表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
354/1363

歴史的考察?

「うわ〜、豪邸・・・」

迎えに寄越された車が一時停止した。どうやら正面に見える門が開くのを待っているようだ。

こんな立派な門があるなんてどこの国の屋敷だよと思いつつ周りを見回して、思わず呟きが漏れた。


なんか、退魔協会の依頼って大企業か自治体以外だと、大金持ちか由緒ある旧家(あの温泉宿も多分そうだよね?)が多い気がする。


退魔師を頼む依頼って高額とは言っても大抵はヨーロッパへ一週間ツアー旅行に行く程度の値段なんだから、一般市民でも払えなくは無い筈なんだが。


もしかして、庶民って門前払いされてるの??


「慰霊碑の存在を忘れる程大きな屋敷だったらこうなるよね〜」

碧が肩を竦めつつ応じる。


確かに。

普通の庶民だったら比較的新しい中古の戸建てか、建て付けの新築戸建てか、マンションに住む。

そうなると慰霊碑なんぞ絶対に縁はない。


中古でうっかり悪霊付きの事故案件を買う可能性もゼロではないが・・・そう言う場合は諦めて捨て値で売るんかね?


「なんか、青木氏経由以外で普通の庶民が住む様な家の悪霊祓い関連の依頼を受けた事がないんだけど、もしかして退魔協会って依頼を受ける前に資産額で足切りとかしてるの?」

そうそう継続的に退魔師の依頼がある訳でもないと思うんで、一回ごとの依頼費さえ払えれば良いと思うのだが。


「単に普通の庶民だとそこまで強力な悪霊に憑かれちゃったら原因に思い至る前に退魔協会へ依頼する経済的余裕を無くしちゃう事が多いせいで、情報が断絶しちゃったんじゃないかな?

退魔師の存在を迷信だって馬鹿にする風潮を蔓延させる為に戦後にGHQとかキリスト教の布教団体とかがそこそこの金を出して世論操作したらしいから、退魔師とか悪霊の存在を古臭い迷信を利用した詐欺だって笑い飛ばすバイアスが掛かって情報が伝わりにくいみたいだし」

碧が想定外な事を教えてくれた。


「悪霊って実際に存在するのに、なんだって存在を否定させようとしたん??」


碧が肩を竦めた。

「祖父曰く、退魔師を迷信を悪用する詐欺師って事にして、実際の悪霊は教会のエクソシストじゃないと祓えない状態にする事で日本全体をキリスト教化しようとしたんじゃ無いかって。

でも流石に何も悪い事をしていない退魔業界全体を違法化は出来なかったから、結局変に情報が無くなっただけでキリスト教自体はイマイチ広まらなかったらしいね」


なんじゃそりゃ。

確かに天皇が現人神だって言う宗教は根絶したかっただろうけど、それと退魔師の存在は関係ないだろうに。

キリスト教を広めるのに邪魔だったんかね?

一気に人口1億人(戦後はまだそんなに居なかったか?)の国の悪霊を全部祓えるレベルの数のエクソシストを日本に送り込めるほど沢山術師がキリスト教会に居たとも思えないけど。

「無茶苦茶だね」


「ある種の社会実験だったんじゃない?

東洋の黄色いサルが住む国なんて、今までの社会構造を壊されて滅茶苦茶になっても構わなかったんでしょ。

元々明治維新以降は欧米を模倣しようと伝統的な技能を見下す新興金持ちも多かったみたいだし」


なるほど。

元々退魔師とかの伝統的な職業を古い迷信だとして切り捨てて、新しい欧米のやり方を導入しようとする人はそれなりに居たんだね。


結局キリスト教がイマイチ広がらなかったせいで中途半端に悪霊への対処方法が失われてしまっただけの様だけど。


そう考えると、なんだって日本ではキリスト教があまり根付かなかったんだろ?

南米とかはガッツリ世界有数のキリスト教社会になったみたいなのに。

日本も実質アメリカに占領されたんだからもっとあっさり洗脳されそうなもんだけど。


戦国時代なんて案外と広くキリスト教が九州とかでは浸透したらしいのに。

それとも、科学とかまだ発達しない無知な時代じゃないと宗教って簡単には広がらないのかな?

まあ、宗教ってその組織の指導的地位にいる人間を自分より上だと受け入れて助言に従ったりする訳だから、無条件に優れているって思える何かが無いとあっさりとは改宗しないよね。


時間を掛けるとカルト系宗教なんかは上手く洗脳出来ちゃうみたいだけど。


そんな事を考えている間に、立派な門が開き終わり、車が粛々と中へ進んで車留めで停まった。

玄関の前で待っていた執事っぽい人がすっと車に近づいて扉を開く。

おお〜。

ロマンスグレーっぽい執事だ!

こないだの武田家の執事役はちょっとヨボヨボだったが、こちらは良い感じに燻し銀だ。


「いらっしゃいませ。

急なお願い事に応じて頂き、有難うございます」


「どういたしまして」

碧が軽く頷きながら挨拶を返す。


「あら。

退魔師だったんですか」

山崎さんが驚いた様に執事さんの後ろから首を出してきた。


なんかこう、執事さんに比べると庶民っぽいね、この人。

全然お嬢様っぽく無かったから、こんな豪邸の住民だとは思わなかったよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ