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再開発

「こう言う大規模な除霊って良くある話なんですか?」

今日は子猫を見に来るついでに昨日のメールにあった霊障鑑定依頼の詳細を話し合おうと青木氏のオフィスに来ている。


ウチらの事務所にとっては初めての本当に大規模な仕事なので、しっかり詳細を確認してから契約したいんだよね。

まあ、碧の年間収入は去年も大学受験があったにも関わらず150万円ちょっとだったらしいけど。

藤山家の『ノルマ』案件って変な交換条件を付ける羽目にならなければ一つ50万円近くになる事も珍しく無いらしいんで、受験がなければもっと案件をこなして収入が増えていたかもと碧は言っていた。


なので今年はもっとガンガン稼ごうかとも考えていたらしいのだが、源之助を迎えてから『金銭欲が減った』との事で、除霊も頼まれなければ行かなくなった事で収入が思ったより増えなかったらしい。


学生で年収150万円とは凄すぎる。

それこそ絢小路先輩が聞いたらへばりついて離れなくなりそうだ。


碧の質問に青木氏が肩を竦めた。

「う〜ん、これって大元が微妙な物件なんですよ。

日照権がまだいい加減だった頃に建てたマンションが3つ並んでいる感じでね、特に真ん中のは大通りに面したマンションの南側に建てて日照を奪い取ったと思ったらほんの数年後に更に南にマンションが建っていったせいで日当たりも風通しも悪くなって、資産価値が暴落したマンションなんです。

バブルの終わり近くに建ったやつだから暴落具合も大きかったしで、文字通り首をつっちゃった人もそれなりにいたし、急いで建てたから豪華な金のかかる共有設備がある癖に手抜き工事も多いしで、ある意味『最悪なマンション』として有名だったんだ。

お陰でまだ築30年も経っていないぐらいなんだけど持ち主も分からないような幽霊部屋も多かったし、管理費も修繕積立金もちゃんと集まらないしでもう絶望的で。

結局、諸悪の根源とも言える並びの2つも一緒に纏めて再開発する事になってね。

かなりお洒落な場所に生まれ変わると言われているんですよ」


微妙に答えになっていない返事が返ってきた。


「つまり?」

子猫達から目を離した碧が青木氏の方へ向いてじっと注視する。


諦めた様に青木氏が溜め息を吐いた。

「まあ、滅多に無いぐらい霊障付き物件が多いのが分かっている案件でねぇ。

流石に都心で近くに学校とかもあるし人通りも多いから爆破解体は出来ないんだけど、除霊するまで絶対に解体を請けないって真面な業者がどこもかしこも断ったせいで大規模な除霊を頼む事になったんです。

つまり。

戸建てならまだしも、マンションの建て替えで建物全部を除霊するなんて言うのは滅多にないですね」


「・・・私たちへの依頼は霊障付きな部屋がどこかの調査ですよね?

別に霊障があるか否かの結果で報酬が変わる訳ではなく?」

思わず青木氏に確認する。


以前、霊障付きな方が確認するのに掛かる時間が少ないって言ったよね?

何で霊障が多すぎる案件だと私たちが嫌がると思っているんだろ??


「ええ。

流石に全部が全部霊障付きって訳じゃないですから。1フロアに1件でも、退魔協会に依頼しなくて済む部屋があればペイするって事で是非ともお願い出来ないかって話になったんです」

青木氏が頷く。


「時間的制約はどの程度なんでしょう?

流石に数が多いから我々の学生生活に差し支えかねないし、取り掛かっている間にもしも退魔協会から半強制的な大規模案件の依頼が来た場合にはそちらも請けない訳にはいかないですし」

碧が尋ねる。


そうなんだよねぇ。

大きな案件って事は失敗した時に『てへぺろ』で済まない話になる。

そうなると中々リスクが高いのだが。


「3件全部の買い取りが確定しないと再開発出来ないって事で遅れに遅れた案件ですからね〜。

流石にいい加減早く動きたいところでしょうが、欲を張ってゴネていた持ち主の説得とかに掛かる時間が読めていなかったから、まだ全部の業者を押さえられていない様です。だから3月末までに全部終って4月から解体と諸々の作業に取り掛かれれば良いって感じかな?」

青木氏が顎を摩りながら答えた。


おいおい。

随分と呑気だね。


大型案件ってそんなものなの??


私は想定外にゆっくりな期日に呆気に取られたが、碧は難しそうな顔をして考え込んだ。

「その3月って退魔協会の除霊も含めてですか?」


おっとぉ。

確かにそれは微妙だね。

退魔協会がどの位のペースで退魔出来るかなんてウチらには分からないんだし。


ある意味、3月まであるならサーチ・アンド・デストロイでウチらがチェックして見つけ次第除霊していっちゃうのが一番効率的なんだけど、流石にそんな大きな案件を個人で割安に受けたら協会に睨まれるだろうし、金額が大きくなるだけに後で企業側にごねられそうで怖いしねぇ。


青木氏が申し訳なさそうに頷いた。


「じゃあ、3つに分けて5階ずつ上から確認して行きましょう。

最初の5階はどんな感じになるかを確認する必要もあるので12月15日まで、残りの10階は5階毎に1ヶ月ずつみて1月15日と2月15日に期日を切ってやりましょう。

我々が終わった部分から退魔協会に依頼を出していけば、それなりに間に合いません?」

碧が提案する。

全部を1月2週目ぐらいと考えていたのに比べると、大分と余裕が出来そう。


「う〜ん、たしかに下層階の方が霊障が少ない気はしますが、流石に2月半ばじゃあ厳しそうですね。最後の5階は1月末迄でお願い出来ないですか?」

青木氏が渋る。


「では、最後の5階は急ぎという事で1件2万円でどうでしょう?」

おお〜。

2万円で50部屋って言ったらそれだけで100万円じゃん。


不動産開発って金がかかるんだね!!!




そろそろカクヨムの投稿に追いついてきたので、あるから1日1回昼12時の投稿に変わります。

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