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取り敢えずの状況説明

「あれから伝手を頼って退魔協会に依頼すると共に、家の慰霊碑に関して色々調べたんです」

まずはお茶をどうぞと家の中に誘われ、とても立派な応接間でお茶を貰いながら山崎さんに話を聞いた。


「ちなみに慰霊碑が壊されたのはいつだったんですか?」

碧が口を挟む。

離れを建てる為の作業中って話だが、どこにも重機は見当たらない。

かと言って、離れも無い。

瘴気が溜まって体調を崩すのにだって時間が掛かるし。


と言うか、思っていたよりも家の中は瘴気が溜まっていない。

庭が凄いのかね?

庭みたいに特に行く必要も無い場所だけが瘴気に侵されている場合、何とは無しに居心地が悪くてそこを避けることが多いんだけどねぇ。


「慰霊碑は1年ほど前に、兄が結婚する事になって工事を始めた際に壊されたと聞いています。

私はその時実家に住んでいなかったので詳しい話は知らないのですが、林の部分を更地にして離れを建てようと重機を入れた際にうっかり大きな岩を割ってしまい、その際に重機が倒れて運転手の方が大怪我をして色々バタバタすることになって・・・結局、そちらの見舞いや安全対策の目処が付く前に交通事故で兄が寝たきりになってしまったせいで離れの工事は中止になったんです」

溜め息を吐きながら山崎さんが教えてくれた。


「その時点で退魔師を頼ろうと言う話は無かったのですか?」

慰霊碑を壊したら重機が倒れ、数日内に息子が交通事故で寝たきりになんてかなり重度な祟りじゃん。

さっさと祓わなきゃ危険だろう。

とは言え、家の中からではそこまで危険な祟りを感じないけど。


「その時点では割った岩が慰霊碑だと誰も知らなかったんです」

家政婦さんっぽい女性が淹れてくれたお茶を私たちに勧めながら山崎さんが答える。


まあ、慰霊碑の存在が忘れ去られていたって話だよね。

だとしたら林の中の岩が慰霊碑で、それを壊したから祟りが起きたとはすぐには思わないか。

普通、庭に慰霊碑があるのに家の人間がそれを知らないなんて有り得ないしね。


なんだって忘れたんだ?!と問いただしたいけど。


「兄が交通事故に遭い、寝たきりになって治療や見舞いや会社の事などで忙しくしていた父も心労が祟ったのか半年後に心臓麻痺で倒れて亡くなってしまい、ショックで母まで体調を崩し・・・その時点で私が実家に帰る事になったんです。

それから必死になって会社の引き継ぎやら家の問題やらに対処していたら気づいたらコムギちゃんが病気になっていて、獣医さんや大学病院や色々回って診てもらっても治らなくって・・・藁にも縋る思いで先日の祈祷に行かせて貰いました。

そこで瘴気なんて話をされて、ウチになにか呪われるような理由があるかしらと執事に相談した際にもしかしたら林の岩が怪しいかもと見に行ったら、どうも慰霊碑っぽい事がわかったんです」


実家に住んで居なかったんだったら割れた岩とやらも直ぐに調べに行かなかったのも納得・・・かな?

しっかし、兄とやらの交通事故と父親の心臓麻痺が祟りだとしたら、当時山崎さんが実家に住んで居なかったからと言ってもいまだに無事なのはちょっと意外だね。

男性だけを恨む悪霊なのかね?


「家に伝わる古文書や祖父から聞いた話や昔からの使用人の話を色々と集めた結果、どうもウチって庄屋だった江戸時代ぐらいに何やら押し込み強盗に襲われて長男夫妻と息子が惨殺されて、隠れていた娘を偶々仕入れで遠出していた弟が娶って家を継いだそうなんです。その際に殺された親族の霊を慰める為に慰霊碑を建てたと古文書にありました。

・・・そんな昔の先祖の霊が、今になって私の家族やコムギに害を為すんでしょうか?」

微妙に納得いかなそうな顔で山崎さんが聞いてきた。


確かに江戸時代に殺された先祖の兄の慰霊碑を壊しただけで家族が害されまくるなんて信じ難いだろう。

それこそ江戸時代から考えるなら非業の死を遂げた人なんて無数にいるだろうから、その子孫が一々岩を割った程度で殺されていたら日本の人口が死に絶えていそうだ。


だけど。

古文書って要は生き残って庄屋を継いだ弟が残した文書でしょ?

勝てば官軍じゃ無いけど、生き残った側に都合がいい事しか書いてない可能性は高い。

そこまで殺意が高い祟り霊が出てきたって事は、その先祖の弟ってお兄さん一家を殺したんじゃないの?

娘を娶ったから女性である山崎さんは祟られてないとか?

遺伝子的には山崎もお兄さんも同じだけ殺されたお兄さんの血を引いている筈だけどさ。


「う〜ん、取り敢えず退魔協会の調査では慰霊碑に封じられていた霊が悪霊化して瘴気を発していると言うのは確実なんですが、過去にその悪霊が誰を祟ったかは今から調べてもわからないので、ご家族の不幸が祟りだったのか不幸な偶然だったのかは不明ですね。

少なくとも、その悪霊と庭の瘴気を祓えばこの家の霊障被害は解消すると思います」

すっと飲み終わった紅茶のカップをおろしながら碧が言った。


そうだよね。

今更悪霊が何で祟っているのか分かったところでどうにか出来る訳じゃあないから、さっさと除霊して瘴気を祓って終わらせよう。




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