対応策
中々スリリングな下見を終え、ついでに駅に行く途中の24時間営業のファミレスの場所(とトイレの状態!!)を確認して帰宅した我々は、取り敢えずお茶を飲んで一休みした。
かなりストレスだね、あれ。
あそこに行く時は絶対に!!!碧に作って貰ったG避け結界の魔道具を肌身離さず持ち歩こう。
もしもエレベーターに閉じこめられた際にGが天井から落ちて来たりしたら嫌すぎる。
退治してもエレベーターから救出されるまでGの死骸と一緒なんて言うのも嫌だし。
G避け結界の有効範囲をエレベーターより大きく設定して、最初から視界に入らないようにしたい。
そう言えば。
「もしもエレベーターが止まったり落ち始めた時に、白龍さまってエレベーターシャフトに入るぐらいのサイズに具現化してエレベーターを受け止めたり押し上げたり、出来ます?」
碧の横でぷらぷらと浮かびながら尻尾を源之助に向かって振って遊んでいる白龍さまに尋ねる。
考えてみたらエレベーターが落下し始めた場合、白龍さまに我々を巻き上げて衝撃を相殺して貰うよりもエレベーターの下で具現化してエレベーターそのものを支えて貰う方が確実だ。
もしもそこまでの詳細なサイズ指定が難しいとなるなら、風系の符でも買って落下の際の衝撃を何とかするしかない。
残念ながら、白や黒魔術では落下の衝撃はどうしようもないんだよねぇ。
まあ、碧ならガッツリ自分を肉体強化して落下の衝撃に耐えて、落ちてから私を治療すると言うのは可能そうだが。
出来れば痛い思いをしないで済むのが一番だ。
『うむ。
問題ない』
あっさり白龍さまが応じた。
「本当?!
落ち始めてからでも地階に落下する前に止められる??」
碧もあの恐怖のエレベーターとGと糞塗れな階段とのチョイスに頭が痛いのか、物凄い勢いで振り向いて聞き返す。
『勿論じゃ。
多少あの鉄の箱がひしゃげるかも知れぬが、確実にお主たちがペシャンコになる前に受け止めてみせようぞ』
自信満々に白龍さまが言った。
素晴らしい。
これで究極の選択をしないで済む。
「あ、もしもエレベーターが落ちてキャッチする羽目になった場合は、少し下がりながら受け止める感じでお願いします。
それなりに距離を落ちた後に白龍さまに激突して停止するのでは、地面に落ちるのとあまり違いが無いので。
柔らかくキャッチするよう努力して頂けると幸いです」
まあ、定期点検して大丈夫だと言っているから安全だとは思うけどね。
元々、上から解体していくにしても最初の小さなクレーンはあのエレベーターで上に運び、そこから徐々に大きなクレーンを順番に上へ吊り上げていって必要な工機を上へ持ち込む流れな筈。
そうなるとあのエレベーターが落ちたら話にならないから、最初にあのエレベーター近辺の除霊をしっかりやっておけば問題は起きない筈だ。
多分。
『うむ。
同族の卵をキャッチするかのように丁寧にやろうぞ』
鷹揚に白龍さまが言ってくれた。
だけど。
白龍さまの同族って言ったら龍だよね?
龍族の卵ってめっちゃ硬いって聞いた気がするんだけど。
まあ、鉄で出来たエレベーターをキャッチするんだから龍の卵と同じ扱いでも良いのかな?
「そう言えばあそこら辺って人通りがあまり無いし暗くて変態に襲われかねない場所だったから、不審者が近づいてきたら即座に眠らせたり気絶させられる様に符を準備して手に持って行くことにしよう」
スタンガンでも入手すると言うのも手だが、あれは奪い取られて私たちに使われる可能性だってゼロでは無い。
そう考えると符を使う方が安全だ。
「そうだねぇ。
でも、考えてみたら夜中にあそこから帰るならレンタカーでもしておく必要があるんじゃない?」
碧が指摘する。
確かに。
夕方18時に始めて8時間働いたら終業時に終電はとっくのとうに終わっている。
タクシーを呼んでも来るかどうか怪しいから、車がある方が良さそうだ。
「・・・青木氏にこの依頼が終わるまで私たちが使える社用車が無いか聞いてみない?
レンタカーするよりも青木氏のとこなり他の再開発に参画している会社なりの余っている社用車を使う方が経済的だと思う」
一々日替わりでいつ働くのかを大学の授業とかの予定を勘案して計算し、それに合わせレンタカーするのは面倒だ。
かと言って流石に2ヶ月ちょっとの間レンタカーしっぱなしと言うのも気が引けるので、出来れば古くても構わないから既存の社用車を使わせて貰えるのが一番良い。
「そうだね。車の保険とか費用計上の関係でダメって言われる可能性もあるけど、取り敢えず聞いてみよう。
ついでに近所で2ヶ月ほど借りられる駐車場もあるか、青木さんに聞いておかなきゃ」
不動産屋だもんね。
そこら辺の情報も十分ありそうだ。