魔道具もあまり要らない?
「考えてみたら、診察券とか会員券ってラミネートされてるじゃん?
あのサイズと薄さに出来れば、夏服でも持ち運べそう」
碧がタブレットを取り出しながら言った。
「そう言えばそうだね。
しっかりラミネートフィルムで固定されているなら聖域の雑草がずれないように工夫する必要も無いし」
今回の試作品は糊で留めたのだが、それも必要なくなるなら作る際の手間も減る。
とは言え、一度ラミネートしたら剥がして雑草を入れ替える訳にはいかないだろうから使い捨て魔道具となるが。
それとも聖域の雑草は何回か魔力を充填出来るかな?
「お、あった!
名刺とか診察券サイズのラミネートフィルムは色々売られているみたい」
碧がウェブサイトでの検索結果を見せてくれた。
「おお〜。
お手軽だね!
念話の魔道具がそれ程大量に要るかは微妙だけど、何か他の小さな魔道具を作るのにも良いかも」
前世ではラミネートフィルムの様な紙を固定化する便利な道具がなかったので、魔法陣には基本的に魔物の皮か薄い金属板を使っていた。
だが、ラミネートフィルムで強化できるなら碧が提供してくれる和紙のように魔力が篭った紙を使った魔道具の開発も可能そうだ。
「他の魔道具って?」
碧が少し首を傾げながら尋ねた。
「・・・なんだろ?
ちょっとした人避け結界とか、虫除け結界?」
ランプとか掃除機とかは魔石がないと流石に動力がもたない。
そして今世では便利な機械があるから魔道具で灯りや掃除道具を作る必要は無い。
「う〜ん。
虫除けは良いけど、人避け結界の魔道具なんて下手に作って置いといたのを誰かに見つけられると不味く無い?
和紙に描いた符なら退魔協会に売ってるけど、再充填できる様な魔道具を利に聡い人間に拾われたら面倒な事になるかもよ?」
碧がちょっと顔を顰めながら言った。
そう言えば、魔道具ってこちらでは家宝扱いなんだっけ?
「でも、符と魔道具ってそこまで違いはないよ?
基本的に符に魔力を込めるか、取り外しのできる魔石を動力源にするかの違いなだけだから。
この世界でも魔石があったらいくらでも魔道具が作れたと思う。
今回の『魔道具』は、雑草を使ったちょっと長期に使える符って感じなだけだし。
それに現代だと魔道具よりも普通に便利な道具があるから必要もあまり無いしね」
下水処理の魔道具とか、トイレの臭い消しの魔道具とか、ちょっとしたホッカイロみたいな暖房用魔道具とか。
前世では必須だったが今世では普通に便利な代替品がある。
暑い最中に熱を吸収して涼しくなる魔道具は便利だったが、今だったらエアコンや冷えピタや携帯型扇風機やら色々あるし。
G避け結界は魔道具化して碧に複数作ってもらって持ち運んだり、留守中に結界が消えない様にするための予防手段としてあっても良いかもだけど。
「そっかぁ。
魔道具って符とあまり違いが無いのか・・・」
碧が気が抜けた様に呟いた。
「とは言え。
Gやダニ避け結界を魔道具化して持ち歩くのは良いかも知れないと思わん?」
どこでGが忍び寄って来るか、分かったものではない。
結界で近寄れない様に出来るならしたい。
あとは・・・日本人は基本的に清潔だけど、時折そこそこ強烈に汗臭かったり黴臭かったりする人もいるからなぁ。
消臭魔道具もありかも。
いや、でも私が作れる消臭魔道具って悪臭を認知しなくなるだけだ。実際に臭いを消す消臭魔道具は風の魔術適性が無いと作れない。
悪臭が気にならなくなるのはありがたい時もあるが、下手をしたら悪臭に気付かないでそこに留まって臭いが移る可能性があるから、自分が悪臭を認知しなくなるだけの消臭魔道具は危険だな。
碧だったら悪臭がたたなくなる殺菌の魔道具を作れるかもだが、あれは既に臭くなっている人に対してはあまり役に立たない。
清潔化の術の魔道具も可能だろうが、あれは起動時にそれなりに派手に発光するからねぇ。
やはり一番役に立ちそうなのは虫除け魔道具かな?
後は眠気覚ましの魔道具も良いかも知れない。
魔道具を安全に世間一般に売れたらネットで大量び売り捌いてボロ儲けできそうなのに、残念だ・・・。
でもまあ、眠気覚ましの魔道具はお守りの形で売れないかな?
どう言う名称にしようかね?