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巫女服?!

「大丈夫か?!」

瘴気は感じられなくても流石に顔色の悪さは分かったのか、椅子に座ってゆらゆらと頼り無げに上半身を揺らしている女性に兄が心配そうに声を掛ける。


「駄目・・・。

なんかもう、地面にずぶずぶ沈みそうな感じ・・・」

呻くような声で女性(怜子さんだっけ?)が答えた。


「ちょっと瘴気だけでも祓うので、もう少し頑張って下さい」

これじゃあタクシーに乗せても吐きそうな気がしたので、取り敢えず憑いている悪霊の半分ぐらいを祓っておく事にした。


パン!と手を合わせ、先日も使った祝詞をもごもご言いながら怜子さんにへばり付いている悪霊をぴこぴこ弾いて除霊していく。

私がやると力技になっちゃって可哀想なのだが、もう理性も記憶も残っていない妄執と恨みだけの塊に近いので、バッサリと消すのでも構わないだろう。


この状態になったらもう、心残りがあろうが諦めて次の輪廻へ移って行く方が絶対に得るものは多い。

こんな状態になっちゃった悪霊が普通に輪廻の流れに戻って転生出来るのか、知らないけど。


大元は被害者だったとしても、その後悪霊になって沢山の人に害を及ぼしていたんだったら悪いカルマを溜めまくっちゃってるだろうしなぁ。

色々悪さをしたからこそ鎮める為の石碑が作られたんだろうから、それなりに命を奪ってそうだ。


しっかし、たかがスノボで突っ込んで石碑を壊した程度でここまで呪うなんて、随分と攻撃的な悪霊だな。

全然石碑に鎮められて無かったっぽくない??

石碑を悪戯に壊して落書きをしたり汚したりしたって言うならまだしも、本人たちは特に悪意なく突っ込んだだけだったらここまで攻撃的に取り憑かなくても良さそうなもんだけどねぇ。


まあ、石碑で鎮められていた悪霊が全部総出でこっちに来てるなら、ここで除霊した事で北海道の現場は安全になるかもだけど。

幾ら家族が壊したからと言って、コース外のどこにあるかよく分からない石碑を直しに行くのは遠慮したい。


「あ、少し楽になった」

半分ぐらい悪霊を消したところで祝詞を止め、手を下ろしたら怜子さんが顔を上げて初めてこっちを見た。


「まだ見習いなんで一時的な気休め程度の事しか出来ないんだけど、教えてくれてる神社の娘さんは本物の退魔師だから、後少しの辛抱ですよ。

あ、妹の凛です。

いつも兄がお世話になってます」

どの位二人の関係が真剣なのか知らないけど、一応将来の家族になる可能性があるならそれなりに友好的な関係を築いておく方が良いだろう。


第一、絢小路家の血は兄貴も引いているのだ。

兄貴の子が才能を持って生まれてくる可能性もゼロではないから、霊とか退魔師の事を信じる女性が相手の方がなにかと都合が良いだろう。


「高木 怜子です。

こちらこそ、輝さんには仲良くして頂いてます」


適当に挨拶をした後、タクシーを捕まえて碧の実家へ。

言われた通りに裏に回ったら、何と家の方から碧が巫女の服装で現れた。


「うわ!

何その格好?!」

そんなの持ってるなんて知らなかった!!


「神社でお祓いする時はこの衣装なの」

肩を竦めながら碧が答える。

怜子さんと兄を見て、眉を顰めた。


「大変そうですね。

先に女性の方から祓いましょう。

お兄さんの方はこちらに座ってお待ちください」

特に挨拶をするでもなく、碧はさっさと怜子さんをお祓いの場所(多分)へ連れて行った。


退魔師として働く場合も、あの恰好で行ったら変な誘いをかけられないで済むんじゃないかなぁ?

それとも単なる若い女の子のコスプレだと思われて却って変な事をされるのだろうか。

神社で巫女の格好をしていればそれなりに威厳を感じるが、普通の駅とかであの恰好だったら第一印象はコスプレだろうからなぁ。


浄めの場に座った怜子さんに向かって碧が祝詞を唱えながら力を振るう。

相変わらず綺麗な力の発現だ。

黒魔術の除霊ってその点もの凄く微妙なんだよねぇ。

ぶしゃっと悪霊が強引に抹消される感じで、全然ありがたみも来世への期待感も無い。


魔力を視える人間が多かった前世で白魔術師がありがたがられ、黒魔術師が危険視されたのには見た目の問題もありそうな気がする。


「凄く楽になりました。

ありがとうございます」

除霊が終わり、スッキリした顔になった怜子さんがお礼を言いながら立ち上がった。

今度は兄貴の番だ。


「今まで悪霊とか除霊とかって全然信じていなかったんですけど、本当に実在するんですねぇ」

ふうっと大きく伸びをした怜子さんが言った。


「神社や石碑の全てが霊験あらかたとは限らないけど、それなりに科学で説明できない事って世の中にあるようですね」

科学が更に進めば魔術も説明できるようになるかもだけど。


どっかのSFの作者が、究極に進んだ科学は魔法と見分けがつかないとかいった感じの事を書いたらしいが、見分けがつかないぐらい進んだ科学なら魔術の説明が出来る様になるかも?


まあ、科学と魔術が見分けがつかなくなっても、ベースになることわりが違ったら説明は永遠に出来ない可能性が高い気もするが。


取り敢えず。

ちゃんと兄貴と怜子さんからお祓い料金を徴収しないとね。


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― 新着の感想 ―
[一言] >高木 怜子 ほう、高木か・・・連君の母方の親戚かな?
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