ヘルプを呼ぶ
「クルミ。
庭にある物置に行って現時点でも子供が監禁されているかと、今すぐ命に関わる状態じゃ無いかとを確認してきてくれる?」
隠蔽型のクルミを呼び出して情報確認をお願いする。
霊(名前は東堂 理沙さんとの事だった)が嘘を言っているとは思わないけど、時々霊って死んだ後の時間とか事実の認識が曖昧になるんだよね。
理沙さん達母子が監禁されて、理沙さんが退院後のケアを受けられず叔母に実質見殺しにされたのは事実だろうし、その叔母が子供(愛理ちゃんとの事)を生命保険金目当てに引き取って物置に閉じ込めたりの虐待的な扱いをしたのも本当だろうけど、下手をすると愛理ちゃんも既に死んでいる可能性がある。
外から助けを呼ぶ前にそこら辺を確認しないと。
「ちなみに、田端氏をここに電話で呼んで愛理ちゃんと会わせるのってありかな?」
クルミが戻るのを待つ間に碧に相談する。
まだ生きていたら、だけど。
「・・・一応『ちょっと悪霊が変則的な感じに手強いのでスペシャリストの同僚を呼ぶ』とでも言って依頼主にOKを貰っての方が良いだろうね。
警察が理由もなく家に押し入ったって事になると後であの女を起訴する際に問題が起きるかもだから」
碧がちょっと考えてから言った。
「そっか。
虐待されている子を見かけたって通報しても、警察じゃなくって児童相談所とか経由の扱いになるとしたら更に虐待して心を折ろうとしかねないから、何としてもOKを貰わないとね」
まあ、いざとなればそれは思考誘導でOKを出させよう。
既に我々を呼ぶ事に納得しているのだ。
追加的人員を無料で呼ぶ分にはそれ程抵抗は感じない筈。
田端氏は一応退魔協会付けになっているらしいから、我々が必要なヘルプとして呼んでも完全な嘘では無いし。
『女の子が居たよ〜。
かなり疲れてうたた寝してるけど』
クルミが戻ってきて言った。
「おっし。
じゃあ、田端氏を呼ぶね」
碧が携帯を取り出して言った。
『はい、田端です』
田端氏の声が携帯から聞きこえて来た。
「あ、藤山です。
今、凛と一緒にとある個人宅での悪霊祓いに来ているんだけど、その霊によると叔母である依頼主に実質監禁されていた後に虐待死した上、更に問題なのが彼女とその夫の生命保険金目当てに娘が引き取られて今も監禁・虐待されているって話なんです。ヘルプとしてこちらに来て頂くのは可能かしら?」
碧が状況を説明する。
『監禁と虐待!?
ちなみにその娘さんは何歳ですか?』
母親が入院中に1人で居られなかったんだから高校生以下だろうが・・・。
「娘さんが生まれたのは何年?」
理沙さんに聞く。
『2014年です』
となると、8歳程度か。
学校はどうなったんだろ?
交通事故とか母親の死亡とかのどさくさ紛れにそのまま学校を移るタイミングで休学扱いにでもして誤魔化してるんかね?
流石に碌に食料も貰えずにフラフラだったら担任とかがどっかに通報しそうだ。
「8歳ですって。
人と話す必要がある場合は2日前ぐらいから物置に閉じ込めて碌に食事も水も与えない事で心を折って虐待されている事実を言わせないようにしているって。
今日も物置に閉じ込められているみたい」
碧が田端氏に答える。
『取り敢えず、そちらに行くので依頼主からOKを取って下さい。
出来る事なら監禁されている物置の方へ自然に行ける状態だといいですが・・・無理そうだったら本人が抜け出すのを手伝えますか?』
「なんとかしますので、こちらまで来てください。
時間はどの位掛かります?」
折角ガタガタと雨戸を叩くと言う話が出ているのだ。
庭に出て状況確認すると主張すれば良いだろう。
文句を言おうとしたら一時的に意識を朦朧とさせても良いし。
碧が住所と最寄駅を伝える。
『そこなら・・・30分で着きます』
早いね。
「ちなみに、愛理ちゃんと意思疎通は出来たりします?」
理沙さんに尋ねる。
出来れば田端氏と庭に出たタイミングで愛理ちゃんに物置の扉を叩いて助けを求めさせるのが一番自然な流れだろう。
本人が自力で出て来たら、『ちょっとした躾、本人だって悪い事をしたと分かっているから出て来られるのに中に居たんだ』なんて言い抜けられかねない。
『夢には時々出て話をしていますが・・・あまり覚えていないかも知れません』
理沙さんがちょっと困った様に答える。
う〜ん、あまり霊感がないタイプだと、クルミが話しかけても聞こえない可能性が高いなぁ。
しょうがない、クルミに脅かさせて助けを求めさせるか。
Gが出たとでも誤認したら、それなりに悲鳴をあげて出ようとするだろう。
多分。
監禁が辛すぎて『Gが友達』なんて言う状態になってないと祈るよ・・・。