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現代版迷いの森?

「最近、ここらの先から住民以外だと何故か道に迷う様になったんです」

空港から車で30分ほど運転されて降りたのは、低い丘の前にあるちょっとした駐車スペースだった。

横の方へ伸びる細い轍もあるので、もしかしたら秋ならここに車を停めて紅葉を楽しみにトレッキングにでも行く場所なのかもしれない。

車も入れそうではあるから、辺鄙な農場とか温泉がある可能性もゼロでは無いが。


今日は隣の牧場っぽい区画にヘリコプターが停まっていた。

牧場をヘリポート代わりに使ってて、牛とか羊が迷い込んで事故ったりしないのかね?

まあ、考えてみたら牛ですらヘリコプターのブレードよりも体高が低いから、穴にでも嵌って動けなくなっているところに上から着陸しちゃうなんてことでも起きない限り、大丈夫なのかな?


「迷うって・・・舗装してある道を辿れば良いのでは?」

メインな道はアスファルト舗装してある。

間違って脇道に逸れることもないだろうに。


「それが何故か、逸れるんですよ。

ヘリコプターで上から見守って携帯で話し続けている状態でも、例えば『道なりに真っ直ぐ』って言っているのに左にハンドルを切ってしまうとか、その逆だとかでまともに進めません。

この先にある村の住民だったら普通にたどり着けるんですが、余所者を乗せていると迷います」

一緒に来ていた依頼主である自治体のおっさんが教えてくれた。


「余所者って・・・外から来た嫁や婿は?」


「この異変が起きてから新規で入ってきた住民は居ないので分からないです」


「里帰り的な独立して出て行った元住民とかが来た場合は?」

碧が尋ねる。


「余所者扱いですね」


「住民登録が村のままになっている人でもダメですか?」

まあ、怪奇現象を起こしている存在が住民台帳を調べているとは思わないが、例えば学生とかだったら住民登録を動かしていない場合が多く、そう言う時って気分的に本人としては故郷が本拠地のままである。


少なくとも、学生寮にいた頃の私はそうだった。

碧とルームシェアし始め、源之助を飼った頃に根を張った実感が生じたので住民票を動かしたが、それまでは大学在中の住処は『一時的な滞在場所』と言う印象だった。


「そこは・・・分かりませんね。

学期が始まったばかりなのでまだ帰省する学生も居ないですし」


まあ、確かに。

仕事の依頼だったら連休で来ることはあっても、新学期の始まったばかりの子供に帰省する暇は無いだろう。


「歩いた場合はどうなります?」

碧が尋ねる。


「現実的な話として車で20分強の距離なので歩くと言う選択肢はありませんが・・・車の場合と似たり寄ったりの地点で道に迷いますね」

依頼主が応じた。


まあ、外とワンクッションある車だったら惑わされないのに、歩いていると惑わされるって言うケースの方が多いだろうしね。

「ヘリコプターだったら問題なく村に着けるので、先に荷物を運び込みますか?

勿論もう少し調べてからでも良いですし。

予約は取ってあるので遅くなっても大丈夫ですよ」

ヘリコプターの方を指しながら依頼主が聞いてきた。


まあ、余所者が辿り着けないなら宿泊施設はがら空きだろうね。

温泉宿の希望を伝えてあるので夜はしっかり楽しみたいが、まずは仕事に取り掛かる方が良いだろう。

試験官のおっさんも何も言わずに見ているし。


「どうする?」

碧が聞いてきた。


「私は誰かに運転してもらって道路を進んで、迷う時に何か感じられるか確認ってところかな?

碧はヘリコプターに乗って上から何か視えるか確認しつつ、車が変な方向に向かい始めたら教えてくれる?」

人避けの結界とか迷いの森みたいな仕組みや術は基本的に精神に働き掛けるので黒魔術系だ。

まあ、普通の魔術師が今時そんな事をするとは思えないので悪霊とかによる何かなんだろうけど。


前世では盗賊が隠れ家を隠すためとか、反対に村の住民が盗賊のよる襲撃を防ぐ為に人避けの仕組みを魔術師に設置を依頼すると言ったことは地方の方では良くあると聞いた。


実際にそう言う依頼を前世の研修時に受けた事もあるし、碧よりも私が下で体験する方が良いだろう。


しっかし。

こんな変則的な案件なんて、一人前になったばかりの若手退魔師にはちょっとハードルが高く無い??

黒魔術の適性持ちだって疑われているのかな。

隠しようが無いんだから、頑張って暴こうとしてくれなくても聴かれれば答えるんだけどねぇ。


それとも、普通の元素系退魔師だと自然破壊無しに解決するのが難しいから、黒魔術師系の私と白龍さまのヘルプが期待できる碧を『昇級テスト』と言う名目で安上がりに呼び寄せたのかなぁ・・・。



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