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死体を探そう

むさい研究員である篠原氏のマンションにはオートロックがあったが、幸いにもちょうど私が辿り着いたタイミングで別の住民が帰ってきた所だったのですんなり入れた。


ちなみにかなり微妙な部屋の中の見た目に反し、建物はそれなりにお洒落なマンションだった。

研究員ってあまり給料が良くないって新聞の記事には書いてあった気がしたけど、思っていたよりは良いのかな?

それとも篠原氏が有能で高い給料を貰えているのか。


取り敢えずクルミが確認していた階層までエレベーターで上がり、降りたら鞄の中を漁るふりをしてエレベーターに背を向けてエレベーターが更に上がって行くまで足を停めて待った。

人避け結界はそばにいる人間の直接的な認識を阻害できるけど、間接的な機械を通した映像上での認識はそのままだからねぇ。


変な事をやっているのがエレベーターの防犯カメラに映っていると困る。


篠原氏の部屋はエレベーター前を曲がって廊下を3分の2程進んだ場所だった。付近に防犯カメラは無いので人避け結界で認識阻害して廊下に佇んでいても問題はない。

なので篠原氏がいるリビングに一番近い廊下で、どこの家が扉を開けてもぶつからない位置に陣取って意識を集中する。


『こんばんは?』

壁を越えて、リビングにいる死霊さんに念話で話しかける。


『あら〜、こんにちは!

人に声を掛けられるなんて久しぶりだわ〜。

篠原くんったらニブニブで、幾ら寝ている時や静かな部屋にいる時に話しかけても全く気付いてくれないんだもの、困っていたのよ〜』

想定以上に明るい調子で返事が来た。


悪霊化していなくても殺されたんだからもっと落ち込んでいるかと思っていたのだが、平気そうだ。

霊って意外と死んでも平然としている事が多いんだよねぇ。

と言うか、死んだ瞬間の苦しみに囚われている霊は悪霊化するし、囚われていない霊はそんな事を考えていないので平然としているんだよね。

しかも仕事とかお金の悩みとかも要らなくなって吹っ切れるのか、意外と朗らかにしている霊も多い。


それで何で成仏していないのか不思議だが・・・ある意味、悩みを忘れているから普通の霊は成仏し、殺された人は死体の問題とかがあるから取り敢えず義務感的に残っているのかな?


『お名前を伺っても良いですか?

私は退魔師の長谷川 凛と言います。

警察にも退魔師の対応を任されている担当がいるので、霊から聞いたって話でも死体の捜索とか殺人犯の捜査とか出来るので、分かっている事は出来るだけ教えて貰えると助けになれると思います』


楽しげに近づいてきてクルミ相手に指(霊体なんだけど)を動かして遊び始めた死霊さんに話しかける。


『ああ、それは助かるわ。

私の名前は渡部 理恵子。

元々は篠原君と同じ研究室で働いていたの。

論文が認められて新しい研究室でポジションが見つかったからお祝いって事でそこを紹介してくれたエージェントの人と夕食を食べに行ったら、なんか最後に目眩がしてきて彼女の車に乗せて貰ったの。

そしたら何やら人気がないところで首を絞めて殺されちゃって・・・死体はなんか耕作放棄したような場所に埋められちゃうし、彼女はまた研究室に戻って他の研究員と仲良くしているっぽくって心配だしで、困っていたのよ〜』

のんびりと渡部さんが教えてくれた。


おやま。

殺人犯は女性??

意外だね。

連続殺人する様な異常者って男性の方が多いらしいのに。

毒殺ならまだしも絞殺だし、何やらボロそうな男物のベルトが渡部さんの霊体の首周りに残って見えてるし。


やっぱり平気そうに見えても、それなりにトラウマにはなっているんだろうね。


『死体の場所って分かります?

あと、殺された晩に夕食を食べた店の名前と殺人者の名前も。

ちなみにその殺された車は殺人者の物でした?』

色々と聞いてみる。

もっとも、絞殺だったら血が出る訳ではないから犯人の自家用車だとしてもあまり証拠は無いんだろうなぁ。


死ぬ前に犯人を引っ掻いてそれが死体の爪の下にでも残っていたら良いだろうが、耕作放棄地なんてなんかこう、適宜雨が降ってて遺体の腐敗が酷くて証拠も分解されて無くなっていそうだけど。

どうなんだろ?


『場所はあっちの方。

方向は分かるけど、地図的な場所は知らないわ。

殺された晩に行った店の名前はラ・フィラージュっていうフランス料理の店ね。

私を殺したのは水野・・・紗里さんだったかしら。

車は誰のか知らないわねぇ。

でも、ちょくちょく車でどこそこに行ったって話をしていたから自分のなんじゃないかしら?』

渡部さんが答えてくれた。


ふむ。

それなりに情報がありそうだが・・・死体遺棄の場所は車をレンタルして直に行かないと無理かぁ。

ちなみに。

『篠原氏のそばに居たのは何故ですか?』


『水野さんが次は彼に良いポジションがあるって話し掛けているから、心配で。

まあ、一緒にいても何もできないし、どんだけ話しかけても気付いてくれないから困っていたんだけど』

溜め息を吐きながら渡部さんが言った。

殺人者は呼び捨てで良いと思うよ?


『ちなみに、研究室にいた白髪の男性に憑いていた死霊さんはご存じですか?』

あっちも同じ場所に死体があるんかね?


『ああ、あれは2年先輩だった高橋さんよ。

研究室に出入りしているエージェントを出禁にする様に教授に話しかけているんだけど、あっちも上手くいっていないんですって』


なるほど。

どちらの死霊もこれ以上被害者が出ないように頑張っているらしいが上手くいっていない、と。


取り敢えず。

車をレンタルして、死体の場所を確定させるか。

残りは田端氏に乞うご期待だな!


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