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優雅だよね

「ただいま〜」

家に帰り、碧がバッグを玄関に放り投げて源之助へ飛びついた。

あまり勢いがあるとニャンコが逃げるぞ〜。


元々、あの再開発マンションはかび臭いし悪霊だらけだしで空気は悪い。

しかも今日の601号室の悪霊は今までになく酷かったから、癒されたい気持ちは分かるけどさ。


あの後6階の残りの部屋を確認したところ、9部屋に悪霊が居た。

もしかしたら他の部屋からの霊障の影響であの犬の飼い主もノイローゼにでもなって酷い事をしたのかも知れないが、あそこまでの残虐性はそれなりに下地が無ければ発揮されないだろう。


「きっと、あの部屋の元の住民って何気ない顔をして教室でイジメを主導していたタイプだよね」

私がリビングに辿り着いたら、源之助の前でリボンを振り回していた碧が言ってきた。


「ありそうだねぇ。

だけどあそこまで残虐だと、虐められる子に怪我でもさせてそう」

子供って普通の状態でも意外と攻撃的だし考えたらずだ。

みんなで虐めている間に行き過ぎちゃいそう。


「傷が残らない程度に叩いたりトイレに誰かの顔を突っ込むとか言った程度なら、先生も見て見ぬ振りをするんじゃない?

学級崩壊とかされたら面倒だろうし、虐めを主導するような子だったら虐めを本気で咎めたら仕返しに『先生に性的悪戯をされた』って嵌めて教師を破滅させるぐらいのことをしかねないし」

碧が醒めた声で言った。


まあ、教師だって公立や程度の低い私立だったら給料がさして良くも無いのに残業だらけな上にモンスターペアレントとかの対応もしなくちゃしで、真面になんて付き合ってらんね〜って思っているのも多そうだよねぇ。


「考えてみたら、そこそこ若そうだったから学校での虐めで満足させていた残虐性が社会人になって満たせなくなって、ペットの虐めに繋がったのかもね」

あの虐待主は社会人になってまだ数年っていう雰囲気だったと思う。

学校と言う閉鎖的な環境ハンティング・グランドを失い、鬱憤晴らしが出来なくなってもっと身近な所でやる様になったのかも?


職場の虐めって言うのも聞くけど、最近だったら人事への相談とか転職とか、対応方法はそれなりにあるからねぇ。

やはり学校ほど思う存分に残虐性を発揮できる環境はそうそうないだろう。


考えてみたら男だったら暴力が好きな人間ってヤクザとかになりそうだけど、女でもヤクザになれるのかね?

何とはなしに暴力団って『姐さん』とか愛人以外の女性構成員って居ないようなイメージだけど、どうなんだろ?


「それはさておき。

やっぱり猫ってこのアンヨが良いよねぇ」


突然話題が方向転換した。

はぁ??


「どうしたの、突然??」


「仕事とは言え、新年そうそう瘴気だらけな場所で悪霊ばかり見ていてなんかもう、ウンザリなの。

やっぱりこう言う時は猫様の愛い所をじっと注視して気分を変えるべきでしょ?」

リボンを碧から奪い取ってうぐうぐと噛んでいる源之助を手で示しながら碧がいう。


まあねぇ。

確かに、気分転換も兼ねてニャンコの魅力について語り合うのも良いか。

後で青木氏の猫部屋のライブストリームを見るのもありかも。


と言う事で源之助をじっと見つめる。

「う〜ん、猫って耳や目も可愛いし、あの小さくてぽってりした足も確かに魅力的だけど、やっぱり一番の魅力は尻尾じゃない?

優雅にほっそりしなやかにくりっと動いて、曲がったり伸びたり、体に巻き付いたり。

もう世界最高だと思うんだけど!」

尻尾の魅力について話しているうちにテンションが上がる。


猫の耳や尻尾が凄く魅力的に見えるのって自分にないからかなぁ?

日本犬とかのくりっと丸い尻尾も微笑ましいけど、身近に見るとやはり猫の長くてほっそりとした尻尾は断然良い!


あの優雅さは正しく絶品だと思う!!


猫さまの尻尾の素晴らしさを力説したら碧が考え込んだ。

「確かに尻尾のあの優雅な動きは良いよねぇ。

ふわっと丸くなったりご機嫌に上向きにピンと伸びたり、テレビやおもちゃを見て興奮してきてふるふると動いたり。

でも、あのあんよのプニっとした感触とか先っちょまで毛の生えた素朴な美しさも変え難いし・・・」


暫し猫の魅力についてどこが一番かを言い争った私たちだったが、結局最終的に『どこもかしこも美しい』と言う事で合意した。

何もかもに結論が出なくちゃいけない訳じゃあないからねぇ。



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