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謝罪・・・?

「と言う訳で副大統領は無体な要求をしたつもりは無かったらしいものの藤山さんに迷惑を掛けた様だから、謝罪する為に帰国する前に一度会いたいと要望が来た」

お茶を受け取りながら田端氏が伝えてきた。


なるほど。

だから態々ウチらの帰宅を待っていたんだね。


「それって謝罪に託けたイチャモンって言いません?

しかも、お偉い政治家から断りにくいお誘いを受けて、それを断る為に日本の政府に借りを作る形になって、碧に取っては二重に美味しくない罠なように思えますが」

思わず突っ込みを入れる。


「そうだね。

変に粘着されない様にも、副大統領が日本を出国するまでどっかに出掛けようかなぁ」

碧が溜め息を吐きながら合意する。


こう言う時に、飼っているのが猫だと不便なんだよねぇ。

犬だったらそのまま車に乗せて一週間ぐらい放浪の旅に出るのもありだろうが、猫だとテリトリーから出るのを嫌うので、旅行なんぞに連れて行ったらストレスで体調を壊しかねないし、下手をするとどっかで脱走して行方不明になりかねない。


まあ、シロちゃんが着いていくだろうからちゃんと再会は出来るだろうが、源之助がストレスを感じることは変わりはない。


「流石に副大統領も謝罪で断れないような誘いをしないだろうし、日本政府だって日本の政治家が発端で面倒なことになって役人の暴走でさらに悪化した状況下でアメリカが何か変な要求をしてきたのを跳ね除ける手伝いをして恩に着せる事は無い・・・と思う?」

田端氏が笑いながら言い始ったが・・・最後が微妙に疑問系だったぞ?


「アメリカ人ですよ?

嘘を吐きまくるせいで裁判所が『彼の言葉を嘘でないと信じていた人間は少ないから、名誉毀損に当たらない』なんてトンデモな判決を下すあのトランプを大統領の選ぶ国の政治家ですよ?

どんな理不尽な事も平気で言い出しそうだから、絶対に会うには嫌です。

謝罪なら、日本の犯罪被害者基金にでも誠意を込めた寄付をしてくれと伝えて下さい」

碧がばっさり切り返した。


「会いたく無いと言っているのに面会を強要する時点でそれって謝罪じゃ無いですよね?

本当に謝意があるなら寄付を、単に謝罪に託けた勧誘目的なら会う前に断られて時間の節約になったと思って、どちらにせよこちらに迷惑を掛けずに黙って帰って下さいって伝えてはどうでしょう?」

日本の外務省あたりなら上手にオブラートに包んでそこら辺を伝えられるだろう。

少なくとも碧が会う気は無いのだ。

下手に相手の気を持たせる様な返事をして困るのは政府なので、外務省も諦めて断りの言葉をしっかり伝えてくれると期待しよう。


「分かった、伝えておくよ」

溜め息を吐きつつお茶を飲み干し、田端氏が帰っていった。


「なんかさぁ、転んでも只では立ち上がらないしぶとさだね。

流石大国で副大統領にまでなった政治家」

静かになった部屋で、ソファに寝転がりながら思わず溜め息をこぼす。


「だね〜。

どこまで『忖度』で『暴走』なのか、怪しい感じ。

最初からちょっと無茶な要求を『家族が誘拐されてパニック状態だったから』って事で出して、後に謝罪の形で面会を引き出すのが目的だったのかも」

ウェットフードを食べ終わり、ローテーブルの上で身繕いを始めた源之助の額や頬をこしょこしょ指先で擽りながら碧が言った。


「自分の子供の命が掛かっていたらそれなりに判断力が下がるとは思うけど。

・・・もしかして、最初から本国では上手く誘き出せなかったテロリスト集団に日本で行動させて壊滅させるプランだったとか?」

元々狙われていると情報があったなら、わざと日本で『コンサートの為に抜け出す子供』と言う隙を見せて一網打尽を狙うと言うのもありか?

本国だったら流石に危険がある時に隙がある様な護衛体制なんぞありえないし疑われるだろうが、他国だったら日本の警備体制に頼らざるを得ない部分もあるので穴があっても不思議はない。

しかも頼る相手が平和ボケした日本だからねぇ。

娘が抜け出して誘拐されて処分されるのも、SPではなく日本の警察が悪かったと言う事にできるし。


しっかり監視体制を組めるなら、横須賀基地に米軍の特殊部隊のチームを前もって待機させておけば救助ミッションも比較的簡単に出来そうだ。


同盟国に何も言わずにそこまでやるかは微妙に不明だけど。


「まあ、誘拐とテロリスト壊滅は元からあったプランだとして、私へのちょっかいは出来心って奴じゃない?

多分そのアホンダラ政治家が口を滑らせたから欲をかいたんでしょ」

碧が肩を竦めつつ言った。


「人気者は大変だね〜」

名目上は階級社会では無いから権力者に理不尽を強いられる事は無い筈な現代だが、それでも世の中には『権力者』と『その他一般人』の断絶は存在する。


力があるのは無いより良いが、力は権力者から要らぬ注意を集めるので難しい。


「本当にねぇ。

ごめんね、巻き込んじゃって」

溜め息を吐きながら碧が謝ってきた。


「いやいや。

私もそれなりに隠さなきゃいけない色々があるから、碧が防波堤になってくれてとっても助かってるよ〜。

マジでウチらは出会えて幸運だったと思うな」

どっちにも損が無い、良いパートナーシップだよ。



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