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取り敢えず挑戦

「うちは平飼いさせているんで割高なんですが、味はずば抜けて良いんです。

ただまあ、ある意味そう言う動物保護に考慮した飼い方なんて非現実的だと考えている農場主の方が圧倒的に多いので、色々と反感も買っていてそう言う人達の嫌がらせかと最初は思ったんですが・・・」

案内された養鶏場で出迎えてくれた依頼主の久保田氏が我々を体育館ぐらいのサイズの建物へ案内しながら何やら背景っぽい話をしてくれた。


そこそこ臭い。

まあ、それなりの数の生き物を集めて飼うのだ。

猫のブリーダーですらあそこまで臭かったのだから、鶏だったら平飼いとやらで動物保護的に飼っていても悪臭はある程度は不可避なのだろう。


まあ、だからこそこんな山奥でやっているのだろうが。

どう考えても街中では出来ない商売だよねぇ。

と言うか、私としてはあれだけ臭い猫のブリーダー業が街中で営業出来ているだけでも驚きだったけど。

日本って悪臭禁止の規制って無いのかね?


「全然加害者らしき存在が防犯カメラに写っていないとの事ですが、サイバー攻撃的に介入しているとかの可能性はどうですか?」

碧が尋ねる。

まあ、金で雇われたハッカーならまだしも、無料や割安でサイバー攻撃に協力するのだったら型に嵌った社会に適応できなかったハッカー集団なんかだろう。そう言うのは正義の味方ぶって動物保護的な久保田さん側に立ちそうだけど。


少なくとも海外では、動物実験とかをやっている企業の方が理想主義的なハッカー集団に攻撃を受けることが多いってどっかで読んだ気がする。


「ここの防犯カメラはネットに繋がっていません。

最初はWi-Fiで機器を繋いでいたんですが鶏が死に始めて調べたら何も写っていなかったので、有線に変えてネットと繋がらない内部で完結したシステムに変えました」

不気味そうに腕を摩りながら久保田氏が答えた。


確かに不気味だよねぇ。

人間に害が及んでいないのは良いが、原因が分からない状態ではいつまでもそうとは限らないと感じるだろうし。


「被害が出る区画は決まっていますか?」

中を見回しながら尋ねる。


「基本的に毎晩何処かの1区画の中で数羽が殺されるだけで、次の夜には違う区画の事もあれば、同じ区画の事もあり、何処に被害が出るか全く想像がつかない状態です」

溜め息を吐きながら久保田氏が答える。


う〜ん、これだけ鶏がいたら全部を避難させる訳にはいかないだろうし、襲われた区画を避けても他の区画で殺されるとなると久保田氏に出来る事は限られちゃうよねぇ。


「ちなみに、ここで夜通し直に見張っていた事はありますか?」

危険な気はするが、人間が見ていても襲撃するかは重要なポイントだ。


「ええ。妻には反対されましたが数回ほど。

ただ、疲れていたのかふっと眠くなって、毎回気がついたら鶏が悲鳴をあげて逃げ惑っていて、床に死骸が転がっていると言う結果になるんです」

へぇぇ。

夜中の疲れている時間帯とは言え、人間に干渉して眠らせることが出来るんだ。


この場合、見張っている人間が多かったらどうなるのか興味があるところだが・・・まあ、下手をしたら怪我を負うかもしれない実験を提案するのは微妙だな。


「分かりました。

死骸が見つかった場所を教えて頂き、暫く調べさせて下さい」


場所を案内してもらい、久保田氏には出て行って貰って辺りを見回す。

う〜む、鶏が五月蝿い。


流石に死んだ所では微妙なのか、見せられた被害現場は何処も柵で囲って開けてあり、その分他の場所にいる鶏がちょっと狭そうだった。


「どう?

何か視える?」

碧が聞いてくる。


「う〜ん・・・そこそこ死んでいる筈なのに残っている霊が少ないね〜。

まあ、鳥ってマジで刹那的な生き物だから、滅多に霊として残らないんだよねぇ」

こう言う飼われている家畜って最初から死ぬ運命だと諦めているのか、何故か霊として残るのが少ないんだよねぇ。

外を飛んでいる雀とか燕は時折霊になって公園にいたりするんだけど。

なんでなんだろうね。

まあ、そうじゃないと屠殺所なんて動物霊だらけで凄い事になりそうだけど。


「あ、いた。

ねえ、何に殺されたか教えて?」


やっと見つけた鶏の霊に尋ねる。


久保田氏は鶏に話しかけるタイプでは無いのか、鶏の霊からは言語化されてない『四つ足の生き物に殺された』と言う思いが返された。


「四つ足の生き物だって。

少なくとも悪霊では無いみたい」


「姿は?」

「印象としてはあまり大きくは無いみたい?

でも鼠みたいに小さい訳でも無いっぽいからどうやって密室状態になった区画に入り込んだのかは不明だけど・・・この建物だったら下は区画を封鎖したって言っても上は最低でも換気用に開けていただろうから本当に相手が壁を通り抜けたかは不明だね」

区画を区切るために使われているらしき鉄版(?)を固定した仕切りを見ながら言う。

下の方は隙間がない様にデザインされているっぽいけど、元々の仕切り用の素材に板を固定しているだけだから猫とか身軽な動物だったら登れそうだ。


「しょうがないから、建物全体に昏倒結界を展開しようか。

意識不明になったのを捕まえられそうじゃない?」

碧が提案する。


「う〜ん、取り敢えず建物の内側に私が意識を削って昏倒させる結界を設置するから、碧は外側に睡眠結界を直ぐに展開できる様に準備しておくのって可能?

幻獣の血を引いているなら昏倒結界に抵抗するか、気づいて逃げる可能性があると思うんだよね。

下手をしたら碧の睡眠結界の範囲より外で逃げるかもだけど、取り敢えず試してみよう」

上手く捕まえられるまで連日で徹夜になるかもだから、準備ができたら夕方までの仮眠をとった方が良さげだな。


久保田氏が提供してくれるって言う宿泊スペース、もう使える状態だといいんだけど。



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