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符作成の心得

「本当に悪霊退治に向いた霊力が何かの話はさておき、符の作成に話を戻すね。

まず心得1だけど、符は武器のような物なの。

威力次第では多数の人間を傷付ける事だって出来るから、どう言う場面で何をする為に使うのかをちゃんと考えて、その目的を達するのに必要十分なだけの威力の物を作るべしって事。

無闇矢鱈と作れるからって強力な符を作っちゃダメだよんって話ね」

碧が解説を始めた。


地球では魔力が籠った素材が少ないので強力な符を作ろうとするのに障害があるからあまり心配しなくて良いかもしれないが、確かに重要な注意点だ。

それに、障害があると無駄に熱意を燃やしちゃう研究者タイプも時折いるし。


黒魔導師時代にはちょくちょく学者バカな研究者が研究に熱中するあまりに使い所のない程強力な魔道具を造り、保管場所の確保と警備の為に予算をバカ喰いして怒られていた。


それを嫌がって危険な魔道具を研究室のちゃちな鍵付き棚に入れておいて盗まれ、王族まで死んだ自爆攻撃に使われて奴隷落ちした研究者もいた。

ちなみに有能な本人は奴隷落ちだったが、とばっちりを食らった家族は処刑されていた。

研究に没頭しすぎて家にも殆ど帰ってこない様な最低な父親だったのに、妻と両親がとばっちりで処刑とは、本人達も納得いかなかっただろう。


妻が悪霊になって戻ってきたという噂を聞いたが・・・どうなったんだろう?


前世の事をふと思い出したが、碧が続けていたのでそちらに集中する。

「次の心得は、作った符は渡す相手を良く吟味せよってやつね。

最近みたいに金で売買する様になるとこれは守るのが難しいけど、少なくとも子供とか精神異常者には起動できないようなロック機能をつけるべきって私は教わったわ」


確かに、奴隷落ちした研究者だってあの魔道具にちゃんと使用者制限を設定しておけば自爆攻撃に使われなかった可能性がある。


「うん、ロック機能は重要だね。

やり方はぜひ教えて」


「もちよ〜ん。

で、3番目に関してなんだけど、符の文言って弄ると使い勝手が良くなったり威力が上がったりする事もあるの。

だからある意味符の作成って言うのは常に向上し続けるテクノロジーなんだけど・・・文言の修正に失敗すると暴発したり想定外な結果をもたらしたりする事もあるから、十分注意してテストしながらやっていく必要があるのをしっかり理解しておけ!って話ね。

慎重な試行錯誤が苦手な場合は、文言の変更には手を出さない方が良いとも教わったわ」


碧は慎重な試行錯誤が苦手なんじゃないかな〜と密かに思っていたら、本人があっさり最後の一言を付け加えた。


「ちなみに文言はある意味知的財産だから、盗まれない様に符に書き込む時は色々と偽造するの。

それもあって手を加えるのってやたらと面倒なんだよねぇ」


あらま。

その可能性はあるとは思っていたけど、収納用の符を一つ買ってそれを複製すれば良いといかないのは痛い。

「回復とか収納とか、有意義な符の基本形だけでも協会の方で教えてくれないの?」


碧が溜息を吐きつつ首を横に振った。

「回復系は善意のご先祖様が寄贈したから、ごく簡単なのはあるんだけどねぇ。

収納を寄贈してくれる奇特な人は出てこなかったっぽい」


残念だ。

「そう言えば、収納の符が出回っても大問題になってないけど、密輸とか武器の持ち込みとかはどう対応されてるの?」


碧が肩を竦めた。

「詳しいことはよく知らないけど、空間系の術って重複できないんですって。

で、空間系の術を空港とかセキュリティチェックのところに設置しておくと、収納に入れた物は持ち込めなくなるの。

基本的に荷物チェックがある場所は全てそう言う設定になってるから、うっかり使用中の収納符を持ち込んで荷物をぶち撒けても自己責任って事で、符の代金どころか荷物をぶち撒けた際の損害とかも全部自腹。

だから旅行用とかに収納符を入手したら空港のチェックを通り過ぎてから使うようにね」


「ちなみに、符じゃなくて本人が能力持ちだった場合はどうなるの?」

符だったら重複する時空魔術で術が破綻したら本体の紙が単に破けるか燃えるかだけだと思うが、人間の場合はどうなるのだろうか。


鍵や参考書を収納して動き回る事が多い自分が今までセキュリティチェックに引っ掛からなかったのはラッキーだったのかも知れない。


「その空間系の術が掛かっているところの内側に入れなくなる。

もしくは霊力込めればそっちの術を破っちゃう事もあるんだけど、そうしたら自分で術を掛け直すか、掛け直す為の術師代を払うことになるから、どっかで引っ掛かったら強引に押し通らない方をお勧めする・・・」

悲しげな溜息を吐きながら碧が言った。


「やったの?」


「熊本の方へ修学旅行に行った際に、焼酎を白龍さまの希望で知り合いに買ってもらって持っていたんだ。

国内便だから荷物チェックなんてないと思っていたからど忘れしていて、何かに引っ掛かって動けなかった時に焦って白龍様に頼ったら空港中の術が解除されちゃって」


うわぁ。

空港の担当者も焦ったに違いない。

セキュリティチェックが出来なかったら、降りてくる客の対応はできてもチェックインが出来ないだろう。

「テロ予告って事にでもして誤魔化したの?」


「白龍さまが修復してくれたから大丈夫だった。

お陰でそれ以来、時折『緊急事態なんです!』って泣き付かれるようになってちょっと面倒なんだよね」

溜息を吐きながら碧が応じた。


なる程。

コンサート会場とか美術館とか政治家の集まり程度だったらセキュリティチェックに異常が起きて一時停止になっても極端に問題は無いだろうが、空港でチェックインが完全にストップしてしまったら影響が大きすぎる。

少なくとも羽田や成田で問題が起きたら東京にいる碧に泣きつくだろう。


「文字通り、困った時の神頼みだね」





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