いつか要検討・・・かも
「数日掛かる依頼や旅行に源之助と行ける様、キャンピングカーみたいのを源之助に家の一部として認識して貰えないかね?」
田端氏が帰り、洗濯物を終わらせてリビングに戻ってからふと先ほど思いついた事を口にする。
「キャンピングカー?」
碧が首を傾げる。
「アメリカの映画やドラマで出てくる馬鹿でかいのは流石に日本の道路だと厳しそうだけど、幼稚園のミニバス程度なサイズのキャンピングカーがあったらそれで『部屋ごと移動』みたいに出来ると思わない?」
がら空きな田舎道以外は碧が運転する事になるだろうけど。考えてみたらミニバスでもそれ用の免許が必要かな?
「キャリーケースに入れて移動してホテルに閉じ込めるのはストレスが多すぎて問題外だけど、確かに部屋の一部ごと移動っぽい感じに出来たら源之助も一緒に行けるかもねぇ」
碧がちょっと首を傾げながら応じる。
「まあ、マンションに住んでいるとそんな大きな車体を置ける駐車場が無いだろうし、年に数回使う程度じゃあ源之助にとって『自分のテリトリー』扱いにならないから難しいか」
定期的にキャンピングカーの方へ行ってそこで遊んで馴染ませるのも可能かもだが、面倒臭くてやらなくなりそう。
「それに、やっぱり二人で使うとなるとかなり大きく無いとベッドのスペースとかが厳しいんじゃない?
高さが足りるなら2段ベッドと座るスペースだけって言うのもありかもだけど。
・・・寝台列車っぽく割り切って、食事はレストランか弁当やパン系の持ち込み、風呂は銭湯、洗濯は必要があったらコインランドリー、水回りは基本ウェットティッシュって事にしたらかなり必要な設備系を絞れるよね。
そうなると、ミニ冷蔵庫とバッテリー程度で何とかなるかも?」
碧が首をちょっと傾けて考え込む。
「前世だったら水を出す魔道具なら比較的簡単に手に入ったし、お金さえ払えば収納系の魔道具も入手出来たから馬車でもそれなりに快適に移動と寝泊まりが出来るキャラバン用のがあったんだけど・・・こっちは魔石も魔道具も無いからねぇ。
一々水を出すのに符を使ってたら高くつき過ぎだし、まだ私の魔力ではベッドを収納するのは厳しいから、あれの再現は無理か」
前世なら元素系の魔術師も沢山いたので、飲み水を出す魔道具はそれなりに普及していたし動力源の魔石も比較的簡単に入手出来た。
魔石が数個あれば基本的に魔力の補充は自分で出来たから、移動時の身の回りはそれなりに楽に手配出来たんだよねぇ。
実質王族の奴隷とは言え、名目上は王宮魔術師だったから収納バッグも配布されてたし。
『魔石なら儂が幻想界から取ってきても良いぞ?』
白龍さまが口を挟む。
「いやいやいや。
幻想界で白龍さまの目に留まるほどの魔石なんて言ったら強力すぎて前世でも国宝レベルでしょう。
こっちに持ち込んだりしたら大騒ぎになりますよ」
まず、魔石の魔力漏れを防ぐ素材が無いだろう。
あれは身体強化系能力の強い魔獣の皮を使うのだ。
そもそも魔獣が居ないこっちの世界では存在しない。
「魔石の存在ってバレるかな?」
碧がちょっと興味がある様に尋ねてきた。
「収納していれば分からないだろうけど、使うために出したら魔力がダダ漏れだから才能持ちの魔力視には強力な魔石は強烈に光って視えると思うよ。
それに符に手を加えて魔石を動力源にするのも難しいからねぇ。
私じゃ元素系の魔道具は作れないから、魔石があっても使えない」
飛行機とか、新幹線とか、電車とか、テレビやインターネットなど、こっちの世界は色々と便利なんだけど・・・魔石と魔道具が無いと不便な面もある。
まあ、何もかも満遍なく発達って言うのは無理なのだろう。
「どちらにせよ、キャンピングカーを家の一部として源之助に認識させるためには家と一体型の駐車場付きの戸建てにでも住まなきゃならないし、キャンピングカー自体が200万から500万ぐらいするみたいだし、無理だねぇ」
ちゃちゃっとネットでキャンピングカーについて調べたらしき碧が溜め息を吐きながら言った。
「まじ?!
そんなに高いの?!?!」
値段の事を考えてなかったな。
「いや、普通にプリウスとか買っても300〜400万するんだから、理不尽って程じゃあないよ?
考えてみたら丁度いい一軒家の賃貸を見つける方が難しいかもね。
流石に凛と二人で家を共同購入する気は無いし」
碧が苦笑しながら言った。
そっかぁ。
車ってそんなに高いのか。
ある意味、車自体がそこまで高いならキャンピングカーの購入自体は車の購入を考えているなら極端に出費が増える訳じゃあないんだね。
とは言え。
「そうだねぇ。
家の共同購入は無いなぁ」
誰かと結婚して夫婦になったとしても離婚時の残債や家の分割が面倒だから共同購入はかなり微妙なのに、友人でしか無い碧と共同購入は無いな。
「まあ、物凄く仕事が儲かる様になったら事務所で買うのはありかもね」
そこまで儲かる様なビジネスの種はイマイチ思い浮かばないが。
手頃に出来るお守りは単価があれだからそこまで高額収入は期待できないし、収納符とかを退魔協会に売る事になってもそれ程儲けられるだけの数は作成出来ないだろう。
それとも、魔力がもっと増えたら大量に作れて売れるか?
もうちょっと収納符の鍛錬を頑張るべきかな。
「まあ、長期的な選択肢の一つとして考えておこうか」
碧が苦笑しながら言った。
考えてみたら、基本的に学生の間は長期依頼を受けないって言ってあるから今回みたいに姿を消したいと思う時以外は要らないよね。
車だったら多分もっと簡単に追跡できちゃいそうだから、姿を消すのにはあまり向いていないかもだし。
将来的に検討ってとこだね〜。