表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/1361

いざ出陣

「今日は私がやるね!」

ワクワクと嬉しげにショルダーバッグを軽く叩きながら碧が言った。


今日はサバゲー除霊をやる予定だ。

程々格好良く、かつ露骨にオモチャで碧が持っていても『近所の子へのお土産』で済む水鉄砲は既に2つ入手してある。


私はまだ効率的に水に除霊の術を移すのに成功していないが、碧は水に魔力を込めれば聖水化(?)する。それを使っての除霊はこれが初めてだが、多分上手くいくはず。


一応ベランダでこっそり外から見えない様にしゃがみ込んで水鉄砲を撃つ練習もしている。

動く的に当たるかは乞うご期待と言ったところだが、碧曰く水鉄砲もFPSのシューティングもそれほど違わないらしいので大丈夫だろう。

多分。


私の場合は魔力を水に込めても霊に対する特効はあまりないからなぁ。

多分痛みは感じるだろうからヘイトは稼げるだろうが倒せるかと言うとちょっと怪しい。

水鉄砲でBB弾でも飛ばせるならそっちに術を込めるのもありかなぁとも思うが、かなりの数の弾を外すだろうことを考えると普通に悪霊に向かって術をかける方が早いし無駄にならない。


それに除霊した後に真新しいBB弾が散らばっていたりしたら顰蹙だ。かと言って拾い集めるのは大変そうだし。

水鉄砲の水だったらそれほど目立たないし依頼主が確認に来る頃には乾いているだろうから、水鉄砲でなんとか出来る方が良い。

と言う事で今日は碧が主体になって除霊する予定なのだ。


「今日の場所も病院なの?」

碧の後を着いて行きながら尋ねる。

今回の依頼は碧が『ちょっと多数の霊がいるケースの除霊を練習したいので、大規模除霊に近いのを』と退魔協会に言って利益度外視でいいって言って請けたやつなんだよねぇ。

ちらっと場所は見たが、碧が昨日からワクワクしながら『私がやるから〜』と言っていたので詳細は読んでいないのだ。


「うんにゃ、廃工場。

廃業してから放置していたら地域の暴走族の溜まり場になって色々悪いことをしていたら悪い気が溜まり始めた場所で、暴走族同士の闘争が起きて何人か死んだら一気に悪霊の溜まり場に変化したんだってさ」

特急乗り場の方へ足をすすめながら碧が答える。

最寄りの特急停車駅からレンタカーで行く事になっているんだが・・・暴走族が溜まり場にしていた廃工場かぁ。


だったらBB弾が転がっていても目立た無かったかも。

まあ、もう手遅れだけどね。

私の魔力を込めた水鉄砲で水を掛けたらどうなるかも一応確認してから考えよう。

これから碧がもっとサバゲー除霊をやりたがるようだったら私も参加出来るようなんとか考えないと。


とは言え、『訓練用』って言い訳がいつまでも使えるとも思えないが。

どうするんだろうね?

大量に除霊すると興奮するんです〜みたいな特殊な性癖をでっち上げるとか?

流石に白龍さまが霊を食べたいからなんて嘘をついたら怒られるだろうし。


それとも暴走族とかの溜まり場的な場所が悪霊の吹き溜まりになりやすいんだったら、ちょっと割安に請けると言えばそれなりに需要は沢山あるのだろうか。

最近は海外の人件費高騰や安全保障の問題とかで国内に製造業が戻りつつあるって聞くし。


とは言え、今の日本じゃあ田舎の工場で働く人間を探すのは大変だろう。

オートメーションで出来る限り人員を削るにしても、人の手はある程度は必要なんだし。


そんな事を考えながら辿り着いた廃工場は雑草・・・と言うかほぼ山に侵食された敷地の中に焦げたタイヤがちょこちょこと積み上げてある微妙な敷地だった。

そこそこメジャーな峠道から入って直ぐにあるので暴走族が楽しむのに良い場所だったのかも知れないが・・・山に侵食されつつあって植物が沢山生えているのに、空気に新鮮さが全然無い鬱屈とした場所だった。


「う〜ん、ホラーゲームのシーンみたいだねぇ。

がばっと一気に敷地の空気を良くしちゃいたいけど、それをやったら元も子もないないよねぇ・・・」

ちょっと辟易とした様子で周りを見回しながら碧が溜め息を吐く。


「悪霊の溜まり場って埃っぽいと言うか空気がイガイガすると言うか、こんな感じになるんだねぇ。

前回は建物の中だったからカビのせいかと思っていたけど、悪霊のせいで空気が悪くなっているんだね」

前世では、悪霊が沢山いる場合は確実に他のアンデッドもいた為、一番多く出回るゾンビの悪臭が多少の『空気の悪さ』なんぞ覆い尽くしていたから悪霊の空気への影響に気が付かなかった。


「マスクに浄化の術を掛けたらいいかな?」

碧が呟きながらマスクに術を掛ける。

まあ、最後にサバゲーが終わったら敷地の全体的な浄化をしてあげたら良いかもね〜。


「そんじゃあ、碧、行きま〜す!」

楽しげに声を上げて碧が中に突っ込んで行った。


おいおい、待ってよ〜。

この敷地内にいる悪霊全部が一気に碧を奇襲したところで負けないとは思うけど、夢中になって転んで頭を打ったりしたら不味いから、着いていきますか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ