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人生って成功すると危険が一杯?

「おやま」

夕方にきたメールを開いて、思わず目が丸くなった。


『豊橋氏が呪詛を受けた疑いが濃厚。

呪詛返しの依頼を受けて頂けるだろうか?』

言い回しはもっとビジネス用語だったが、基本的な内容はこれ。

こないだは毒を盛られ、今度は呪詛ね。


人生って成功すると色々と危険が一杯なんだね。

もうそろそろ人生の終わりだろうに、なんで今頃になって次から次へと襲われるんだろ?


どうせ寿命でもう直ぐ死ぬだろうから、それをちょっと後押ししても構わないだろうとでも思われてるのかね?


それとも若い頃に協力してくれて居たトラブルシューターがリタイアしちゃったとか?


まあ、爺さんの状況は置いておいて、取り敢えずはまず碧と相談だね。


「碧〜。

ギフトカタログの豊橋氏が呪詛を受けたらしくて、秘書から指名依頼してもいい〜?ってメールが来たんだけど」

テレビに向かって西日本あたりの前線を指している天気予報お兄さんのポインターっぽい棒をパシパシ叩こうとしている源之助を見守っている(天気予報もついでに見ているんだろうけど)碧に声をかける。


「マジ?

あの爺さんは踏んだり蹴ったりね。

護衛のプロでも雇った方が良いんじゃない?」

碧が振り向かずに言った。


護衛と言うよりも暗殺防止の専門家みたいのが必要だよねぇ。

流石に銃撃とかナイフで刺すような肉体的な攻撃は少ないだろうから。


「今までそう言うのに狙われなかったのかね?

それとももうそろそろ寿命だと思ってサービスを切っちゃったのかな?」


「ええ〜?

却って老人の方が『死』を身近に感じて命にしがみ付く事が多いから、寿命だと思って契約更新を止める人ってあまり居ないって聞くけどねぇ。

まあ、それはともかく。

ウチらの事務所を指名して依頼してもらったら?

私より凛の方が呪詛返しは得意じゃん?」

元気にパシっと飛びついてテレビを叩いた源之助のショットを携帯カメラでキャプチャーしながら碧が提案する。


確かに。

私の名前での指名依頼はちょっと退魔協会に違和感を持たれたそうだ。

かと言って、碧も私用の依頼を自分の名で請けるのは嫌だろう。


「分かった。

そう伝えておくね」


◆◆◆


前回の紙人形とは違って、今回退魔協会から送られてきた送迎用の車は普通の高級車だった。

外が見えない黒塗りガラスって圧迫感があるから、普通ので良かったよ。

場所が鎌倉だったので電車で最寄駅まで行くかとも考えたんだけど、検索してみたところ乗り換えや駅での待ち合わせとかを考えるとウチまで迎えに来てもらっても時間はほぼ同じか早いと言う結論になったので最初から車だ。


つうか、鎌倉に住んでいる人間がなんで東京の病院に入院していたんだ?

ど田舎の町医者ならまだしも、鎌倉程度の大きな街の大病院だったらそれ程腕に違いは無いと思うが。

大学病院の方が研究が進んでいると思われたのかね?

毒を盛られたのは解明出来ていなかったようだけど。

異常の原因が分かっていないと、大学病院もそれ程腕が良いとは限らないんだね。


「そう言えば、偉い人が呪われたり毒を盛られたりする確率って日本でもそれなりに高いの?」

車についていた飲み物とかエンターテイメント・システムを確認し終わり、暇だったのでふと碧に尋ねてみる。

女子大生の碧がどこまで知っているかは不明だが、業界にはそれなりに詳しいっぽいから私よりは知っているだろう。


ちなみに前世では王族の暗殺対策は当然の常識だった。

白魔術師が居ても、即死するような毒だったら助からないので毒味もしていたし。

即死さえしなければ大抵は大丈夫なので冷める前にちゃんと食べられていたからあいつらは毒味があってもそれ程苦労はしていなかったけどね。

基本的に権力を持つ層にとっての『邪魔な人間』って、暗殺する方が正当な手段で相手を排除するのよりも安上がりな事が多いんだよねぇ。


前世だったらより権力のある王族や宰相への献金、今世だったら株式の買い占めとか政治家の買収・・・は一応正当じゃないから献金とロビー活動ってところかな?


暗殺や呪詛で邪魔な人間を排除できるならその方が早いし安いが、安易にそう言う手段に出ると自分も狙われかね無い。

多分。


豊かになって牙が抜け、新しい開発も海外に遅れがちになってきた日本にそこまでハングリー精神が残っているんかね?


「う〜ん、毒についてはよく知らないけど、呪詛は退魔協会の事を知らないような若い成り上がりタイプだけかな?

あの爺さんみたいに成功して長い人だったら退魔協会の事を知っているから、呪っても呪詛返しされる事が多いだろうし、今回は嫌がらせかもね。

まあ、協会に碌なツテが無くて上手く呪詛返し出来ないとか、呪詛だと気づく前に手遅れになるとかを期待した可能性はあるけど。

老人になったら体調ってそれなりに悪くなるから単なる加齢の症状なのか呪詛なのか分かりにくくて、うっかり見過ごして手遅れになる事もあるらしいよ」

碧がちょっと首を傾げながら答えた。


なるほど。

碧がこないだ体調を全快状態にしたから呪詛だと早く気付いたのかもなのか。


毒を盛られたせいで回り回って命が助かるのかもって不思議なもんだね。



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