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事故物件?

「それじゃ、悪いけどお先!」

「お疲れ〜」

瘴気塗れな男子生徒の帰宅ルートを確認する為に、ちょっと早めに勧誘活動から抜けさせて貰って直帰した。


出来ればターゲットも直帰してくれて問題の寮の所在地が一発ではっきりすれば有難いんだが・・・多分遊びに行くんだろうなぁ。

だが、遊びに行くと言う確証も無かったので帰宅時にクルミの視野を共有して移動ルートを確認できる様に帰宅時間までに家に着いていたかったのだ。


電車で座っている時ならまだ良いが、自分が歩いている時にクルミの視野を共有すると車酔いに近い感じで気持ちが悪くなるんだよねぇ。

私はゲームの3D画像ですら頭がくらくらしてくるのだ。

これが動く二つの視点をフルに見ながらなんて事になると直ぐに気持ちが悪くなる。


「お帰り〜。

瘴気の元は分かった?」

帰宅したら源之助と遊んでいた碧が声を掛けてきた。

すっかりサークルは切って捨てて源之助に時間を捧げてるねぇ。


授業には出ているんだけど、この分じゃあ大学を卒業したら退魔協会の依頼がある時以外は引きこもっちゃうんじゃない?

まあ、ペット専用祈祷とかもしてるけど。


「まだだけど、もしかしたら住んでる学生寮が原因なのかと思ってクルミに帰宅する際に追跡する様言いつけといた」

鞄を放り出し、手を洗いながらクルミの視野を確認する。


歩いているようだがまだ大学の校内だ。

何か怠いと言っていたし、このまま帰ってくれないかなぁ〜。


「お茶いる?」

台所に行った碧が聞いてきた。


「お願い〜!」

今日は肌寒いので外で勧誘している時の為にちょっと厚着をしていたから、帰り道でかなり汗をかいて喉が渇いた。

まだ校内にいる様だし、ついでに着替えてこよう。

シャツが汗ばんでいて気持ちが悪い。


ターゲットはやがて何人かで群れて大学を出たと思ったら、駅の向こう側のカラオケに入っていった。

マジかぁ。

カラオケって下手をすると何時間でも粘れるからなぁ。

音が聞こえないのは幸いだが、見ている方は退屈極みない。


『そこから出たら教えて』

『了解にゃ!』

クルミにお願いして、リビングに戻る。


「ありがと。

寮って言っていたから大学がスポンサーしている奴だよね、多分。

そう言うところで瘴気が湧くとしたら、何が原因だろ?」

お茶の入ったマグを受け取りながらちょっと首を傾げて碧に相談する。


「う〜ん、誰かが殺されたか、呪詛の研究でもしているとか?」

碧が首を捻りながら提案する。


「瘴気が出るほどの呪詛の研究なんて、素人が出来るんかね?

ちゃんと習った人間だったら寮でなんてしないと思うけど」

と言うか、習った人間だったら瘴気が視えるだろうから周囲の人間に染み付くほど瘴気が湧いた時点でなんとか手を打つだろう。


瘴気が視えない人間に呪詛はハードルが高いと思うが。

まあ、癒しと違って害する方向の力って死とか苦痛とか血とかをたっぷり使えば才能が無くてもそれなりに出来ちゃう事があるから、ゼロとは言わないけど。


でも。

「学生寮で研究する呪詛って・・・」

何とも締まらない。

それに、学生寮って掃除の人とかが問答無用で入ってくるから動物の死体とかの持ち込みは難しいと思うんだよなぁ。

それとも女性用と男性用で寮の掃除レベルが違うとか?


流石にそれはないよね??


どうやったら寮で呪詛の研究を邪魔されずに出来るか碧とダベっていたら、クルミから念話がきた。

『カラオケから出たにゃ』

猫霊のクルミも昔はカラオケとか飲み屋とか駅とか、色々知らない物(語彙も)が多かったのだが、私と行動を共にする様になって色々と覚えた。

とは言え、相変わらず駅名や路線図は読めないんで、尾行した人間の行き先は私が視野を共有しないと分からないんだけどね。


「お、カラオケを出たみたい」

「比較的早く終わって良かったね」

「本当。

まあ、明日も授業があるんだし、あまり夜更かしは出来ないよね」

元々怠いんだろうし。


瘴気だって重度に蓄積したら短期間でも体調を崩す。

まだその前段階ぐらいの様だが、体力は落ちているだろう。


ターゲットとクルミは駅に向かい、2駅ほど電車に乗ってからちょっと静かな住宅街っぽい駅で降りた。


へぇ、あの駅ってこんな感じだったんだ。

それなりに高級住宅地っぽいイメージだったからもっとオシャレな店が沢山あると思っていたが、なんか街の商店街っぽいしょぼい店が数軒あるだけだった。

駅の出口によって違うのかな?

流石に都心でここまで寂れた駅はないよね?


そんな事を考えていたら裏通りっぽい細い道に入って戸建てが続く地区を歩き続け、坂を降りて上がった先の古いアパートっぽい建物にたどり着いた。


「おお〜。

瘴気が染み付いてるわぁ。

かなりボロいんだけど、うちの大学の学生寮であんなにボロいのがあるなんて、意外〜」


「そんなに酷いの?」

碧が聞いてくる。


「超絶にボロい。

うちの大学の学生が文句を言わないのが信じられないレベルだね」


「・・・あ〜それって近くに建て替え中の建物がない?

確か、男性寮の一つが誰かの不始末で排水管事故か何かが起きたんだけど、修理が難しいから老朽化していたしで急遽建て替えする事になって、臨時で近くのアパートを大学側が代替用に無料で提供する事になったって話を聞いた気がする」

碧が教えてくれた。


排水管事故ってなんじゃいな?

でもまあ、突発的に建て替えが必要になって、近所のボロいアパートを借り上げたって事かね?

事故物件だったから空きが多かったんじゃない、このアパート?


「ちょっと明日にでも見に行ってくるわ」


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