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夢送り

「そんじゃあ、いくよ〜」

40枚程の血判つき誓約書を前に、魔力で夢送りの魔法陣を描いて起動する。

夢は早朝の目覚め直前の方が記憶に残る。

だから朝1を狙ったのだが・・犬の散歩とかで早起きする人も居るかもと碧に指摘されたせいで5時起きだ。

まあ、指摘した碧も興味があると言う事で見物の為に頑張って早起きしてコーヒーを飲んでいるけど。


送る夢のイメージは既に纏めてある。

元々、夢や幻覚はそれなりに方向性を与えれば詳細は対象者が勝手に補足するので、詳しい内容は必要ない。

と言うか、大雑把な方が本人のイメージで足りない分を埋めるのでより本人にとって信頼性が高い映像になるのだ。


と言う事で、自筆で書いた誓約書の言葉に『少し汚れが付いている自分の魂』のイメージを付け加えて夢に送り込むだけで、それっぽい幸先の悪い来世に繋がりかねない自分の魂の夢を見る事になる。


しかも自分の血(多分)で血判を押した人が意外と多かったので殆ど私の魔力によるプッシュも必要なく、フワッと膨らませた夢がす〜っと自分の血まで戻っていくのを軽〜く押すだけで終わりだ。


危機管理意識が足りないと言うか、素直と言うか。

こちらが要求した事とは言え、呪詛とかの対策も担う退魔協会の関係者があっさり自分の血を提供するのはちょっとどうなの?とも思う。


それはさておき。

「これで終わり?

ちょっと一瞬力が流れ込んだだけだったけど??」

碧が目を丸くして詰問してきた。


「夢送りは簡単な術だからねぇ。

本格的な呪術とかじゃ無いし。

自筆で血判まであるし本人の意識にも残っているんだもの、この程度でちゃんと夢をみる筈だよ」

退魔協会から送られてきた誓約書のうち8割はちゃんと赤インクではなく血を使っていた。

だからこれらは簡単だ。


「自筆で書いた内容をなぞった夢だからね。

流石に何度も繰り返しやろうと思ったらもっとガッツリ魔力が必要だけど、1回きりだし」


「確かに血に残っていた力が消えてる〜。

考えてみたら抜け毛とかで呪いだって掛けられるんだから、血判なんて危険極まりないよね」

術の終わった誓約書を手に取ってじっくり見ながら碧が言った。


「まあ、本人以外の血を使っていたらどこに夢が行ったか知らないけど、そんな用心深い人はあまりいないだろうからこれでいいでしょ」

残りの血判付き誓約書を手に取り、作業を繰り返す。


「ちなみにさぁ、こんなことして良いの?

100人に夢を送り込める能力があるなんて知られたらそれなりに悪用されそうじゃない?」

碧がコーヒーに口を付けながら心配そうに尋ねた。


「誓約書なんて書いたから夢を見たと思うだろうし、お互いに夢の話をして皆がみたと気がついても今回は白龍さまの警告だと思うんじゃない?」

と言うか、白龍さまの警告だと思ってくれる方が信頼性が高まって良い。


下っ端には碧(と私)に退魔協会のお偉いさんと政治家の先生が手を出したなんて話をしていないだろうから単なる偶然だと思う可能性が高いが、お偉いさんは勝手に警告だと認識してくれるだろう。


「で、こちらは血判に赤インクを使っている方ね。

流石に偉くなる人間は用心深いのか、退魔協会のお偉いさんは殆ど全員こっちだね」

自筆で書いたのが15枚。

こっちは血の魔力を使えないので私の魔力で送る為、5枚ずつ術を行使する。


残りの5枚は誓約書の本文も自筆で書いていない。

願わくは署名は自分でやったと期待して、こちらは1枚ずつ署名の痕跡へ白龍さまに手伝って貰いつつ送る。

私一人の魔力でも送れるが、こいつらは悪事に手を染める可能性が高いので、より強く脅すのに白龍さまも協力してくれると言って貰えたのだ。


「さて。

こちらはゴリ押し」

署名だけ自筆のを手に取り、署名者に繋ぐよう魔力を練りながら夢の詳細も含めて魔法陣を描いたら、白龍さまがふいっと息を吹きつけてくれた。


「おお〜」

鮮やかに光りながら魔法陣が燃え上がり、消えた。


『ふむ。

こんな感じに夢を送れるのか。

でりけーとで面白いの』

白龍さまが楽しげにコメントした。


「そうですね。

しっかり夢が記憶に焼き付くでしょうから、今後は悪事をする度に夢に見るかも知れませんね。

ふふふ」

人間の良心と言うのは、普段意識していなくて無視していても存在はする。

悪事を悪事と思わないような人間でも、社会人として組織の中で生きていけるだけ擬態可能なのだったら何が社会的通念として悪事かは分かってやっているので、悪事をする度にこの夢を思い出す可能性も高いだろう。


「さて、最後は江藤だね。

諸悪の根源の癖に、自分で署名すらしないなんて図々しい」

江藤は署名すら自分でしていなかったが、本人と会っているので一回程度の夢送りならゴリ押しで送れる。

他の連中も署名が本人じゃない可能性もあるが、何分相手を知らないので確かめようが無いからそっちは署名者は本人であると期待している。

まあ、最悪書いたのが秘書だったとしても、夢のせいで悪事に加担したらヤバいと思ってくれたら内部告発でもするかも知れないし。


別に江藤の誓約書を送れとは指定していなかったのだが、流石に謝って天罰を撤回して貰うのに要求された行動を本人がしないのは不味いと思ったのだろうか?

ギックリ腰で出社できなくても彼の名前のを送ってきているが・・・他人が書いた誓約書なんて意味がないと何故考えないのか、理解を超える。


「よし。

彼には特別にドブネズミに生まれ変わった来世の夢も見せよう!」

Gでも良いともおもうが、ネズミの方が猫に追いかけられて噛みつかれるイメージを現実的に送れる。


スリッパで叩き落とされるGのイメージと言うのはイマイチ本人(本虫?)側のイメージが難しいのでネズミの方がいい。


サイズ的には、ネズミにとっての猫なら前世の人間に対する大型魔物と似たり寄ったりだろうから、魔術学院での実習中での襲撃の思い出で代用できる。

あの時の怪我は、白魔術師がすぐ治してくれなかったら右腕が無くなりかねないぐらい酷かった。

うっかり逃げ損ねた私も鈍臭かったが、黒魔術師は大型魔物相手の自衛能力が低いんだからしっかり守って欲しかったよ・・・。


『あやつは定期的に思い出すようにしっかり魔力を込めよう』

白龍さまもノリノリだね〜。


これで少しウチらの周りが平和になると良いな。




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