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不味い・・・(田端氏視点)

『以前の宝冠の件で犯人が軽い呪詛にかかっていたっぽいって話、どの位共有されています?』

突然掛かってきた電話で、長谷川さんが尋ねてきた。


「え、報告書には載せていないし、私は誰にも言っていないよ?

防犯カメラの映像を見ていた人間はそれなりに推測していただろうけど」

幾ら便利だし軽微とはいえ、一応呪詛は違法だ。

躓く程度の呪詛が法的にどう言う扱いになるかは微妙に不明とは言え、氏神さまの愛し子と言う利用価値の高すぎる藤山さんの相棒として働く長谷川さんに変な弱みが出来たら色々と面倒な事になり兼ねない。

だからこそ、冗談混じりに本人にはこれからももしもの時はよろしくと言った感じの事は言ったが、他者には情報を漏らさぬようそれなりに注意を払ったつもりだ。


『昨日、退魔協会に呼ばれて何やら迫力のある男性に「国家の平安の為に排除しなければならない人間がいる、国と国民の為と思ってとある輩を数ヶ月動けなくさせてくれ」って頼まれたんです。

勿論、呪詛なんて掛け方を知りませんしそもそも不法行為なんて問題外ですって言って断りましたが、もしかしてあの件での協力の話が変な風に広まっているのかと思いまして』

スマホから更に声が流れてくる。


はぁぁ??

以前、藤山さんに治療を無理に頼もうとした政治家が圧力を掛けるつもりで長谷川さんを誘拐させて天罰を食らった話はそれなりに関係者の間では共有されている。


だとしたら同じような願いを政治家がするとは考えにくいし、退魔協会が協力するのも意外だ。

・・・と言うか。

国家の平安の為、ねぇ。


なんか警察庁(うち)や公安のお偉いさんが使いそうな言い回しな気がする。

政治家ではなく治安組織側だから断り辛く、退魔協会が天罰に繋がるような事にならないだろうと期待して協力した可能性もあるかも知れない。


「え〜と、基本的に決定的な言葉はどこにも記録されていない筈だから、徹底的に知らぬふりをすればいいと思うが・・・どうして欲しい?」

多分諸悪の根源はこちらだろう。

出来る事ならば何でも協力するが、下手に動くと却って事態が悪化する可能性もある。


『私の家族に圧力が掛けられる可能性ってどの程度なんでしょうか?』


治安機関が直接的に出来る行為はかなり限定的だ。

だが、『容疑が掛かっているので調査している』と明言して周囲で質問して回るだけでかなり社会的信用の逸失が起き得るので、意外と嫌がらせ的な事は出来る可能性はある。


勿論、対象の立場や職種にもよるが。


しかも困った事に本人にまで話が伝わる頃にはかなり被害が出ている可能性があり、ある意味取り返しの付かないちょっとした焦土作戦とも言える。

圧力を掛けられて折れてもダメージの回復は難しく、長谷川さんの方が一方的に被害を受けるだけになり兼ねない。


「こちらでも調べてみるが・・・ちなみに報復の天罰ってどの程度の被害が出たら発動できるのか、教えてもらう事は可能だろうか?」

自分が属する組織のお偉いさんに対する背信行為かも知れないが、被害に気づいてからでは遅い可能性が高い。


『・・・悪意のある行動を起こせば可能、だそうです』

暫しの沈黙の後、返事が来た。


「相手の名前とか映像が必要?」

『いえ、そちらは私から縁を辿れるそうです』


「ならば、こちらからも調べるけど天罰の準備をしておいて、その人物が圧力を掛けるための威圧行為をする様に命じたら直ぐに下して貰うと良いかもしれない。

こちら(治安組織)の上層部が関与している場合、長谷川さんが変なことが起きていると気づいた段階で、既にご家族がどうしようもなくなって退職に追い込まれている可能性が高い」


『はぁ?!

退職、ですか??』

電話の向こうから驚愕の声が返ってくる。


「相手はもしかしたら警察か公安組織の上層部の人間かも知れない。

そう言う立場の人間だったら絶対に直接的に暴力を振るわせたりはしない。

だが、やり方次第では警察や公安の人間が色々と質問をして回る事で悪い噂が立って社会的信用に壊滅的なダメージを受けることもあるんだ」

流石に国民と法を守る立場の人間がそこまではやらないと思いたいが・・・大を生かすために小の犠牲は我慢すべきと偉そうに口にする人間はどの組織にもいるのだ。


自分が犠牲にならないと思っているからこその言葉で反吐が出るが、政治家や警察官僚に多い考え方だ。


『・・・分かりました。

助言ありがとうございます』


「いや、あの件で助けて貰った事が原因かも知れないからね。

私も調べてみるが、残念ながらこちらにお偉いさんを止める術はないと思って欲しい」

本当に情けない事だが。


考えてみたら、長谷川さん達のような『天罰』と言う超法的な報復手段が無いが為に社会の裏へ追いやられた使い勝手の良い便利な技を持つ人間は、一体どれだけ居るのだろうか・・・?



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