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重要性

「そう言えばさぁ、なんで退魔協会は碧への指名依頼を一律不可からランク制限に変えたの?」

依頼先へ向かう新幹線の中で碧にふと疑問に思って聞いた。


レンタカーでも良かったのだが、最寄りの新幹線停止駅まで迎えに来てくれると依頼主が言ってきたので今回の依頼は普通に新幹線で行くことにしたのだ。


「流石に一人前になったばっかの若い退魔師にあまり高額な依頼をさせるのもね〜って事で経験を積んでもう一ランク上がるまでは、藤山家用のノルマ案件以外は白龍さまを目的とする依頼は余程の特別な状況じゃ無い限り無しにしようって両親と退魔協会とで話し合って決めたのよ。

元々一人前になりたてのランクだと、依頼の指名はそれこそ知り合いを助けたいって場合とか以外は原則出来ない決まりだし」

ガリガリと買ったばかりのカップアイスをスプーンで削りながら碧が答える。


「そっか、そう言えば指名依頼に関するそんな話もオリエンテーション研修で聞いたかも?」

あまり関係ないと思っていたので気にしてなかった。


「まあ、それでも今のランクでも白龍さま案件には低すぎるから、私を指名したいならもう一ランク上げた依頼じゃないと受け付けない決まりになった訳。

と言うか、名目上は単に私からの希望じゃ無い限り私への指名料はランク一つ上げる分だけの価格ってだけなんだけど」

そっか、指名料が違うのか。

ランクを上げた依頼じゃないと指名できないってランク制度の意味が無くね?と思ったけど、ここの『ランク』は難易度ではなく値段の話なのね。


「でもさ、白龍さまが必要と思われる案件って元よりランクが高いだろうに、制限なんて必要なの?」

微妙に矛盾している気がするが。


「見栄や好奇心で氏神さまの愛し子を見たいって連中は何処にでもいるし、安上がりにしようと調査員に情報を全部伝えないでランクを低く誤評価させて依頼料を下げた上で私を指名依頼すれば良いと思うバカもいるからね〜。

昔は調査員に袖の下を渡して誤魔化させたのもいたけど、そいつらは1ヶ月ほどトイレから離れられなくなったせいでそう言う真似をする奴は消えたわね」

碧があっさり裏を教えてくれた。


なるほど。

「そして私もこれからは指名料の高い売れっ子仲間なのね」


ぶっと碧が吹き出した。

「売れっ子って・・・なんか怪しい店のホステスみたい」


「怪しい店・・・と言うか怪しい業界?

まあ、完全に無名な私を指名しようとするなんて普通に考えても明らかに碧経由の白龍さま狙いなんだろうし、個人的な知り合いだったらこっちから話を通せば指名料はランク相応になるんでしょ?

ランクアップして私に指名依頼が出来る様になった時点で退魔協会の方で考えるべきだった問題だよね」

それとも気付いた誰かが意図的に話題から外していたのか。


まあ、どうでも良いっちゃあ良いけど。

指名依頼だって断れるし、結局私への指名依頼もランク制限される事になったし。


この調子だったら比較的早いうちに碧のランク上げの試験がまたあるんだろうなぁ。

それとも学生だからって受ける依頼の数を制限しているせいで、退魔協会が上げたくても基準を満たさなくて上げられないのかね?


◆◆◆◆


「今回は変な依頼なのにどうもありがとうございます」

駅まで迎えにきたのは人の良さそうな中年のおばさんだった。


「いえいえ。

困った時に助けになる為の我々ですから。

そう言えば、ここら辺に伝わる妖怪とかの言い伝えを何か聞いた事があるか確認しておいて欲しいと退魔協会に言っておいたのですが、伝わっていましたか?」

碧が尋ねる。


「ああ、鎌鼬とか妖狐とかですか?

申し訳ないのですが、私たちは10年ぐらい前にこちらに越してきて養鶏場を始めたばかりなので良く知らないんですよ。

今回の退魔協会への依頼も土地を売ってくれた地主さんが手配してくれたんで、あちらに地元の言い伝えとかの話も聞いてみたんですが・・・良くは知らないみたいでした。

すいませんねぇ」

人の良さそうなおばさんが謝りながら答えた。


成る程。

地主の方がコネ持ちなのか。

しっかし。

養鶏場をやろうと他所から来るって一体どう言う流れで決めたのか、ちょっと気になる。


養鶏場で働いていた人が独立しようと思い立ったのかな?

機械化が進んで雇ってくれる所が減ったのかね?それとも、もっと鶏の扱いがいい有機栽培の家畜バージョンみたいのをやりたいと思って始める事にしたとか?

そう言う話って気軽に聞いても良いのだろうか。

後ろ向きな理由だったら聞いたら気不味そうかなぁ。


何はともあれ、折角始めた養鶏場で理由も分からない襲撃のせいで鶏を全部処分する羽目になったりしたら大変だよね。

一応疫病なんかで大量に殺処分する羽目になった時用の保険とか助成金とかはあると思いたいけど。


「まあ、言い伝えって暇な季節にどんどん大きくなっていくホラ話も多いですからね。

参考程度だったので構いませんよ」

地主じゃあ人間を殺さない程度のダメージが少ない妖怪系の話なんて聞いていない可能性も高いし。


「もっと地元の図書館にでも調べに行ければ良かったんですが、死んでいない鶏の隔離や確認で忙しくて。本当にすいません」

おばさんが再度謝ってきた。


確かに疲れてるっぽくて顔色もイマイチだもんなぁ。

寝る暇もなく足掻いているところなんだろう。


普通の悪霊と違って、生計が掛かっているとなると責任重大だね。

まあ、普通の案件は命が掛かっている場合もあるからあっちだって重要ではあるんだけど。



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