合宿だ〜!:将来像
「それで、これからのプランはどんな感じなの?」
碧ママが聞いてきた。
「取り敢えず、合宿が終わったら協会に碧が発見報告して、私は研修受けて、登録。その後は一緒にボチボチ悪霊退治と符の販売・・・だよね?」
碧に確認する。
「あと、売れそうだったら安眠用とか肩こり解消のお守りをここの授与所に置かせて貰うのもアリかなって思ってる」
碧が付け加える。
神社を使って金儲けして良いのかな?
碧ママの瞳がキラリンと光った。
「肩凝り解消のお守りって良いわね。
安眠用のお守りも評判になればバンバン売れるわよ!」
・・・どうやらお守り販売での金儲けは問題ないらしい。
「ちなみに、神社でのお守りの販売から得た利益の税金ってどうなるんでしょう?
宗教法人って税金が掛からないって聞いた気がしますが、私達は宗教法人の一部じゃない・・・ですよね?」
「お守りの販売自体をウチが主体になってやっていれば、利益は喜捨金扱いで無課税。
だけどその利益をあなた方に還元する為に給料を払うと個人の所得税は掛かるわね」
う〜む。
まあ、給与所得なら控除が50万円ちょっとあるって聞いたから、学生時代はお守りを売って年間50万円以上の利益は出ない程度に抑えればいいか。
「ちなみに、悪霊退治の所得って税金はどうなるの?」
碧が肩を竦めた。
「なんと、退魔協会も宗教法人なんであちらは非課税。
依頼主からの報酬から協会側の費用や経費の精算、所定の手数料を引かれた後の利益が私達に嘱託社員の給与として払われるわ」
「え、マジ?給与所得なの?
我々で事業法人として売上扱いは出来ないん?」
探偵業を考えていた時のリサーチによると、給与所得は控除が効く金額までは美味しいが、それを超えるレベルになったら法人売上として扱う方が色々経費で落とせて良いっぽいのだが。
しかも、収益を法人の方にためておいて必要になるまで分配しなければ所得税もかからないし、配当扱いで分配すれば現時点なら税率は20%ちょいでキャップが掛かる。
まあ、法人税と配当の扱いをどうするかは調整が難しいかもだし、700万円ぐらいまでは所得税率も20%以下なので無理に配当金扱いする必要は無いが。
「実際に法人を設立して、協会の登録を変えれば事業法人の売上としての扱いも可能だよ」
碧パパが答えた。
「あ、そうなんだ?」
碧が驚いたように尋ねる。
「私も碧が一人前になるまでは悪霊退治のノルマを熟す為にこき使われていたからね。
協会とのやり取りに関してだったら色々と経験しているから、何でも一応相談してみてくれ」
にこやかに・・・仄かに腹黒い感じに碧パパが言った。
「やっぱり退魔協会って、微妙に敵性組織なんですか?」
「どんな組織もある程度大きくなるとメンバーの利益よりも組織の利益を優先する人間が評価されてトップに就くようになるのよ。
特に退魔協会の場合、表立った栄誉が貰える訳では無いからねぇ。
どれだけ協会に利益を齎したが貢献の評価基準で、それを元にボーナスや昇進が決まるから・・・あそこの役職持ちなんかは誰も彼も金への執着が凄すぎて、触ると黒い粘着物がこっちにまで貼り付きそうなぐらいよ。
協会に利益を齎すならこちらの為に色々頑張ってくれるけど、利害が一致しないと冷たいわよ〜」
碧ママが薄笑いしながら答えた。
なる程。
「まあ、露骨に協会員を売ったり嵌めたりしたら退魔師に逃げられかねないからね。
しかもウチは歴史だけはあるから業界に知り合いも多いし。
普通の仲介業者だと思って取引をする分には大丈夫じゃないかな?
互助組織だなんて甘えた事を考えていると危ないけど」
碧パパが総括した。
「分かりました。
取り敢えず、登録してちょくちょく悪霊退治して、目立たぬよう符を売ったらどんな感じになるか様子を見ましょう。
ちなみに、ノルマってどう言う計算で課されるんですか?」
「古い家系は幾つか『特権』を認められる代わりにノルマがあるの。
まあ、半年に一回ちょっとハードな案件を熟す程度かな?
凛は個人だから優遇して貰えない代わりにノルマは無い筈だよ」
碧が答えた。
「私が碧と組んでる場合は?」
「・・・凛も藤山家の一員扱いになるかな?」
碧が尋ねるように両親の方を見遣る。
「その可能性が高いかな?
少なくとも、碧と組んで仕事をしているなら、碧のノルマ案件の難易度は2人のチームとしてのものになるだろうね。
正式に事務所を開いて法人化していなかったら凛君に特権は認めないだろうけど。学生の間は曖昧に誤魔化して適当にこき使おうとしてくると思うよ」
碧パパが答える。
「よし!
碧、適当に法人を設立してさっさと事務所にしちゃおう!
特権をよこせと騒ぐつもりは無いけど、どうせこき使われるならはっきりさせておく方が良いわ」
碧は白龍さまが居るから変なことはされない可能性が高いが、適当にしていたら私が色々と搾取対象にされかねない。
「そうだね、協力するよ」
碧パパがにこやかに答えた。
・・・これってさっさと立場を固めるよう、誘導されたのかな?
まあいいけど。