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魔素エネルギー

「ちなみにさぁ、昨日の心霊スポットじゃないけど魔素の濃いところで発魔力工場みたいのって前世では無かったの?」

夕食を作りながら碧が聞いてきた。


チキンを炒め、オニオンやジャガイモと人参を鍋に放り込んでいるのでカレーかシチューかな?


「無かったねぇ。

魔道具でそれなりに便利な物はあったけど、人力で出来る生産過程用よりも貴族用の護身や便利な道具や、家事の時間削減用やマジックバッグみたいな経済価値の高い道具を作ったりって言う物の方が多かったし・・・大量生産システムを構築するほど魔石を大量かつ継続的に入手するのは難しかったって言うのもあるかな?」

蒸気による紡績系作業の自動化が地球での工業化の大きな動きだったのではないかと思うが、前世では冬場の内職や安い女子供の労働力を使っていた機織りとか糸紡ぎを態々魔道具でやろうと考える事業家はいなかった。


布を大量に安く生産できたら確かに物凄く儲かって周辺諸国に対して経済的優位に立てたかも知れないが・・・。

それだけのスケールで生産をする程の魔石を確実に入手するのも、生産した物を値が暴落しないだけ遠くへ大量に安く輸送するのも難しかったからかな?


「でもさ、地球よりもずっと魔素が濃かったんでしょ?

だったらそれこそ温泉みたいに濃厚な魔素が湧き出ているところもあったんじゃないの?」

碧が鍋に水を入れて火をつけながら言った。


「そう言う濃厚なところは魔物も多かったからね。

魔物を駆逐しないと研究は難しいし、駆逐しちゃうと魔石が取れなくなるから魔道具が作れなくなるしで、誰も本腰を入れて魔素利用の研究をしようとしなかったって感じかな?」


個人だったら独りで籠って研究していた錬金術師や魔術師はいただろうが、魔石や魔道具そして魔術師の希少性を保つ事が権力の集中に有利に働くと見做していた王族や貴族がさり気無く研究から生産への移行を潰していたのではないかと思う。


王都の研究機関も大量生産用の魔道具ではなく、一品物系の『凄い』魔道具を開発する方が評価されていたし。


「まあ、下手に大地から魔素を抜き取る技術とかを発達させちゃうといつかはそれが暴走して大災害が起きるとか、魔素を使いすぎて大地の恵みが枯渇するとか、ラノベのあるあるだしね。

そう言う研究はしない方が社会の持続性が高いかも?」

碧がそう言いながらカレールーの箱を取り出した。

今日はカレーの様だ。


「まあねぇ。

それこそ、前世の古代文明がそれで滅びた可能性は十分にあるからね」

古代文明は明らかに前世時点での技術水準よりも進んでいたが、『遺跡』であった。

つまり何かが原因で滅びていたのだ。


そう考えると、迂闊に古代文明の遺跡の研究をするのも危険な行為だったな。

使った自分が言う事じゃないけど。


「地球も300年とか1000年後には今のビルとかを遺跡として発掘して研究するようになっていたりしてるかもね〜」

笑いながら碧が言う。


「まあ、戦国時代とか平安時代からの1000年だったら世界が破滅している可能性ってそれこそ巨大隕石でも落ちてこない限りなさげだったけど、今からだと1000年どころか300年後にも現代文明が残っているかそれなりに怪しい気はするよねぇ」

核戦争とかやばいウィルス兵器とかの暴走とかがなくても、普通に地球温暖化だけでも今の社会が持続出来なくなりそうな気がしないでもない。


「そう考えると、希少な心霊スポットで魔力を利用する研究をして、電気とかが無くなっても生きていける様にするのもある意味先見の明があるのかも?」


「いやいや、ただでさえ巨大隕石が落ちてきた時のリカバリーに魔素を使い過ぎて枯渇ギリギリになってるのに、更に使ったりしたらそれこそ温暖化に地球が対処できなくて星が滅びるよ??

それに、発電所の代わりになんとか魔素を利用して動力源に出来たとしても、移動手段が無ければ文明レベルの維持って難しいでしょ」

ある意味、前世でもっと文明が進まなかったのって安価で安全な大量輸送手段が無かったせいでもある気がする。


魔素や魔石を使って魔道具で効率的に大量生産できたとしても、それを消費地へ効率的に動かす方法が無かったのだ。

海も地上も、どこにでも魔物がいたのでそれなりに護衛が必要だったから、どうしても前世では輸送というのは高くついた上に小規模単位になってしまった。

転移門での移動は人間ならまだしも日常品や食料を大量に動かすには魔力消費量が大きすぎたし。


魔物を完全に駆逐すると手軽に魔石を入手できなくなるから、どこの貴族も魔物の対処は常にバランスを考えて行っていた。

だから隊商はそれなりに自衛力が必要だったし、電車の様な常設的な移動手段の設置は実現が難しかった。


結局、局地的に発達しても将来性は限られるんだよねぇ。

一箇所だけ富んでるとそれを奪おうとする周囲に襲われるし。


地球で発電所代わりに魔素で色々生活や生産に使える場所が出来たとしても、流石に他の地域でのエネルギー源にするのは無理だ。

そうなったらディストピア状態になった地球でも生き残りは厳しいだろう。


エネルギー源って難しいもんだよねぇ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公たちの恋愛のドロドロがでてこないので気軽に読めます。 [気になる点] 碧にも転生の魔法陣については説明してなかったような? 何故か前世の記憶がある、程度の説明に留めていたのではなかっ…
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