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誰だバラしたの?!

「頼む!

値引き交渉に手を貸してくれるよう、藤山を説得するのに協力してくれ!!」

サークルに来ても大丈夫だと態々教わったので久しぶりに部室に来た私は、絢小路と思われる先輩らしき男に捕まっていた。


失敗した。

私はまだしも、碧の家はそれなりに退魔業界では名の知られた旧家なのだ。

退魔師になろうとしている絢小路が碧の家の事を耳にする可能性を考えておくべきだった。


でもまあ、碧に弟子入りしたいと言って来ないだけマシだが。

そこまで恥知らずじゃないのか、それとも碧本人が退魔師だと知らないのか。

場合によっては部室にいる人間全員の記憶を消す必要が出てきた。


来るんじゃなかった〜〜〜!!!


「誰ですか、あなた?」

まずは赤の他人だと言うことを強調する為、名を尋ねる。


「ああっとぉ、絢小路 拓磨だ。

今度退魔師になる修行を始める事になったんだが、弟子入りの礼金がちょっと高くてね。

なんとか資金をやりくりしようとしているんだが・・・実は諏訪神社の宮司家は退魔師の業界で有名な旧家だと聞いたんで、ちょっと藤山さんに値引き交渉に協力をお願いしたいと思ってね。

君って彼女と仲がいいんだろ?」

一歩下がって前のめりだった体勢を少し直し、髪の毛を撫でつけながら絢小路が改めて自己紹介しながら自分の要求を繰り返した。


流石に頼み事をする予定の、よく知りもしない女性を後輩だからと呼び捨てするのは不味いと気付いたのか今度はさん付けになっていた。

・・・でも私の名前は覚えていないっぽい?


そこそこお洒落で見た目も整った、ある意味ウチの大学でよく見る典型的なお坊ちゃんという感じの男だ。

祝賀会で見た連中よりは2ランクぐらい下がる感じかなぁ。色んな面で。

実際に除霊をするようになるとこのふわっとした感じが落ち着くのだろうか?

ちょっと自分の弟子に取ろうとは思わないタイプだが・・・大丈夫なのかね?


それはさておき。

どうやら碧個人が白龍さまの愛し子だと言う情報は聞いてないらしい。

退魔協会に『個人情報をしっかり守る』と言うイメージが無かったので意外だが、思ったよりは状況は悪くないようだ。

これなら煙に巻いて誤魔化せるかな?


「ええっとぉ・・・諏訪神社って全国に何千か所もあるんですよ?

碧の実家は関係ないと思いますが。

夏休みに皆で合宿に行った時に泊めてもらいましたが、退魔師とか陰陽師の先祖の話も、それらしい遺産もありませんでしたし。

ねぇ?」

近くにいた同期に声を掛ける。

彼女も合宿に来ていたし、絢小路の行動にドン引きしているようなので説得に協力してくれると期待しよう。


「そうですよ先輩、藤山さんの実家は普通の神社でした。

第一、連絡先も知らない人の頼みで口を聞いてもらったら減額して貰えるような礼金なんでしたら、先輩の親戚に頼んだ方がよくありませんか?

先輩の家は正真正銘の陰陽師の家系なんだそうですし」

チクリと嫌味を込めて同期が口添えする。

どうやら彼女も今回の騒動を起こした絢小路に思うところがあるようだ。


「日舞とか茶道って弟子入りとかお稽古の金額をあまりはっきりと言わないそうですし、プライドが高いから例え経営が苦しくても減額交渉なんてするぐらいだったら来なくて良いって突っぱねるって聞きましたが・・・大丈夫なんですか、減額交渉なんてものに関係ない人まで巻き込んで?

神社ってそれなりに横のつながりがあるって聞きますから、もしかしたら彼女の実家の知り合いの知り合いの知り合いぐらいが絢小路さんの弟子入り先の事を知っているかも知れませんが、そんな伝手を探す為に神社関係の不特定多数の人たちに絢小路さんが師匠に払うお金が高すぎると思っているって知れ渡ったら不味くありません?」

実際に減額交渉が禁忌かどうかは知らないが、取り敢えず適当な事を言って脅しておく。

と言うか、旧家出身なら親戚関係で誰か頼れ!!


『減額交渉=そこまでお金を払う価値があると思っていない』と言う印象を与えると思っていなかったのか、絢小路の顔色が悪くなった。


「そうか。

諏訪湖脇の諏訪神社は有名だってどこかで聞いていたんで、さっきサークルでその神社の娘さんが仲間に居るって聞いて頼れると思い込んでしまったんだが・・・考えてみたら諏訪神社なんだから諏訪湖の周りにも複数ありそうだよな。

師匠との交渉をあまり公にするのも良くないだろうし。

今日は変な頼み事をして済まなかった」

お。

潔く諦めてくれそうだ。


「ちなみに、ご両親は先輩が退魔師になるのに反対なんですか?」

この時点で内定を貰っていないとしたら就職浪人する羽目になると思うが。

大学卒業時に就職できていないでフリーター生活を始めちゃったら、社会人生活は厳しいものになるじゃないの?


「両親は一族の会社に入れって言うばかりで全く何も協力してくれないんだ」

溜め息を吐きながら絢小路が答える。

おい。

会社持ちな一族なのかよ。


そんな金持ちなんだったら人からカンパを募るな。

例え子供の頃からのお小遣いを全部使い切っていたにしても、親戚の誰かに金を借りれば良いじゃん!!


「ちなみに、退魔師の収入ってどのくらいになるんですか?」

金持ちな一族の息子だったら親戚か地元の貸金業者とかが金を貸してくれるだろうが・・・収入と支出をちゃんと把握してるんかね、この人?


「うん?

最初は見習いだから収入は殆ど無いと聞くが・・・重要なのは、超常の術を学ぶことだろう?」

なんかガキみたいな事をほざく先輩に、思わずドン引き。


隣の同期もドン引きしていたが、部室にいた男子生徒の半数近くが同意するように頷いていたのには更にドン引きだよ!!!





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