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確かに痛いか・・・

「母さんのお祖母さんが陰陽師の家系の娘だったらしいぜ?

イマイチ才能が無かったから借金のカタにどっかの坊ちゃんの愛妾にされそうになって家出して、曾祖父さんと結ばれたんだって話を小さい時に聞いたな。

あれ、凛は聞いて無かったっけ??」

ちょっと驚いたように首を傾げながら兄が教えてくれた。


マジか。

退魔師の話をするか否か、散々悩んだのに!!!


え、じゃあ京都の方の陰陽師系の名家とも血縁関係があったりするの??

まあ、曾祖母さんって事は家出したのが第二次世界大戦前後ぐらいだろうから戦後のどさくさに紛れて関係は綺麗すっぱり断絶している可能性が高そうだから、そのまま放置一択だけど。


「ちょっと聞いてくる」

思わず兄貴を捨てて部屋から駆け出す。


「お母さん、ウチって実は退魔師の血が入ってるって本当?!」

下に駆け込んで尋ねる。


突然の大声に驚いたような顔をされたが、あっさり母が頷いた。

「ええ。

小さい時に言ったでしょ?」


「聞いてない?!」

多分?

記憶にないぞ!!


「あ〜、幼稚園児だったから忘れちゃったかな?

一応霊感があったりしたら苦労するかもって事で話したんだけど、特に何もないみたいだったからその後話題に出てこなかったし、完全に記憶から消えちゃってたかぁ」

肩を竦めながら母が呟いた。


なるほど。

私が幼稚園児ってことは兄は小学生だったから記憶に残ったのかな?


「幼稚園児な時だけじゃなくって思春期とかにも言って欲しかった・・・」


そうすれな15歳で覚醒した時ももうちょっと色々相談できたかも知れなかったのに。

魔力の覚醒って思春期の不安定な時期に起きる事もごく稀にだけどあるんだよ?


「いやぁ、輝が中学の頃に『封じられた力が』とか『俺の右目に悪霊が』とか色々痛い事を言ってたからねぇ。

ちょっと女の子にあれをやってもらいたく無かったの。

何か問題があったら相談してくれるだろうと思っていたし」

母の言葉に思わず乾いた笑いが漏れた。


確かに退魔師の血を引くなんて聞いたら厨二病を拗らせても不思議はないか。

大学生になっても微妙に拗らせてる男子はそこそこいるんだから、中学生じゃあ女子でもやりかねない。


下手に黒歴史を作らなかったことには感謝すべきかな?


「実はさ、私って霊感があるみたいなの。

一緒にハウスシェアしてる子が由緒ある諏訪湖脇の神社の娘さんで、現役の退魔師でね。

才能を見出して色々教えてくれてるところなんだ」


ピッとテレビを消して母が真面目な顔でこちらを向いた。

「本物?」


「うん。

ちょっと兄貴が悪霊を連れてきちゃって家中瘴気だらけだから、祓うね」


パンっと手をたたき、碧にならったそれっぽい祝詞をモゴモゴと唱える。

前世の術ってよっぽど強力な術以外は一般人にとってあまり見応えなかったから、碧にこっち風の退魔師ムーブを教わったんだよねぇ。

やっぱり金を取るなら何かやっているように見せる方がそれっぽくって、クレームも出にくくなるし。


「どう?

肩こりとか疲労が治ってない?」

瘴気を祓って両親に尋ねる。


「おお〜。

本当だ、昨日から肩が凝ってたのって輝のせいだったのね!」

母が嬉しげに首を動かしながら言う。


「流石に一人で悪霊を祓うのはまだ難しいから、兄貴を諏訪神社の方まで連れて行こうかと思うんだけど、明日も大掃除の手伝いをしなくても大丈夫?」

冬は絶対に姿を見せない兄貴と違って、私はいつも年末の大掃除は色々手伝っている。

もしかしたら母が私の労力を年末の大掃除プランの一部として予定に入れているかも知れない。


そうだったらコース外を勝手に滑っていたのが原因な兄貴は、自業自得って事で年初まで我慢してもらおう。


「このまま輝が部屋にいたらまた瘴気が湧いてくるんでしょ?

良いわよ、明日の朝1で行ってきて」

ぷらぷらと手を振って母に言われた。


「了解。

ちなみに、その曾祖母の実家の陰陽師の家ってどこだったの?」


「一応子供に霊感が出たら絢小路家の恭子の血を引く者だって言えば家系図を調べて助けてくれるかも知れないけど、子供を借金のカタに妾として差し出すような家だから最後の手段だと思えって言われたの。

よっぽど嫌な思いでもしたんだろうと思ってあまり聞いてないわ」

肩を竦めながら母が言った。


マジ??

絢小路家ってあの先輩の家??

でも、あの家ってもう退魔師がいないって話だったと思うけど。

曾祖母さんの頃には才能が細っていたから、娘を差し出して資金繰りしようとしていたんかね?


子供を質にってイマイチどう言う流れだったのか分からないけど、険悪なのは十分感じられるね。

退魔師を諦めて一般事業に路線を変えて成功したのかな?

まあ、もしも黒魔術師の才能がある家系なら・・・弱くて退魔に使えない程度の力でも、取引相手を誘導する程度の使い方ぐらいは出来るから戦後のどさくさに紛れて大儲けしたのかも。


「碧の実家は由緒正しい戦国時代の前からあるような神社で、家の人も碧が一人で退魔師として出向かなくて済む事を歓迎してくれてるんだ。

だからまだ見習いだけど、大学を卒業する頃には普通に退魔師として一緒に働くようになると思う」

来年はまだ扶養家族から外さない方が良さそうだなぁ。


でもまあ、あまり嘘をつかないで済みそうでよかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 数年前にシーフ(580部分辺りまで)や他作品を読んでいたのですが、最近こちらをワード検索で見つけてから一気に読んでました。 家族に隠し事を少なく出来そうなのは、精神的に良いですね。 [気に…
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