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交渉

「藤山と一緒に資料を読み込みましたが、結局調査部の方でも出現場所も出現条件も確定は出来なかったんですよね?

見張っていると何も現れず、でも3日連続でちょっと注意が逸れた瞬間に鶏が死んでいた、若しくは別の場所の鶏が死んでいた、と調査報告書には書いてありました。

密室になっている筈の場所での殺害であり、『何か』の残滓を微かに感じられるので超常の存在による攻撃の可能性が高いとの事ですが・・・退魔師でなければ解決出来ない問題だからと言って、退魔師ならば解決できるとも限らない事はご理解頂けていますよね?

我々でも解決出来なかった場合にペナルティが科されるならば、依頼は辞退させて貰いたいです」


碧と資料を読んで、相手は物質をすり抜けられるタイプの幻獣の血を持つ妖怪モドキか、珍しい動物系の悪霊かの可能性が高いと言う結論になった。


悪霊ならば実体は無いのだから壁や鉄網やケージをすり抜けるのは当然な事だが、人間の悪霊だと基本的に人間と同程度かそれ以下ぐらいの敏捷さでしか動かない事が殆どだし、鶏だけを殺すと言うのはあまり無い。


幻獣系だとすると・・・どの程度元の幻獣の特徴や能力が残っているかにもよるが、動物と同じで基本的に人間よりは動きが早い。


動物の悪霊なんて死霊使いに酷使されて消滅寸前のしか視た事がないのでイマイチどう動くのかは分からない。


まあ、白龍さまのヘルプがあれば不可能はほぼ無いんだけどね〜。

依頼のランク、あと『私』への指名依頼であることを考えると、白龍さまが出張らなきゃ解決出来ない問題だったら解決出来ませんでしたって返そうと思っている。


と言う事で詳しい条件を確定させる為に碧と一緒に退魔協会の依頼手配の部署の主任さんか課長さんか知らないが、そこそこ偉い人に電話してるところ。


『快適生活ラボさんが解決出来ない問題があるとは思えませんが・・・』

電話の向こうでおっさんがペナルティに有無に関して言葉を濁らす。


「でも、この依頼って『快適生活ラボ』ではなく、『長谷川凛()』個人への指名依頼ですよね?

要は藤山への指名依頼に出来る程依頼のランクを上げる気は無いと言う事なのですから、白龍さまの協力が無ければ解決出来ないような難易度だった場合は依頼の難易度設定が間違っていると言う事でしょう?

そうなった場合は普通に依頼達成は無理でしたと諦めるべきだと思いますが。

でなければ、藤山への指名依頼のランクを制限する意味がないですよね?」

経済効果的な論理で言ったら、昇級したとは言え現在の私や碧のランク報酬で白龍さまのご登場をお願いできるのは間違っている。


だから退魔協会のお偉いさんも碧への指名依頼にランク制限を科したのだろう。

利益最大化が狙いだろうけど。

制限の抜け道を見つけちゃって利用しているのが下っ端なのか、この電話の相手なのかは興味深いポイントではある。


「私・・・と言うか白龍さまの参加がなければ解決出来ないと見做されているならば、あの報酬はおかしいでしょう。

別に欲張るつもりはないので我々だけの力で解決できるならばあの報酬で構いませんが、長谷川への依頼でもいざとなれば白龍さまが助けてくださると言うのが前提条件として仕事を振られる様になるなら、私への指名依頼にランク制限を科す意味がないですよね?」

碧が付け加える。


まあ、依頼主が個別依頼出来ないだけで、退魔協会側の職員に袖の下を渡せば碧を割り振って貰える可能性はそれなりにあると思うけどね〜。

態々こんな抜け道を探すなんて、意外と退魔師への仕事の割り振りって協会内では透明性が高く公正にやってるのかね?

以前の温泉事件があったからかなりいい加減だと思っていたんだが。


『・・・そうですね、藤山さんと快適生活ラボさんだけでなく、長谷川さんへの指名依頼もランク制限するようにするよう、上へ提案しておきます。

今回の依頼に関しては、一度失敗にして再度藤山さんに行って貰うのでは退魔協会への信頼が損なわれてしまうので、白龍さまの助けが無ければ解決出来なかった場合には追加報酬と言う形でいいでしょうか?』

向こうが暫し考えた後に、諦めた様に深く息を吐いて応じてきた。


「それでも良いですが・・・我々が報酬を上げる為に嘘をつくとは思わないのですか?」

確認する為に退魔協会の職員が付いてくるのは嫌だぞ。


『長谷川さんは金の為に白龍さまに関する事項で嘘を付く勇気があるんですか?』

軽く笑いながらおっさんが電話の向こうから逆に聞いてきた。


「成る程。

確かに無謀ですね」

白龍さまはそれ程気にしないと思うけど、カルマには悪影響がありそうだから元々嘘をつく気はなかったが。

退魔協会相手に『カルマが〜』なんて言っても信じて貰えないだろうと思っていたが、あっちは色々脅されているせいか白龍さまに関して嘘を付くなんて誰もしないと思い込んでる様だった。


『では、修正した依頼書と報酬額を依頼主に確認してから送りますので、よろしくお願いしますね』

あっさり話が終わった。


「結局、誰が何をしたくて今回の指名依頼の利用を考えついたのかね?

退魔協会の依頼手配課に今からクルミを飛ばして盗み聞きしない?」

碧が笑いながら提案した。


「クルミじゃあ普通の式神用の侵入防止結界に引っかかると思うよ。

こうなるんだったらあそこの建物に住んでる鼠でも使い魔にしとくべきだったかも?」

まあ、そこまで継続的な興味は無いが。


鼠は世代交代が早い。

生体の鼠を使い魔にする場合はしょっちゅう子孫と契約更新していかなきゃならなくって面倒なのだ。


「退魔協会で猫でも飼ってくれればいいのにね〜」


「流石に私がテイマーっぽい能力があると分かってて猫を飼う事は、無いでしょ」

そんな図太さがあるならある意味尊敬するけど。



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