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ちょっと色々とホラー

「なんか随分とギシギシと音がするエレベーターですね」

青木氏に教わった通り呼び出しボタンの側にある鍵穴にキーを差し込み、右に回して呼び出したエレベーターだが・・・引越し用に使える一回り大きいサイズの筈なのに薄暗くて妙に圧迫感があって狭苦しい上、上階へ上がるのにギシギシとロープが軋んでいる様な音がする。


「古いですからねぇ。

もうそろそろ寿命なんですけど、ちゃんと定期点検はやっているから大丈夫ですよ。

多分」

にこやかに笑いながら青木氏が応じるが・・・寿命なの?!

しかも多分ってなによ、多分って!?


「これってロープが切れちゃうとか、どっかで止まってしまってエレベーターの中に閉じ込められるとかなんて事にならないですよね・・・?」

碧が微妙そうな顔で聞いた。

契約書にサインする前に現場を見ておくべきだったかも知れない。


「そちらの非常ボタンはちゃんとエレベーターの管理センターの方に繋がるから、閉じ込められても助けはきますので大丈夫ですよ。

流石に地震時に最寄りの階に停まる機能は無いんで、乗っている最中に大地震が起きたら暫く閉じ込められることにはなりますが」

非常ボタンを指差しながら青木氏が言った。

本当にちゃんと繋がっているんだろうねぇ??

まあ、電話番号も書いてあるからもしもの時は携帯で電話したらいいんだろうけど・・・エレベーターの中ってちゃんと携帯が繋がるのかな?


思わず携帯を取り出して確認したら、ちょっと弱い目だったがちゃんと電波は入っているようだった。

良かった。


ガタンと大きく揺れてエレベーターが停まる。

どうやら15階に着いた様だ。


「・・・開きませんね」

15階のボタンについていたランプが消えたのに。

碧が『開』ボタンを押すが何の反応も無し。


「本当に大丈夫なんですか、このエレベーター?!」

碧が焦ってエレベーターの扉を蹴る。


テレビじゃないけど、殴る蹴るで動くとは思わんぞ?

だけど開かないエレベーターの扉って言うのも怖い!!

と思っていたら、扉が開いた。


「ちょっと反応が鈍いんですよね〜、このエレベーター。

でも、いざとなったら管理センターの方から人が来ますから!」

ちょっと空元気っぽい声で青木氏が言いながら、扉を抑えて我々に先に降りる様に身振りしてくれた。


「・・・運動だと思って時間をかけて階段を登る?」

白龍さまってエレベーターの落下事故とかの際に碧(や私)を守れるんだろうか?

まあ、エレベーターを埋めるぐらいのサイズに具現化して我々に巻きついてクッション代わりになってくれたら、落下しても何とかなるかもだけど。


今晩帰ったら聞いてみよう。


青木氏に渡されて試してみた鍵で、ちゃんとエレベーターの正面の家の玄関が開いた。

ディンプルキーより前の普通の鍵だ。

これって簡単にピッキング出来るってテレビでやってなかったっけ?


「考えてみたら、二重ロックにした家はなかったんですか?

受け取った家の鍵は全部同じタイプのを1軒1本でしたが」

碧も疑問に思ったのか青木氏に尋ねていた。


「まあ、ここは泥棒に入ったら呪われるって評判だったんであまり狙われなかったらしいですが、家によっては追加で鍵をつけてましたね。ただ、そういった追加の鍵は再開発に合意頂いた時点から全部解錠したままにしてあるんで、大丈夫な筈です。

もしも入れない所があった場合はご連絡下さい」


そっか。

今更再開発予定の部屋に盗みに入る暇人はいないだろうから、二重鍵にしてあっても施錠していなければいいのか。

流石にこんなホラーな場所を溜まり場や仮宿にする人間もいないだろうし。


しっかし。

泥棒に入ると呪われるって・・・まあ、確かに家の正面も裏も別のマンションから丸見え、日当たりも風の通りも悪いのに債務超過状態になっていて売りたくても売れず鬱々しているところに泥棒なんぞに入られて有金全部盗られたりしたら、首を吊りかねないか。

そうなったら確実に泥棒を呪いそうだ。


人に依頼する呪詛だったら被害者の毛なり爪なり、何か体の一部が必要だが悪霊の呪いはそう言うのが要らないからなぁ。


と言うか、同じマンション内に入った別の泥棒を自分の所に忍び込んだ人間だと決めつけてそいつらを片っ端から呪う可能性もあるし。


確かにこのマンションに盗みに入ったら呪われ率が高そう。


取り敢えず鍵を開けて中に入り、チラッと見て回って終わりにした。

リビングのど真ん中に霊が首からぶら下がってこちらを睨んでいるから、取り敢えずタブレットに部屋番号と悪霊の場所と様子をメモっておいた。


「帰りは階段で降りてみません?」

碧が提案する。


「良いですが・・・大丈夫ですか?」

青木氏が微妙そうな口ぶりで応じた。

やっぱり15階分ってキツイかなぁ?

でも筋肉痛も数日我慢すれば慣れると思うし。


そんな事を言いながら非常階段の扉を開けた碧が物凄い勢いで扉を叩き閉めた。

「エレベーターで行こう。

ちなみにこう言う非常階段ってバ○サンを炊いたりしたら効果あるんでしょうか?」


Gが居たのかな・・・。


「外階段なので、難しいですね。

鳥のフンとかがそれなりに溜まってしまって滑りやすいですし、それを餌にしている虫も多いので階段を使うのはあまりお勧め出来ないんですよ」

済まなそうに青木氏が付け加えた。


マジか。


鳥のフンまみれ(プラスG)な階段か、いつ壊れるか知れないエレベーター。

しまったね。危険手当を要求するべきだった・・・。





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