女の子が飛び出して来た。

「うわぁぁん!!

ごめんなさい、もう文句を言わないから閉じ込めないで!!」


「大丈夫だ。

私は警察の者だ。

子供をこんな所に閉じ込めるなんて、躾としても法で許される範囲を大幅に超えている。

君の親戚のおばさんが悪い事をしていたんだ。

ちゃんとした人に君の事をしっかり見守って貰うから、何が起きたのか教えてもらえるかい?」

子供をそっと抱きしめ、しゃがみ込みながら田端氏が尋ねる。


おや。

意外と子供の扱いは上手いね。


そっと物置の中を覗き込むと、園芸用の腐葉土か何かの袋が積んである上に毛布が残っていた。

よく見たら、愛理ちゃんは靴も履いていない。

ちょっと汚れたフリースのジャケットを着ている上にダウンジャケットが毛布のところにあったから今の時期なら凍えはしなかっただろうが、靴が無かったら抜け出すのも難しいだろう。

地面に空っぽの500mlのペットボトルとポテトチップスの袋が落ちていた。

もしかしてあれが食事??


物置までお皿に入った食事を持ってくるのは面倒だとしても、コンビニ弁当ぐらいは出しなさいよ!


取り敢えず、携帯で物置の中と扉に付いているチャイルドロックの写真をとっていたら、後ろからガラっと音がした。


「何をしているんですか!

勝手に人の家の物置の中を覗き込むなんて、訴えますよ!!」

おや。

依頼主にバレたか。


さっきから愛理ちゃんがそれなりに声を上げていたからねぇ。


「子供の悲鳴が聞こえて来たから物置の扉を開けただけです。

こんなところに未成年者を監禁するなんて、何を考えているんですか!」

田端氏が立ち上がって依頼主に厳しく言い返す。


「しかもこれって今回だけの話じゃないですよね。

どう考えても未成年者の保護者として相応しい扱いではないのでは?

警察に通報したいので担当部署に連絡して貰えますか?」

110番を鳴らすよりは児童虐待を調査できる部署に直接連絡を入れた方が良いだろう。


「そうですね。

最寄りの県警の担当部署に知り合いがいるので、すぐに来てもらいましょう。

あなたにも話を聞かせてもらうために、警察署まで来てもらいます」

田端氏が携帯を取り出しながら応じ、依頼主にも言い渡す、


話を聞かせてもらうだけ?このまま現行犯で逮捕って訳にいかないの?



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