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何事も程々が重要だよね

「よっし、人間以外の動物全部にアレルギーにしたから猫犬だけじゃなくってハムスターや文鳥も虐待出来ない筈!

子宮も機能停止状態にしたから子供が虐待される恐れはこれで無くなったかな。

そっちはどう?」

暫し二人で黙って集中していたが、20分後ぐらいに碧が作業を終えた。


「取り敢えず人は殺していないけど・・・人の苦しみや痛みを全く共感出来ないある種の精神異常者だねぇ。

ポロッと本音をこぼし易くするのは出来たけど、ついでに人を苦しめた時に相手の苦しみや痛みも共感する様に出来ないか、ちょっと工夫しているところ。

もう少し待ってくれる?」

前世でも一応そう言う術があったのだが、あれは王家や高位貴族(及び金を払える豪商)の子供に共感を覚えさせて人間としてまともに成長させる為の術なので、定期的にモニターして補強する必要がある術だった。


まあ、共感が可能になる様に幼児へ術を掛けて教育しても、半永久的に術をかけ続ける訳にはいかないので大人になって術の行使が止まると暫くしたら王家のクソッタレみたいなクズになってしまう事が多かったらしいが。


もっと国の上層部がまともだった時代に、精神異常がある子供を殺したり廃嫡するのが忍びなかった親が開発させた術なのだが、結局精神異常者に上手に周りと合わせて擬態する術を教えただけだったと私は思う。


はっきり言って、遺伝子プール的に考えても精神異常な子供は廃嫡して幽閉するか・・・せめて子孫を残さない様にするべきだったのだ。

お陰で、権力闘争に繋がるせいで余程のやらかしが無い限り子供を廃嫡できなかった王家の血が劣化しまくり、私の時代にいた様なクソッタレが大多数な一族に成り果ててしまったのだから。


それはともかく。

一応、あの術を掛けると術が効いている間は肉体的でも精神的でも誰かに苦痛を与えると相手の苦痛を自分も感じるのでイジメや虐待はやりにくくなる。


理想としてはなんとか本人の魔力を使って半永続的にこの効果を続けさせたいところなのだが・・・虐待主に殆ど魔力がないので、難しい。

魔力がないので私の術への抵抗力もなく、術の磨耗は少ないが代わりに魔力の補充もほぼ出来ないのだ。


まあ、しょうがない。

取り敢えず、私が倒れない程度の精一杯の魔力を注ぎ込んで出来る限り長続きさせよう。


「ん、これで終わり。

残念ながら部屋の原状回復費の踏み倒しとか、みみっちい万引きとか、気に入らない人のスマホをわざと洗面所に置いて水を掛けるとかしかやっていないから当局にちくって拘束させるのは無理だね。

取り敢えず、時々本音が口からこぼれる様に自制心を少し緩める術をかけておいたから、願わくは周りの騙されている人が真相に気付くと期待しよう」


「婚約者には妊娠していないってチクった方がいいよね」

碧が忘れ物が無いか部屋の周りを見回しながら指摘する。


「確かに!

婚約者に一緒にクリニックへ行こうと誘わせて、強硬に断られたら疑いを抱く様に暗示でも掛けるか」

変に怪手紙を送るよりも自分から疑う様な切っ掛けになる行動のトリガーを婚約者の精神に埋め込む方が良いだろう。


結婚式までまだ日数が少しはあるだろうから、1、2週間待ってこの虐待主がボロを出して微妙に怪しみ始めた時期に接触するのが良いかな?


「そう言えば、精神異常者だって言っていたけど将来的な殺人狂なの、この人?

これから人殺しをする様になるならこないだの大量殺人計画犯みたいにストッパーを埋め込んだ方が・・・良くない?」

碧が少し躊躇してから尋ねてきた。


「精神異常って言っても、人の痛みとか苦しみが全く共感出来ないだけで、ある意味究極の自己中な人ってだけなんだ。

違法行為をして捕まったら面倒だと言う意識はあるから、人殺しをしようと意識的に決めることは無いと思う。

ただ、自分がコントロール出来る家庭内とかの環境で子供を虐待するのも『見つかりさえしなければストレス解消にやっても良い』って考えるタイプだから、子供やペットを持たせちゃいけないよね」

まあ、他者の痛みを共感出来ないのが精神異常だと断ずるのは単なる甘えかも知れないが。


ちゃんと社会で生活できるだけの適応力と判断力はあるのだ。

ロクデナシではあるけど。


「痛みや苦しみを共感出来ないって・・・そう言う感情が無いの?」

碧が首を傾げる。


「例えばさ、映画で誰かが死ぬシーンでフィクションだと分かっていても涙が出ることってあるじゃん?

別に同じような死に方をした家族がいる訳でもないし、死んだ人を個人的に知っていた訳でもないけど、なんとはなしに悲しみや苦しみを自分の事のように感じて涙が出る事ってあるでしょ?

あれが『共感』な訳だけど・・・私たちだって誰かが死ぬ映画を見たら全部で涙が出る訳では無いから、共感って必ずしも確実にするモノでは無いし測ってテスト出来るモノでもないよね。

ただ、完全にそれがゼロな人ってやっぱりちょっと人間の標準から外れて異常って言われると思う。

違法行為をしたら自分が罰せられるって理解する判断力はあるから人殺しとかはしないけど、それこそ法の及ばない無人島に流されたら食糧どころかちょっとお洒落な服の為にあっさり周りの人を殺すタイプかな」


私たちだって自分や大切な人の命が掛かっていたら他者を殺す事はあり得るが、共感能力ゼロな人間だと究極な状態でなくてもごく簡単に割り切れてしまうから人間社会では精神異常だと言われるのだろう。


「そんな人が普通に社会の中で働いて生活しているってちょっと不思議な感じ・・・」

碧が微妙な顔をして虐待主を見下ろした。


「まあ、自分と他者との違いの認識と割り切りは誰でもするものだし、自分と他者を同じぐらい大切に考えちゃう共感マシマシ過ぎる人もある意味精神異常者だと思うけど、ちょっとこの人は周囲の人間にとって都合が悪い方向に振り切れちゃってるんだよねぇ。

まあ、人を殺してないし、多分これからも殺さないと期待して帰ろう」


そう言えば生霊さんは体に戻るよう背中じゃないけどを押しておこう。

共感ゼロなせいか、霊の呪いも恨みもほぼ全く感じてないので自分の寿命を削って体から離れて恨みを囁いても殆ど効果は無い。


やるだけ無駄だ。

まあ、多少は肩こりの原因になっているっぽいので過去の虐めの被害者らしき死霊達は祓わずにそのままにしておくけど。



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