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計画性も重要だよ?

「へぇぇ、意外と悪く無いよ」

父親のズボンを借りた兄の姿を見てコメントする。


「ちょっとずり落ちそうなんだが、何とか誤魔化せそうだな」

鏡に写った自分の姿を見ながら兄が言う。


「ずり落ちそう??」

「ウエストがダブダブな上に、ちょっと短いからベルトを腰の位置で留めてるんだ」

言われてよく見たら、確かにウエストと股の部分が少し下にずれている感じだ。


「へぇぇ、お父さんとそれ程背が変わらない様に見えるのに、兄貴の方が少し足が長いんだ??」

父親は彼の世代にしては長身で、175センチ程ある。

兄は一応平均身長程度で同じく175センチ程度なのだが、実は兄の方が足が長かったらしい。


しかも太っては見えない父の方が大分とウエスト周りが大きくなっていたとは。

比較的スマートに見えていた父だが、やはり20代の兄とは体型が違ったようだ。


意外。


だがまあ、学生時代の兄のズボンはちんちくりんだったのでそれよりはマシだったのは幸いだった。

大学に入ってからも背が伸びていたんだねぇ。

あまり会わなかったし一緒に遊ぶことも無かったから気が付かなかった。


ただし、残念ながらジャケットは問題外だった。

それ程がっしりしているように見えなかった兄だが、二回りぐらい父より肩周りの寸法が大きいらしく、一番ゆったりとしたジャケットですら両腕をちゃんと通せなかったのだ。


そこまで筋肉モリモリに見えていなかった兄が露骨に父親と体型が違っていてびっくりだ。

母はそこら辺を分かっていたらしく、『こっちのお土産用に貰ったセーターを着て行きなさい』と海外からのお土産で父が知り合いからもらった大きすぎるセーターを出して来た。


フリースのカジュアルな厚手シャツしか無かった兄は有り難くそれを借りていたが・・・意外と実家には服がないものだと驚いた。

まあ、高校時代から体型も着る服も変わったと言う事なのだろうが・・・考えてみたら、私も実家にそれ程服がないので気を付けておいた方が良いかも。

年末年始とかに実家に戻る際に『適当な服を着れば良いや』と身軽に行くと着た切り雀になりかねない。

実家に自分の部屋があるからと言って油断をせず、着れない服は定期的に処分して何があるかはちゃんと把握しておくべきだろう。


「じゃあ、行こうか。

特急に乗り損ねると困るし」

取り敢えず、向こうの駅で着替えなければいけない程ひどい格好では無いので兄を急かしてそのまま家を出る。


「行ってらっしゃ〜い」

瘴気を祓って元気になった母が気楽に手を振りながら送り出してくれた。


「そう言えばさ、向こうで会うその『相棒』って兄貴の彼女?」

怠そうに動きの鈍い兄を急かして何とか予定通りの特急に乗れたので早速尋ねる。

向こうで顔を合わせるのだ。

相手の立場を確認しておかないと気不味い。


「あ〜、そう、かな?」

歯切れ悪く兄が答える。


「かなってなによ、かなって。

付き合ってるの?いないの?」


「いやまあ、気が合うから一緒に行動しているだけで・・・好きだとかって言葉はお互い言ってないぜ」

おい。

何とも良い加減だね。


まあ、一緒にコース外で石碑に激突するようなスピードで滑っているような相手なのだ。

気は合うのだろう。


「やることはやってるの?

それともセフレだから私には関係ないって感じ?」

将来義姉と呼ぶ可能性があるのか、確認は必要だ。


兄が沈黙した。


特に結婚願望が強い訳ではないかもだが、やることやっていたら出来ちゃった婚だってあり得るのだし、相手が結婚したがってはっきりしろと言ってくる可能性だってあるのだ。

しっかり兄のスタンスを知りたい。


とは言え、あまり何も考えていなかったのかな?


「・・・まだ結婚とか、早いだろ」

やがて呻くように兄が答えた。


「出来るだけ長い間スノボを楽しんでいたんだったら結婚と子供はまだかもだけど、女性は27ぐらいで結婚したがる人も多いって話だよ?

それにあんまり遅くなると妊娠しにくくなって、いざ産もうと思ったら出来なくって不妊治療で凄いお金が掛かるかもだし。

あと2、3年でどうするつもりなのか、スタンスを聞かれるか・・・見切りをつけられるかの可能性が高いんじゃない?

ちなみに、相手の女性は何をしている人なの?」

女は計画性のある人間が多いのだ。

何と言っても生物的な時計バイオロジカル・クロックは子供を産む女性の方がシビアだし。

気楽に今を楽しんでいるだけの男にいつまでも付き合うほど将来を考えていない人間は少ないんじゃないだろうか?


まあ、結婚願望や子供の欲しくない人なら一緒に楽しく過ごすだけの関係に満足していて、下手に将来の話なんぞ持ち出したら逃げ出される可能性もあるが。


「あいつもIT企業に勤めていたんだが、ウェブデザイナーとして独立して今はフリーランスで働いているな」

へぇぇ。

どこで出会ったのかとか、どうしてフリーランスになる決心をしたのか等々色々と聞きたいところだが・・・あまり兄はそう言うことを聞いてなさそうな気がする。


まあ、なるようになるか。


そんな事を話つつ諏訪湖のそばの駅に着いたら、まるで周囲に暗雲が立ち込めているかのように瘴気と悪霊まみれな女性が駅のベンチに座っていた。


「うわ〜。

兄貴、私経由で即座に除霊できる伝手があって良かったね」

下手をしたら数週間で取り殺されていたんじゃない、彼女?

一体なんの石碑を壊したんだろ??

どう考えてもただの雪崩れ被害者じゃあないでしょ??



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