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異常の方向がちょっと違った

水野の従兄弟と、大学時代の知人、及び本人的にはサークル経由で挨拶する程度しか知らなかったのに何故か殺されたと言う女性からの聞き取りが終わった。


さて。

あっさり成仏したと言う被害者に関しては、死体がある場所に行けば召喚して詳細を聞くのも可能だが、折角安らかに眠っている魂を叩き起こして理不尽に殺された記憶に関して聞くのはちょっと可哀想だ。

出来れば加害者の記憶から読み取るだけでなんとか済ませてしまいたい。


『白龍さま、誰かが魔力視とかでこちらを観察していたら教えて頂けますか?』

白龍さまに念話でお願いする。


加害者に憑いていた死霊から話を聞いた事にしておけば、水野の記憶から読み取ったとはバレないだろう。

とは言え、記憶を読んでいる場面を他の術者に視られたら怪しまれるかも知れないので出来れば避けたい。


そんな暇な人間はいないとは思うけど、何事も用心するに越した事はないからね。


『うむ。

誰もお主らに注意を払っておらぬ。

状況が変わらぬ様にしておこう』

おおう。

流石氏神さま。

視られているのを教えてくれるのではなく、視る気を削いでくれるらしい。

人間ではそれはかなり大掛かりな前準備なしには難しいんだよねぇ。


と言う事で、そっと水野の肩に触れて記憶を読み始める。

直近の記憶は篠原氏を殺すか否かの調査だった。

・・・若い研究者を長期的に安定して研究できる様なポジションをゲットできると誘って、それに乗ったら裏切りだって殺そうとするなんてちょっと酷い。

今時のアカデミアの世界では博士号持ちが10年研究室に居ても雇い止めでクビになる話が幾らでもあるらしいのだ。

安定した正規職につけるなら、出ていかれる教授ですら喜んで祝福するのにそれを餌にして殺すなんて現実を見ていない気狂いだね。


本人的にも自分が長谷部教授の周りの人間を殺しているのが単なる歪んだ嫉妬であるのは分かっているのか、やたらと言い訳がましい相手を責める言葉が渦巻いていて、鬱陶しい。


篠原氏はかなりズボラなタイプらしく、中々新しいポジションの話に食い付かなかったお陰でまだ殺されずに済んでいるようだ。

ズボラなのが研究者として優れた資質なのかは微妙な気がするけど。


その前の重要な記憶は渡部さんの殺人だった。

ずっと遡って丁寧に見落としがない様に記憶を読んでいくが、あの耕作放棄地を入手してからの殺人情報に漏れは無かった。


本家の敷地の4人に関しては成仏した被害者の情報も出てきた。

どうやらこれだけ人を殺しまくっている癖に、被害者の失踪に関してあまり注意が集まらない様にタイミングを見計らって殺せる相手を厳密に選んでいるらしい。他にも殺したいほど目障りに思われた知人は何人かいたのだが、家族と同居していたり婚約者がいたりで無事に済んだ人間がそこそこいた。


旅行先で会った人間でも殺したいと感じた事が何度もあった様だが、死体が発見されない埋葬場所の情報が無かった事と、被害者の人間関係を調べる時間が足りなかった事で実際に殺した事は一度も無かった。

相手のカクテルに下剤や睡眠薬を垂らす程度の嫌がらせは何度かやっているが。

単に相手の笑顔や声が気に入らないからってバーでデートレイプ・ドラッグを女性に盛るなんて何を考えているんだか。


記憶を読みこんでみると、どうやら水野は常に人を殺したい衝動に満ち溢れている人間の様だった。

それを満足させる為に、自分が選んで執着した人物を口実にしているだけ。

失踪しても注意を引かないと言う条件と、少しでも執着した人物にマイナスになるとこじ付けられる様な行動が合ったら、それで殺人を正当化して殺しを楽しんでいる。

とは言え、本人的には自分が精神異常者であるとは認めていないので口実となる執着相手にはそれなりに尽くしている。

もしかしたらいつか執着相手を殺す時が、今ある自制が壊れる時かも?

そうなると比較的早く足が出るだろうが、殺される人数は一気に増えそうだ。


しっかし。

ヤバすぎでしょ、こいつ。

子供の頃に虐待された記憶がある訳でもなく、家族や恋人と死に別れたとか裏切られたとか言う悲劇があった訳でもない。

単に人殺しが好きな精神異常者として生まれただけの女。

それなりに社交的で普通に見える様に行動を繕っているから、周囲の人に『まさかあの人が?!』と驚かれるタイプだろう。


とは言え、家族とは大学に入った時期から疎遠だし向こうも連絡を取ろうとしていないので、彼女の異常性を何らかの形で察知していたのかも?


マジで他者に対する共感がゼロな精神異常者だが、それでも自己防衛のために殺しの衝動を完璧にコントロール出来ているのだから、ついでに殺す事自体も我慢すれば良いのにと思う。


下手をしたら上手く周囲を騙して仮出所で早く出てくる可能性もありそうだ。殺人しようと考えたら下痢になる様にでも術を仕込んでおくか。


まだ比較的若いから寿命が尽きるまでは術が保たないだろうけど、その頃には殺人を出来るだけの体力が無くなっていると期待したい。


きっと刑務所の中でも周囲の人間を殺そうと殺意を持ちまくって過ごすだろうから、やたらと下痢の多い収容者になりそうだ。




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