愛が溢れてるよ
「はい、ラミネートした名刺サイズの念話魔道具。
初心者用フィルターが付いてないから慣れるまでは雑念が漏れると思うけど、話しかける感じで魔力を込めて念を飛ばす様、やってみて」
眠気覚ましや虫除け魔道具は後回しにして、まずは念話魔道具のラミネート版を作成し、ソファで源之助と遊んでいた碧に渡す。
『どう?
聞こえる?
(あぁ、源之助の足先が可愛い過ぎる〜!
プニプニしたい!!』
源之助と遊んでいるせいか、雑念が漏れまくりだが・・・まあ、これならそれ程気にならないかな?
ある意味、源之助への愛が溢れ出ない程度まで念話をマスター出来れば友情にヒビが入るような本音の漏洩も防げるだろう。
多分。
ストレスがかかっている状況ではあまり使わない方が良いだろうが。
『聞こえるけど、源之助の足をプニプニしたいと言う想いも漏れてるよ』
返事をしながら答える。
『こんな感じに伝わったね』
碧から伝わってきた念話の記憶を返す。
漏れてきた漠然とした想いとかの記憶は薄れやすいが、流石に数秒前のだったらちゃんと残っているので例示出来る。
『おお〜。
そう言う感じに伝わるんだ。
昨日のはどうだったの?
(あらま。漏れてるね〜。
でも源之助が可愛すぎるからなのよん〜)』
さっきよりちょっと想いのボリュームが下がったが、やはり余計な想いが漏れてきている。
『昨日のは初心者用フィルター付きだったからね。
伝えようと思っている意思だけをピックアップする様になっていたから普通の会話と殆ど違いが無かったかな。
今はまだ源之助への愛が漏れてるねぇ。
こう、全般的に魔道具へ魔力を通すんじゃなくって、言いたい言葉に魔力を乗せるようなイメージをできる?』
元々、念話と言う意思を伝える為の魔道具なので関係ない想いを除外するのはそれ程難しく無いのだが、ラミネートされていると魔法陣の特定の部分に優先して魔力を通すのが難しく、自力で伝えたい意思だけに魔力を乗せる様に使用者側で雑念をフィルターする必要がある。
まあ、慣れれば何とかなる筈だけどね。
『うう〜ん、これでどう?!
(源之助のお腹をクンカクンカしたい)』
頑張ったせいか伝えたい想いがシャウトになり、雑念は小さくなったものの伝わって来る。
猫のお腹に顔をつけて息を吸いたい気持ちは分かるけどね〜。
お腹周りは急所なせいか、碧にすらやらせてくれないんだよねぇ。
それでも、碧なら撫でるのは許容しているが。
私ではお腹周りのブラッシングすら駄目。
起きない碧の代わりに毎日早朝に叩き起こすくせに。
まあ、もうそろそろ大人になって早起きしなくなるかな〜と期待しているんだけどね。
『伝える想いがシャウトされちゃってきつい上に、お腹辺でクンカクンカと言う欲望が漏れてるぞ〜。
う〜ん、魔力を込めたペンでメッセージを書く様な感じはどうかな?』
どう言うイメージがやりやすいかは個人差があるのだが、取り敢えず色々と一通り試してもらうしか無いだろう。
『文 字 を 書 く 感 じ ね』
お。
ちょっとゆっくりになったが雑念が混じらずにちゃんと伝わって来た。
『良い感じ〜。
慣れたらもっと早く出来る様になるだろうから、頑張ってね』
『う っ し!
練 習 あ る の み!』
さて。
碧の念話練習に付き合うのは片手間でも出来るから、何か便利な魔道具を作ってみよう。
私が作れるのって言ったら・・・自分用だったら眠気覚ましかな?
睡眠効果のある効果音でも流しているのかと思うほど眠くなる講義の最中に自分に覚醒用の術を掛けるより、眠くなると分かっている授業へ行く前に『90分間は眠くならない術』を起動出来る魔道具がある方が便利だろう。
多分。
人避けとか痴漢退治とかの魔道具も作れるけど売るのは難しいからなぁ。
キリッとした美人の碧も電車で痴漢に狙われるタイプじゃないし。
魔石を使わず雑草の魔力が切れるまでの使い捨てだったら、実質お守りと同じだよなぁ。
とは言え、痴漢退治とか眠気覚ましのお守りなんてイマイチ売りに出せない気がする。
取り敢えず。
碧が念話に慣れたら虫除け系の魔道具(お守り?)を作って貰おう!