マジック携帯ホルダー?
「何をやってるの?」
魔力入り和紙を袋っぽい形に折り畳んでいる私に碧が声をかけて来た。
「ちょっと携帯の電波が入るマジックバッグっぽいポーチみたいのでも作れないかと思ってね。
実験中」
面倒な事になったら嫌なので現時点では退魔協会に売りつけていないが、収納符は一応それなりに作れる様になった。
収納スキルそのものも、毎晩魔力を込めているお陰でスーツケース2つ分ぐらいまで広がったので、それなりに実用性が出て来た。
が。
相変わらず収納スキルの中は電波が通らないので携帯を入れられない。
なので収納の機能を弄ってなんとか携帯の電波が届くマジックバッグっぽい物を作れないか、試そうとしているのだ。
「携帯の電波?」
碧が首を傾げて尋ねた。
「財布やティッシュやちょっとしたメークの道具は収納の亜空間に入れる様になったから大分と身軽になったんだけど、携帯はそうもいかないじゃない?
だからせめて時空魔術で重量を軽減したポーチを作れたら良いな〜と思って」
基本的に女性用の服は碌なポケットがないし、携帯なんぞ入れたら形が崩れる。
だから重量をゼロに近く出来る小さなマジックバッグっぽいのが作れたら服の形を気にしないでポケットに入れられるかも知れないし、ダメでも軽いポーチにでも入れる事にしたら邪魔にならないだろう。
「重量を無くそうと思ったら亜空間に入れるしか無いんじゃない?
でも携帯電波の入る亜空間なんて、あるの?」
以前ちょっと試行錯誤していたのを見ていた碧が首を傾げた。
「私が生成できる亜空間そのものに電波が通る様にするのは結局どうやっても無理だったんだけど、形を工夫して重さだけでも支えられないかと思ってね」
元々、私が知っている符や魔道具は魔法陣を魔力で描く事で機能する。
だから自分が知らない魔法陣を魔道具化は出来ない。
つまり、自分の収納で魔法陣を修正して携帯電波が通る様に出来ないなら。そんな魔道具も作れない。
だから考え方を変えてみることにしたのだ。収納スペースを小さくして、携帯の下半分だけが入る様にでもしたらどうだろう?と。
携帯のどの部分で電波を受信しているのか知らないけど、もし上半分でやっているなら下半分を収納する事で携帯を支えて重さ実質ゼロに出来て、携帯を持ち歩きしやすくなるかも知れない。
「ふうん?
そんでもって何故に和紙を折ってるの?」
「一回きりの使い切りな収納符じゃんなくって、何度でも出し入れできるマジックバッグもどきなのを作りたいのよ。
だけどこっちって魔石がないじゃない?
そうなると魔力源としてこの和紙が一番向いていそうだからこれをそのまま魔道具化出来ないかと思って」
前世でもマジックバッグは持っていたしよく使っていた。
確かあれは適当なバッグに魔法陣を刻みこみ、魔石を動力源にしていた筈。
あの頃は時空魔術が生えるなんて期待もしていなかったので、詳しく構造は見た事がなかったけど。
「え、もしかしてマジックバッグが実際に作れそう?!」
碧が興味津々で身を盛り出して来た。
「普通に自分の亜空間に入れて持ち歩く方が楽だと思うけど、携帯が繋がらないと困るでしょ?
だから携帯入れ用のを作りたいんだよねぇ」
「マジックバッグ、私も欲しい!
お酒じゃないと白龍さまが協力してくれないから、ちょくちょく不便なんだよ〜」
碧がすがってきた。
「収納符を使えば良いじゃん。
和紙を使わして貰っているんだし、符の試作品とかはただであげるよ?」
色々と試しているので収納量が少ないのとか、魔力の持ちが悪いのとか、売るのには微妙な試作品の収納符はそれなりの数がある。
売るなら和紙も買取りだが、試作品だったらタダで良いとお金を受け取って貰えていないので、喜んで提供するよ?
「使い捨てって心理的抵抗が強過ぎて。
恒常的な魔道具が作れるならそっちが良い!」
う〜ん。
収納符は亜空間に魔力を溜めておくから和紙程度の魔力でもスーツケースサイズの収納が可能になるのだが、亜空間の魔力は一度使うと離散しちゃうからなぁ。
継続的なマジックバッグの亜空間利用を可能にするには和紙では魔力が足りないんだよねぇ。
「また今度、夏休みにでも聖域に行って良さげな魔石を探す?
和紙じゃあそれこそポーチサイズ以上は無理だと思うから」
でも、あまり強力な魔石を使うと魔力視持ちの注意を引きそうな気がするけど。
あれってマジックバッグの中だったら大丈夫なんだっけ・・・?
まあ、取り敢えずは自分用の携帯ホルダーを作れるかが先だね。