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コーチ役

「おかえり〜。

どうだった?」

適当に退魔協会の職員を誤魔化して帰ってきたら、ソファで源之助と遊んでいた碧が猫じゃらしを動かすついでに後ろに背を伸ばして声を掛けてきた。


「依頼主は昇級テストの結果報告から私がテイマーっぽい能力があると知って、自分んちの子猫の躾を手伝って欲しいって話だった。

禁止命令を精神に焼き付けて良いのかって聞いたらダメだったから、ならばやって欲しくない事は出来ないように人間側で対処するしかないっしょって言っておいた」


「へぇ、意外とまともな依頼だったね。

残念ながら実行は難しそうだけど」

碧が苦笑しながら言った。

うちでも色々苦労したからね~。

認識阻害の結界でやっと食卓へのジャンプを防げるようになるまで、色々と試行錯誤したものだった・・・。


「子猫を使い魔契約とか禁止事項の焼き付けとか無しで躾けられたら、魔術界のノーベル賞ものでしょ。

と言うか、子猫にできるなら、人間の教育とか洗脳にも使えそうで怖いね」

『充電ケーブルを噛んじゃダメ』と言う禁止事項ならまだしも、都合の悪い行動を全般的に縛り付けるのは難しいからなぁ。


やろうと思ったら、魅了に近い感じで自発的に命令者の為に全ての行動を律するようにでもするかな?

でも、意外と人間の行動って他者が想定しないところで悪気がなくてもトバッチリがいくからなぁ。

結局前世でも、強力な魅了が上手くいかなかった結果として黒魔術師は色々と制約魔術を使った禁止事項で雁字搦めにされたんだから。


まあ、どう言う風にコントロールされているか分かれば、『誰それのためになる』って自分に嘘をつけば意外と魅了系の制約はすり抜けられるからねぇ。

まだ単純に『自殺禁止』とか『命令なしの魔力使用は己か王族の命に関わる場合以外は禁止』って命じられる方が抜け道は少ない。

それでも頑張れば、私みたいに自殺禁止の命令を『古代魔法陣の調査の為に必要な行動の一つ』と整合化する事ですり抜けられたけど。

要は魔術による制約って、対象者が諦めないで反抗し続けるとそのうち何らかの手段で対抗出来ちゃうんだよねぇ。


「魔術界にノーベル賞は無いけど、確かに〜」

碧が頷いた。


「そんでもって依頼主が出て行って直ぐに協会の職員が入ってきて、テイマーとして何が出来るか聞き出そうとしてさぁ。

山岳地帯で誰かが遭難した際の人命救助的な捜索程度なら猛禽類が近くにいたら出来るかも?って言ったんだけど、そちらは全く興味なし。

代わりに寝たきり老人のペットと意思疎通して異常がないか気を配るのに出来るのでは?なんて提案された」


碧が顔を顰めた。

「寝たきり老人がペットを飼える訳無いじゃん。

世の役に立つっぽい名称で、人の家のペットを使って情報収集をさせようって事?」


やはり碧もそう思ったか。

「そんな感じだよねぇ。

ちなみに、使い魔の侵入を防ぐ結界みたいなのってあるの?

ペットじゃなくても普通に式神の使い魔でも十分な気がするけど。

確かに式神や死霊を使った使い魔はかなり露骨に魔力が露な状態なのに対して、生きている動物と契約を結んで意識を繋ぐタイプの使い魔だったら魔力探知には引っ掛かりにくいだろうけど」


「あぁ〜。だから職員が声を掛けてきたのかな?

見つかりにくいなら、生きているネズミを使い魔にしたら退魔協会の情報も覗き見し放題?」

笑いながら碧が提案する。


「生きたネズミじゃあ聞いた事を殆ど覚えておいてくれないだろうから、ずっとこっちが感覚を共有してなきゃいけないから大変すぎるよ。

そこまで興味はないかな。

第一、それなりに防諜用の結界とかがあるんじゃないの?」


「京都なんかは色んな防御結界やら罠やら探知結界やらが入り組んじゃってて、今じゃあ普通に式神を道沿いに飛ばすのでも大変だって話だから、当然退魔協会にも式神に対する侵入禁止の結界があるだろうね。

ウチの一族って使い魔契約に向いた適性持ちが滅多に生まれないし、式神を使うのもあまり得意じゃ無いから使い魔を利用する習慣が無くてあまり詳しくはないけど」

碧が応じた。


「覗き見しに行かないのは良くても、覗き見されるのはなんとかした方がよくない?」

現実の話として碧の実家と退魔協会とはそれ程仲が良く無いんだし。


「大丈夫!

白龍さまが昔怒って雷を落として以来、実家周辺に使い魔が入ると落雷を受けたみたいにあっという間に炭化するから!」

碧が胸を張って教えてくれた。


「いやいや、クルミが近づいて炭化されちゃ困るんだけど!?」


碧が微妙な顔をした。

「あ〜、多分大丈夫。

既に一回行ってるよね?」

碧が微妙に自信無さげに言った。


『当然じゃ。

ちゃんと結界内にクルミが入っても問題ないよう、認証させてある』

ちょっとむっとした感じで白龍さまが口を挟んだ。


「助かります!

ちなみに、使い魔の使い方とか動物との精神波動の合わせ方は白龍さまに教わった事にしますので、宜しくお願いします」


下手に碧の一族の一員から教わったなんて言うと、『正確には誰だよ』と突っ込まれかねないので、ここは白龍さまと漠然とした事を取り決めるのが正解だろう。



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