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捏ねてるんかな?

「悪霊って除霊した後、一つの魂として普通に転生するのかなぁ?」

悪霊塗れな再開発マンションの霊障チェック作業に戻ってきた。

エレベーターを8階で降りて1号室の鍵を開けながらふと呟く。


「うん?

どう言う意味?」

薄暗い廊下の片隅を疑わしげに睨んでいた碧が振り向かずに尋ねる。


どうせG避け魔道具を携帯しているから寄ってこないんだし、周りはあまり見回さない方が精神衛生上良いと思うよ〜。

「いやさあ、ここに居る悪霊なんかはまだ新しいせいか比較的人格とか記憶とかが残ってるじゃん?

だから浄化した後は普通に一人なり1匹なりの存在として転生するだろうな〜って思えるんだけど、こないだ兄貴達に憑いていた悪霊なんかは凄く古くてもう記憶とか人格とかも殆ど残ってない感じで、『魂』って言うよりも『恨みや怒りの残滓』って感じだったじゃん?

あれだと死んじゃった時にあまりにも恨みとかが大きすぎて、魂の一部が地上に残って八つ当たりをしていただけなのかな?とも思えるんだよね。

もしくは怨んで残っている間に魂が擦り減ってしまったとか。

それに比べてこっちの彼なんかはまだ魂が大分と残っている感じがする」

玄関でぶつぶつと言いながら壁に見えない呪い人形かなんかを釘で打ち付けているっぽい悪霊を指しながら碧に言う。


「確かに言われてみると、なんかこう悪霊の魂の量って言うか残量っぽい何かって古いのと新しいのだと大分と違う気はするね」

碧が悪霊の横を通り抜けて他の部屋を見て回りながら応じる。


「だから古い摩耗しちゃった悪霊なんかは今更除霊してもそのまま転生するだけの質量が無さそうだと思わない?」

まあ、魂の質量がどんなモノなのかなんて、前世で色々やらかした死霊使いとかでも詳しくは知らなかったようだけどねぇ。

と言うか、黒魔術師の死霊使いが死後の魂については一番詳しかった筈だが、死霊なんぞを詳しく調べる変人ってそのうち死霊を製造したり利用する方に寄り道しちゃって、結局最後に討伐されて研究資料が討伐の際に燃えちゃうか、禁書扱いされて処分されるかで情報が後世に残らなかったんだよねぇ。


部屋の中を見て回り、玄関の彼以外は居ないと見做した碧が記録を記載する為にタブレットを取り出す。

『クルミ、玄関の悪霊以外に霊とか霊障の原因とかが無いか確認よろしく』

クルミの蜂型分体を収納から取り出して魔力を補充しつつ頼む。

『了解にゃ!』


「あ〜確かに古い悪霊ってそのままじゃあ人間に生まれ変わるには足りなそうだよね。

まあ、除霊されるほど悪事を働いた怨霊なんてどうせ次は虫とか動物だろうから、魂の容量が少なくても丁度いいんじゃない?」

碧がタブレットに詳細を書き込みながら答える。


「まあねぇ。

でもさ、そう考えると悪事を働いて悪霊化しなくても次は虫とか下等動物なんかになった場合って魂の質量はどうなるんだろ?

要らない分って削られて善行をしてランクアップする魂の追加素材として再利用されたりするんかね?」

悪人からの魂の一部が、ランクアップする際の増量分として流し込まれるなんて考えると・・・それはそれで嫌だ。


工場でベルトコンベアーに乗って流れてきた粘土状の魂が、規定重量に足りなかったら素材を足されて捏ねられた後に形を整えられて出荷される姿を思い浮かべてしまった。


「ちょっとそれ、嫌なんだけど!」

タブレットから顔をあげ、眉を顰めながら碧が抗議する。


『他に残っている変なモノは無しにゃ!』

クルミが戻ってきて報告する。


「ここは玄関の彼だけみたいね。

ちなみに、私って転生してるし過去の人生の記憶もあるけど、死んでから生まれ変わるまでの記憶ってないんだよねぇ。

だからそのプロセスってどうなっているんだろ?ってふと思って」

クルミにお礼として少量の魔力を追加で渡しながら碧に言う。


「自動的に魂のカルマを判定、記憶除去処理して来世の行き先に応じて魂の量を調整するシステムが存在するのか、それともそう言う事をやる工場みたいので働いている存在がいるのか。

確かに言われてみるとちょっと気になるね〜」

記入の終わったタブレットを閉め、玄関に向かいながら碧言う。


「白龍さま、そこら辺のところはどうなっているのかご存じですか?」

横にふわふわと浮いていた白龍さまに碧が尋ねた。


『知らんの〜。

過去に培ってきたカルマは視えるが、どう言う流れで過去が今に繋がっているのかなんぞ気にもした事が無いし、誰かが死んだ際に魂がどうなるのかも分からん』

まあねぇ。

氏神様と言っても、幻獣系の思いっきり強力な力の塊っていうのが白龍さまだからねぇ。

イマイチ命や魂の循環とは関係なさそう。


「ちなみに、こう・・・全ての魂を浄化して循環させる世界樹ってどっかにあったりします?」

前世ではそんなのは宗教は無かったが、今世で読んだラノベとかではそう言う設定もあったし、ある意味魂が転生し続けるんだったらシステムとして世界樹があっても良いんじゃないかって気もする。


植物が光と水で光合成を行って実を育む様に、霊的な植物っぽい世界樹が魂を材料にプロセスしたりってありそう。


『幻獣界に大きな樹は色々とあるが、魂を吸収したり生み出したりしているのは見た事も聞いた事も無いぞ』

あっさり白龍さまに否定された。


そっかぁ。

転生の仕組みってどうなってんだろうとふと思ったんだが、完全に不明ってことなんだね。


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