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誓約書

「カルマと転生を信じますって旨の誓約書だって」

宅急便が来たと思ったら、碧が中に入っていたメモを読んで溜め息を吐いた。


「本当に送って来たんだ?」

作成していたお守りの魔法陣を描き終え、リビングのローテーブルに置かれた箱を覗き込みに行く。


『私、〇〇はカルマが存在し、悪きカルマは来世への転生時に悪影響を与えると信じます 〇〇』

全文手書きで署名入り、プラス血判つき。


要求したのはこっちだけど、マジで揃えてくるとは思わなかった。


「凄いねぇ。

どうやってこんな誓約書を書かせる理由を説明したんだろ?」


たったの3日で百枚揃えられた事を考えると、退魔協会の職員とかその家族を使ったんだろうけど・・・どうやって書かせる必要性を説明したんだろうね?

流石に関係者とは言えども100人もの人間に『協会のお偉いさんが誘拐に協力して天罰を下されて、それを撤回してもらう為』の書類だとは言えないだろう。


一人や二人だったら脅して沈黙を守らせられると考えるだろうが、100人じゃあねぇ。

絶対に秘密が漏れる。


それとも協会で働いているとこう言う微妙に理不尽な誓約書の提出って時々あるのかね?


日本に残っている氏神が白龍さま一体(一柱?)だけでは無いだろうから、愛し子や氏神さまの怒りを買って天罰を喰らう事って定期的にあるのかなぁ。


だとしたらもう少しどの程度の事だったら怒りを買わないか、分かっていそうなものだが。


「まあ、悪い事をしたらダメですよねって言う程度の誓約書だったらそこまで問題ないのかも?

ある意味、本気では信じてないにしても日本でだったら常識的な概念だし」

碧が肩を竦めながら応じた。


「常識って言っても信じていない人が大部分だろうに。

それとも信じていても、人を直接殺さなければカルマに悪影響は無いと思っているのかな?」

まあ、何が悪いカルマなのかのはっきりした定義は存在しないんだろうけど。


「ちなみに、何が『悪いカルマ』に該当するんですか?」

私と同じ様な疑問を抱いたのか、碧が白龍さまに尋ねた。


どんな状況でも殺す事が悪いカルマだとしたら兵士の来世が絶望的だし、老後の蓄えを根こそぎ奪うような詐欺師が問題無しっていうのも納得いかない。

そこら辺、どうなんだろ?

罪の意識だなんて言われたら良心を持たないような精神異常者があっさり良い転生をしちゃいそうでそれも不公平だし。


まあ、世の中のことわりが公平であるとは限らないけどさ。


『細かい事は知らぬが、お主らの先祖や周囲の者達を観察した結論としては『必要なく他者を害する事』かの?』

白龍さまが答えた。


へぇぇ。

そっか、白龍さまはカルマが視えるから、何をやったら人間の魂が悪いカルマで穢れていくのか結果論的にある程度推測出来るのか。

面白い。


「なるほど。

ちなみに、この誓約書があったら本当に署名した人間が信じているか、分かるんですか?」

碧が紙束を示しながら聞いた。


『儂は知らんぞ。

それは凛が要求したものじゃろ?』

ふわっと白龍さまが浮いて答える。


「あれ、凛の前世での常識なのかと思ったんだけど。

幻獣や氏神さまが情報把握できるツールなんじゃなかったの?」

碧がこちらに向いて首を傾げる。


「自筆の文章と血判があったら、ちょっとした呪術の変形バージョンを使って書いた内容に沿った夢を見させる事が1回程度なら可能なんだ。

だから明日の明け方にでも夢で自分の魂とそれにこびり付いている汚れの夢を見せる予定。

元々カルマとか転生とか信じている日本人だったら、夢でそれっぽい映像を見たら多少は信じるかもでしょ?」

血がついていたら本人の魔力をかなりの部分で使えるので、何回かに分ければ100人分でもなんとかなる。


「・・・そうなんだ。

もしかして、血判って本格的な呪いとかにも使えちゃうの?」

碧が腰がひけた感じで書類が積んである箱を眺めた。


「強烈なのはこちらへのリスク無しには無理だけど、条件をしっかり指定したらある程度は書いた内容を本人の魔力を利用して具現化出来るよ。

だから変な約束は自筆で書かないようにね。

借金返済の約束とかでも提案されるかもだけど、例え踏み倒す気がこれっぽっちも無い場合でも血判なんて命が掛からない限り断るのを勧めるわ」

血判は前準備をしてあったら色々と怖い悪用方法もあるし。


退魔協会絡みの書類も、例え要求されたとしてもどうせ本当に血を使っているかなんて調べないだろう。

赤いインクを使えば十分だ。


そう考えると、今回送られてきた書類も血判じゃなくて赤インクのもそれなりに含まれているかな?

本文の方を自筆で書いてあればこちらで魔力を提供すれば夢程度だったらなんとかなるが、あまりにも赤インクのが多かったら突き返してやり直させよう。


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